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「MEDLEY」近江マイコ作品集

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近江マイコの掌編・短編小説、散文詩をまとめたものです。
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#小説

逆行

「信仰」  貴方の神様を侮辱しないから、どうか僕のことを放っておいてください。馬鹿にさ…

近江マイコ
10か月前
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「美意識過剰」

 諦めるな! その一言で、音を上げる人の口を封じられますか?  振り返るな! その一言で…

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「ギターと約束と」

 明かりをすべて消した薄暗い部屋の隅で、ヤマハの黒いアコースティックギターがほこりを被っ…

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「ドレスは燃えている」

「僕は緋色が一等好きなんだ」  そんな謎めいた、不思議な短い言葉をあなたは発した。  まど…

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「青い瞳」

 ほんの数分ほどの通り雨が去ったあと、色濃く濡れたアスファルトは翼を広げたカラスの模様を…

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「水曜日」

 ふと、あなたの顔が浮かんできました。あなたに会える(といっても、名も知らぬ他人同士です…

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「ロマンスの亡霊」

 零れ落ちるは重い音。  瞬く間、剣を横一線に一振り。刃を交えることなく、あっけなく目の前の敵の首をはねた。間際まで首があった箇所から、血が間欠泉のように勢いよく吹き出す。鈍い動きで落下した生首が地べたに転がる。なんと醜悪な顔だろう。見るに耐えない。  わたしは砂にまみれた汚いそいつを蹴っ飛ばして、川に流した。敵方の多数は戦意を失い、ひるみ、その場で震えている。明らかに士気が下がっているのが手に取るようにわかる。 「次に死にたい奴はどいつだ」  気分が昂揚することもなく、極め

「赤い動機」

 夕方、いつも世話をしている、狭い庭に咲く、大切に育てた薔薇たちの中で一輪が欠けているこ…

「あまいくつ」

 ピンヒール、ロングブーツ、サンダル、スニーカー、ミュール、果てはロッキンホース等々。靴…

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「シェリー」

 歌が聞こえる。 ――甘い 甘い ハチミツ とろけるような ハチミツ 夕焼けを映して わ…

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「わたしは黒い夢を見る」

 わたしは毎晩、形のない睡眠と格闘している。  というのも、毎日仕事に疲れ果ててすとんと…

「遊戯」

 雨の数だけ恋したうさぎ。緑の草原を走り、大地に十色の虹を架ける。駆け抜けた先で疲れた体…

「小さな詩」

 梅春。名古屋。午後一時。陽気はまだ遠かった。  母親と手を繋いでいた、Shirley Templeの…

「ゾンビ」

 ゾンビが未だ蔓延るこの世界。多くの知の巨人たちが、闘えど、闘えど、姿を消さない。それがゾンビたる所以なのだ。そもそも芯まで腐っていて、ダメージをまるで受けないから、ゾンビは尽きない。果たしてヒトがゾンビに打ち勝つ未来はあるのだろうか。それを想うと憂鬱になる。おそらく、ヒトはゾンビになったほうが楽なのだ。ゾンビになる誘いのほうが甘美で、けっして堕落ではない、正当な進化で、ヒトはゾンビに為るのが必然なのだ。己がゾンビに為るときがやがて来るのだろう。想像する。怖い。その前に、一思