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細胞アーティストOumaの創作メモ

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2016年9月の記事一覧

蒼めいた神経回路

蒼めいた神経回路

まだそこにいたのか。
肋間を引きちぎって、取り出したソレ。

無数の幻影の間を飛翔して、
逃れる術を探す。

重力と雨

重力と雨

壁に手をかけるような生。
落ちるのは一瞬で、登るには儚い。

今日からは空が地面に。
酸素から芽吹く雨。

156センチメートル

156センチメートル

爪が伸びていたから
昨日が終わってたって気づいたんだ。

歳を取るのは拒否しているのに、
子どものままではいられない。

左腕の長い傷

左腕の長い傷

にじんだ血は精霊の通り道。
浸食する芽と根。

蠢くには二歩遅かった。
痛みはもう感じない。

組み合わせの森

組み合わせの森

虫の棲む白い社。
足を取り去られて半透明のまま宙に浮く。

忘れた頃に抜け出る洞の先。
忘れ落ちるまで深く眠る。

山の上の銀

山の上の銀

葉と葉を赤い糸で縫い合わせた。
空の見えない空に届くようにと。

森が翳るのは覆われた雲のせい。
汚れた色を落とすように白い石を積む。

ダンゴムシの濡れた灰色

ダンゴムシの濡れた灰色

出会ったあなたは石だった。

この世界で生きることを頑なに。

語るように流れる時間。

水の中にいた一億年。

2秒前の未来

2秒前の未来

細胞間隙に潜む迷いの影。

手を伸ばせば遠ざかるのに、
手放そうとすればより意識的に。

神経回路に沁み込むように、
2秒前から過去を始める。

間の間の間

間の間の間

時間を遡ろうと思ったの。
間違った選択をもう繰り返さないように。

言葉を辿って巡ったら、
言葉を失くしてしまったの。

何もなかったことに出会ったら、
生まれることに出会ったの。

静やかに分裂

静やかに分裂

今日の風は少しだけ蒼かったから、
柔らかい腹を白く高く塗り染める。

その音が紅くなったらできあがりのしるし。

爪先で弾くとシトッシトッと泣く。

6番目の小指

6番目の小指

隣にいたオレンジのなまずは今朝、死んだんだと聞いた。
だから味噌汁から豆腐を抜いて、代わりに紫陽花を敷き詰めた。

なまずは紫陽花の魂と混じり合って、
もう寂しがらずに済むだろう。

きっと寂しがらずに済むだろう。

明るかったはずの夜空

明るかったはずの夜空

世界に見えないものがあるなら、
そんなの本当でも嘘でもいらない。

あと何回ぶん砂が流れれば、星が曇らず見えるだろう。

丸まった猫が赤銅色に変わった時みたいに
明後日より2回ぶん余計に息を吐く。

距離と感触

距離と感触

空を飛ぶのが嘘だったというなら
緑の芝生だって同じこと

黒い塊は泣いたまま海を見上げる
ああ、ここにもいなかった。

溶けて消えた金の鐘の音。

生まれる前の3秒

生まれる前の3秒

両手を伸ばすのは初めてだった。

曇り空が指の間で渦を巻いて、
今できたばかりの砂の城みたいに、
指の骨が隆起する。

腕はあったのに、いつから使わなくなったんだろう。

眩しいなんて嘘だから。
本当は目を開けないほうが楽だと思ってただけ。