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創作大賞対象非対象かも知れん話し by黒影紳士 subtitle「見えない現実」四頁※以降正しいtitle画です

「其れは……私達ですけど……」

 と、三人固まる女性の内の一人が左右の親しい人であろう女性を眺めてから、そろりと手を挙げた。

「えっ……まさかの複数人」

 サダノブが何て事だと思って、如何するのかと黒影を見た。

「だから言っただろう?
此処で一人が出て来て、はい犯人ですなんてオチは”黒影紳士”に限ってある訳が無い。
幾ら文字数を減らしたいからと簡略化した所で、此の第四頁が埋まるまでは賞に応募する規定の二万文字に達する事が出来ない。
即ち、未だ犯人捜しをさせるに決まってと、僕は三頁には分かっていたから読者様にも分かるように、先読みヒントを上げたつもりだが。
通常は大取物が三分の一。サダノブも気付いていたと思っていたがな」

と、黒影は此の状況になる事を推測し、更には困るどころか楽しんでいるかの様に、唇の口角を上げた。

「態々切り替えて貰って……と、言いたいところなのですがね、警察が既に個人情報を伺った筈ですが、簡略的にお名前と此処で何をしているのか。
後は……此のライブハウスに到着した時刻。
それともう一つ……誰から此のステージ会場が冷えている事を知ったか教えて下さい」

 そう、黒影は此処できちんと時刻について話を聞こうと言うつもりでいる。

「風柳さんは警察の情報をサダノブのタブレット端末に共有して貰えますか?


 黒影はそう言って風柳を手招きして、近くへ呼んだ。

「ああ、構わないよ」

 風柳はそう言い乍ら、下を見た。

 黒影が滑空し着地した時に鳳凰の秘技、略経である”十方位鳳連斬(じゅっぽういほうれんざん)の陣を床に展開していた事に気付く。

 中央に鳳凰を模した炎が揺れ、鳳凰陣と呼ばれる内陣と、更に外側の円陣を外陣と呼ぶ。

 未だ”広げているだけ"で、幻炎(げんえん)と言う、見えるが熱くない炎を使用しているので、黒影が翼を出した時点で、此処にいる面々は能力者だとは分かったので気にしていない。
 其れだけ、能力者は此の世界では人間と同じく生きている。

「戸木 敏(とぎ さとし)スタッフです。
鍵を明けに一番に来ました。
空調は如何だったかな……。
雛さんがステージ上が熱いから下げてくれと言っていったので下げました」

ルギアン=取り戻す の、メンバー

「立川 雛(たちかわ ひな)regain(るぎあん)のVo.(ボーカル)よ。
今日の出番が一番初めだから、声を出しておきたいと早めに来ただけ。
使っていたらステージ上が熱いから、送風とエアコンを付ける様に頼んだの。暫くして慣れて来たのか熱くなって来たから下げて貰ったわ」

「安東 時尚(あんどう ときひさ)。
同じくregain(るぎあん)のG.(ギター)だ。
スタッフの戸木さんが温度を戻しに行くって言うから付いて行っただけだよ」

 一千文字にして今度は容疑者が三人。

 けれど、黒影はもう誰が犯人か分かった。
 だから安心したまえ……だって二千文字だ。

「そうでしたか。
改めて礼を言うのは二人で良いみたいだ。
最初からサダノブと僕の動きに、違和感を読者様は感じていた筈。
ステージの上にただ被害者のご遺体が転がっていたならば、背中が凍っているんだ。
つるつると滑って動きやすかった筈だろう?
然し、そうではなかった。
僕がいた場所にこそヒントがある。
マイクスタンドを持っていたのはボーカルのいる場所。
此の小さめのライブハウスの特性上、あの下にだけアーティストが熱で倒れない様に床からの送風ファンがある。
被害者の氷の翼があの柵の上で半分溶けかされ圧迫された。
そしてステージを再度冷やした事により、柵を背中の氷が包み込み、早々に動かせない事態となったのだよ。
此のステージに上がったはあの時点で、立川 雛さんのみ。
即ち君が今回の犯人だと僕は思っている。
だが、其れだけでは未だ状況証拠があると言うだけに過ぎない。
僕は完璧な動機が分からぬ物で特定する程愚かでは無い。心の分からぬ推理等、興味は無い」

 黒影はそんな事を言った。

 そうだ

 中身があるか如何か……。
 空っぽの推理なんて……。

 疑うだけなら誰にでも出来る。
 曖昧な言い掛かりで犯人を落とす事なんか容易い。
 けれど、そんな探偵にはなりたくは無い。

「幾らお前がそうは言っても!其れが分かった以上は此方(警察)は放っておく訳にはいかん!
最重要容疑者として連行する!」

 風柳は刑事だ。勿論、そんな甘さなどはない。

「だから警察はっ!」

 其の憤りを現に響かせた怒号に、風柳は立川 雛へと向かう足を止めてゆっくり黒影の方へと顔を向けた。

憤り虎の目になる風柳

 睨む瞳は瞳孔が大きく、其の周りは金を帯びている。
 邪魔をするなと……白虎の血がそうさせるのだ。

 サダノブは其れを見ると、黒影を説得しようと見詰めたが、黒影もまた瞳の奥に炎を揺らがせている。
 一触即発と言った空気が流れた。

「そんな……二人共、急に本気にならないで下さいよ。
風柳さんだって仕事なんです、先輩。
待って貰うなら、理由がいる。
風柳さんだって落ち着いて考えて見ても下さいよ。 先輩が無駄な文章など無いと言ったのだから、理由があるんです。
心配しなくても、ほら……二千文字。
直ぐに話してくれます」

 と、サダノブは必死で二人を落ち着かせるのだ。然し、

「何でも千文字を超えたら分かると思うな。
そんな甘ったれの推理等、此処迄だと思い知るが良いっ!!」

 そう黒影は言い放つではないか。

「何を言っているんですか、先輩!今、必死に俺だって……」

黒影「サダノブはすっこんでろっ!」
風柳「サダノブは黙っていなさい」

「へ?何で止めた俺が八つ当たりを食らうんですか?」

そうサダノブが言った直後であった。

『サダノブが五月蠅いからだ。
ピィンポンパンポ~~~ン♪
大事な推理解説の途中ですが、読者様の皆様に重要なお知らせとお詫びが御座います』

サダノブは流石にそのアナウンスには黙った。

此の『』は、創世神専用だからである。

 黒影と風柳は創世神の気配に先に気付き、黙れと言っていた様だ。

『何とか間に合わせようと書いていましたが、現時点で……何とっ!投稿期日が過ぎておりました~~。
応援して下さいました読者様、大変申し訳御座いません』

「如何言う事だ?
余裕を持って書いていた筈ではないのか?
今回こそは募集要件だけでも満たすと意気込んでいただろう?」

 と、黒影は恐らく何かが理由でアナウンスだけで降臨もしない創世神に問う。

『それがだね……。一週間程、間違えていたのだよ。
大概、この手の〆切は月末だと思うじゃないか。
未だ余裕だとのんびりしていたら、募集終わりの通知が来て驚いたよ』

 などと答え、苦笑するではないか。

「それで、急に何時もの感じに戻したのか!?呆れて物も言えない!」

 黒影の其の言葉に、

『じゃあ何も言わないね。
では、そう言う事だ。
後は本気モードで遊びなさい。
ピィンポンパンポ~~~ン♪』

 と、創世神は言うだけ言って消えた。

「逃げましたね……」

 サダノブがボソッと言う。

「ああ……完璧にあれは逃げだな。
如何せ、自分でも恥ずかしいと思っているんだろうさ。
全く……あの人は……」

 そうは言う物の、黒影は変わらない創世神に安堵感を覚え、微笑んでいた。

けれど、其れも束の間だ。

 風柳が指摘したのも仕方の無い、此処は未だご遺体の転がっている、事件現場に違いは無いのだ。

「スタッフの方……誰でも構いません。
今日の予定のセットリストとタイムテーブルがあれば拝見したいのですが……」

 黒影は仕切り直し言った。

 何故、最後迄被害者がセットリストを持っていたのか。
 其れは……ある種、違った形のダイイングメッセージではないのかと、黒影は思っている。
 三千文字が明け行く今……ただの紙切れが意味を成して行くに違いない。

 暫くするとスタッフの一人が小走りで、黒影が欲しがっていた物を持って来てくれた。

「すみませんね。有難う御座います」

 黒影はそう言うなり、確認し乍ら話し始める。

「タイムテーブルを見る限り、やはりバンド演奏順番に予定変更は無かった。
詰まり、regainが一番で間違いない。
此れには事前から予定変更は無かった。
間違いないですか?」

 そう持って来てくれたスタッフに黒影が聞いてみると、スタッフは確かにそうだと首を縦に数度降った。

「僕が到着時点で、唯一の出入り口のチケットカウンターにはクローズの看板があった。
数名のスタッフとregainのリハーサル時間前に事件は起きた。
此の事件は、予め考えられた計画的犯行では無く、突発性の物である。
立川 雛さんが犯人であるからこそ、他のメンバーや慣れ親しんだスタッフに濡れ衣が行かない様にしたかった。
後から何人か出入りした後で通報すれば良いのだから。
出来るだけ早く、出来るだけ人が増えてから……そう思った筈だ。
けれど、客が入ったらもっと大事に成る。
然し、此処で小さなトラブルが起きた。
殺害後、数名のスタッフが出入りはしたが、自分がステージに行かなければ、中々リハーサルの準備に入らない。
仕方無く貴方は、警察へ遺体を見付けたと連絡してからリハーサルへ向かう。
気付いていました?
此の事件、第一目撃者に未だ話を聞いていないのです。
登場もしていないのです。
何故なら第一目撃者が分からないと言う不審点があったから。
そうですね?
風柳さん……僕に未だ会わせないと言う事は」

 と、黒影は風柳に聞いた。

「ああ、そうだ。話そうにも全員分からないと答えた」

 風柳はだから誰もいなかったのかと納得する。

「先輩は其れで時間をやたら気にする発言をしていたんですか……」

 今頃サダノブは気付いたらしい。

「セットリストと言えば、タイムテーブルも普通は気にする。
其れに声紋認証でほぼ証拠になる。
スプリンクラーを先に停止させ、外傷無し。
だが、煤けた匂いが衣服から立ち込めていた。
立川 雛さん……貴方の能力は炎。
其れも僕とは少し違う……煙まで自由自在に操れる様だ。
流石エレメンツを持つ片翼の天使と言いたいところだが……」

 黒影は其処で言葉を濁らせた。

 立川 雛は黒影の弱い十方位鳳連斬を見て、余裕で翼を悠々と広げただけだ。
 翼を見たからには闘いは避けられない。

 だが、黒影にも分かっていたのだ。
 立川 雛が余裕でそう来る事を。
 だからこそ、四千文字到達の今、言いたい事が伝えられる事も。

「未だ、そう焦らなくても良い。
如何せ貴方の方が強いのだから、全てを知ってからでも遅くはないでしょう。
セットリストの大事な話がある」

 黒影はそう言うと、立川 雛の方を向き微笑む。

「大事な話?
どんな話をしようと、貴方が此れから死ぬ事には変わりは無いじゃない」

 立川 雛はそう言って無駄だとさも言いた気に、ニヒルな笑みを浮かべる。
 然し、そんな言葉程度で黒影が何か態度を変える筈も無い。

 例え本当に、此れから死ぬ事が完璧に逃れられない運命だと気付く事があろうとも、変わる事は無いだろう。

「ああ、大事な話だ。
僕にとってでは無い。
貴方にとって大事だと思うから説明したいだけだ。風柳さん……此の被害者、もう其方では名前……分かっていますよね?
僕とサダノブに伝えてくれないからずっと”被害者X”ですよ」

 と、黒影は風柳を見て言う様に催促する。

「ああ、そうだったか。すまないな、進行し辛かっただろう……」

「良いですよ、面白かったですから」

 黒影は何があったかは、風柳に注意されたくなくて言及を避けた。

「ん??また遊んでいたのか?
……まぁ良い……杜若 彰伸(かきつばた あきのぶ)さんだよ」

 と、風柳は如何せ言いはしないと諦め、被害者の本名を教える。

「ではギターの安東 時尚(あんどう ときひさ)さん。
此れが被害者の杜若 彰伸さんが持っていたセットリストです。
今日の演奏予定のセットリストとの違いと、regainの曲についてお伺いしたい」

黒影はそう言って、安東 時尚に被害者の背中から出たセットリストを袋に入れてから手渡し、また己の鳳凰陣へと直ぐに戻った。
 其の怱々とした行動を見て、サダノブは怪しみこう……黒影にこっそりと話し掛ける。

「未だ犯人の動機……何にも分かってないですよね?」

 と。
 其の声は風柳にも聞こえていた。

「まさか……黒影っ!」

 風柳が驚いて言うと、黒影は帽子の鍔の先を下し、悪戯なウィンクをして誤魔化すのだ。

「大丈夫ですよ。
こう言うものは相場が決まっているのです。
其れよりも待っているんです。
僕は彼の返事と……動機が向こうから勝手に来る事を……」

 と、言うではないか。

「確かに一曲、予定していた物とは違います。確か彰伸が作った……」

 安東 時尚は被害者を彰伸と呼んだ。
 黒影はやはり親しかったのかと頷く。

 さぁ……黒影の待つ、もう一人の動機となるゲストがどんな人物か、読者様にもお分かり頂けただろう。

 大体の推理はこんな物で良いだろう。

 何故?

 答えは至極簡単だ。
 予定の応募規定二万文字を突破したからだ。
 予定通りだ。

 じゃあ後は何があるかって?
 ゲストが来るだけか?
 そんな訳、無い。
 此れは……「黒影紳士」だ。

”折角今回はまともに応募出来たと思ったのに”(読者様にもあるかも知れない考え)

「うん、うん」(黒影、頷く)

”今回こそはと応援していたのに!”

「うん、うん、うん。
既に一頁での沢山の好きやアクセスにより、コングラボード二枚獲得、感謝している。
今回の〆切勘違いと、読者様の鬱憤全て!
此れから燃やし尽くしてやらねばな!!
二万文字!
突破だ、行くぞーーーっ!」

『ご案内』
 ラスト、夏のバトル花火、鳳凰の陣……開催会場へは、第五頁へお越し下さい。


続きの第五頁を読む↓

お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。