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お香にハマった。

先端を火で炙る。

糸のように細い煙がゆらめきながら立ちのぼり、僕の部屋は深い香りに満たされた。

そういえば夏頃に、お香の記事を上げたことを思い出す。

その後、特に意識することもなく習慣になっていた。


現在、僕のお香の消費量は日増しに増えていた。

毎日焚くので、専用のお香立ても買った。

今では、一日に百本のお香を焚いていた。

朝起きてから、夜眠るまで、お香がついていないと心の平穏が乱された。

煙が部屋に充満していないと、不安でしかたがなかった。

しかし安心してほしい。依存症などではない。

その証拠に『お香 依存症』と検索しても、違法ドラッグのページしか出てこない。

このところ肺がずっと痛むが、お香とは関係ないだろう。

たぶん老化だと思う。

僕のお香は合法だった。


僕はネットで情報をあさり、目星をつけた近所の売人から買っていた。

しかし同じ売人から買い続けるというのも、なんだか面倒なことになりそうだったので、たまに地下鉄にのって、遠くまでお香を探しにいったりした。

僕が購入していたものは、純度の低い安物だった。

だからお金の心配はしなくていいし、どこでもそれなりに出回っているものだった。

「おい、この店に“お香”があるはずだ」
「ありますよ」
「三箱もらおう。一番安いのでいい」
「ご案内します」
「種類はどうされます?」
「キツいのがほしい。なるべくな。月くらいまでブッ飛べるようなのだ」
「ではこちらなんていかがでしょう?」
「そうだな。気に入った。こいつを試してみるよ」
「ありがとうございます。ではお支払い……」
「おい、そう焦るなって。大丈夫だよ。金ならある」
「いえ、お支払い方法は……」
「あ、Paypayでおねがいします」

僕は店を出てすぐそのお香を試したい衝動をこらえながら、箱をカバンの底にしまった。


ここでひとつ忠告をしておくと、こうしてお香を買いに行く際は、香水を強めに吹いておくといい。

そうすれば、匂いでバレることはまずない。

街中にたまにいる、香水の香りが強すぎる人は七割ほどが“やっている側”の者たちだ。

これを読んでお香に興味をもった方も、ぜひ試してみてほしい。



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