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月島
2024年5月31日 20:34
真崎のアナウンスに従って、柊、海奈、深也の3人は天ヶ原駅前に駆けつけた。駅前の様子は明らかにおかしく、黒い霧が漂い、昼にも関わらず薄暗い。「なんだこれ……」『高次元生物の影響だと思われます』 深也の呟きに、真崎が答えた。それに対して、今度は海奈が問いかける。「その高次元生物はどこに?」『高次元生物は影のような形態をしているとのことです。恐らく、その薄暗い中に紛れているのかと』
2024年5月29日 18:36
柊はベッドの上で自室の天井を見上げていた。(暇だな~……) 聖夜と翔太は任務で他県へ、白雪と深也はパトロールで外出中だった。海奈と花琳の行方は分からないが、2人は姉妹だという理由から、なんとなく一緒に居るような気がして、柊は探しに行く気が起きなかった。(姉妹の時間、邪魔しちゃ悪いしな~……) そう思った矢先。「柊ちゃん、居る?」 花琳の声だった。柊がドアを開けると、そこに
2024年5月28日 18:43
聖夜は、道中で買った花を持った翔太と共に燕の病室を訪れた。 翔太が声を掛けてドアを開けると、そこには、いつものようにベッドの上で窓の外を眺めている燕がいた。「燕、元気にしてたか?」「あ、お兄さんと……聖夜さん」 燕は聖夜の顔を見るなり、少し目を細めて微笑む。「こんにちは、2人とも」「燕ちゃん、こんにちは!」 翔太は、明るく笑いながら挨拶をする聖
2024年5月27日 20:59
ノエルと出会ってから数日後、聖夜は訓練施設で翔太と共にVRの高次元生物と戦っていた。「『竜巻』!!」 翔太が右腕を振り下ろすと、激しい竜巻が巻き起こった。 施設内いっぱいに吹き荒れる竜巻は、高次元生物を巻き込む。しかし、厄介なことに、今回相対している敵の体は鋼鉄でできていた。そのため、どれほど強い竜巻でも、相手を吹き飛ばすことはおろか、ダメージを与えることすらできな
2024年5月26日 18:02
少年の言葉に、聖夜は戸惑いながら頷く。「君は……?」 聖夜が問うと、少年は人差し指を聖夜の口に当てて穏やかに言った。「話は後。まずはこの状況を何とかしよう」 少年が祈るように手を握ると黒い雪が降り始めた。それに伴って、辺りが冬のような寒さになる。「この寒さには耐えられないだろう」 少年は微笑んだまま言った。すると空気が揺れ、巨大なスズメバチのような生物が突如として姿を現し
2024年5月25日 20:34
部屋に戻った聖夜は、ベッドの上で横になっていた。(父さんが、事件に巻き込まれたかもしれないなんて……) 1人悶々としながら、聖夜は天井を見つめる。長年行方不明だった父が危険な目に合っているかもしれないということ、時の能力者は貴重だということ、自分の無力さ……色々なことが頭を巡った。(もっと強くなりたい……そのためにはどうしたら……) 聖夜は何度も寝返りを打ちながら考えた。(…
2024年5月24日 18:27
本部に戻った2人は、総隊長室を訪れた。赤いじゅうたんが敷かれた、広い部屋。しかし、部屋の中には総隊長用のデスクと、来客用のソファとガラスのテーブル、そして、物がほとんど飾られていない棚が一つあるだけで、とても寂しい印象を受ける。 聖夜は、ふと、棚に唯一飾られている写真が気になって近寄ろうとした。しかし、丁度よく扉が開いて千秋が入って来たので、慌てて柊の隣に戻った。「2人とも、待たせ
2024年5月23日 18:27
「そういえば、聖夜も言っていたな。柊は唯一の身内のような存在だって」 翔太がそう言うと、聖夜は頷いた。「ああ。うち、母さんを病気で亡くして、父さんも行方不明で……」「親父さんは生きてるのか?」「え、ああ、多分……」 曖昧にうなずく聖夜に、翔太は更に問いかける。「探そうとは思わないのか?」「え……」 思いがけない質問に聖夜は戸惑った。「……もう何年も会ってないから
2024年5月22日 17:48
聖夜と柊はパトロールを続け、町外れにある2人の家……瀬野家まで来た。 フラワーショップ瀬野と書かれた看板は年季が入り少し色褪せていたが、町で唯一の花屋ということで多くの人に愛されている。そんな実家も同然の花屋が、聖夜も柊も大好きだった。「……夏実姉ちゃん達、元気かな?」「入ってみる?」 柊の言葉に、聖夜は慌てて首を振った。「何で?家に帰るみたいなものじゃない」「あんなに決
2024年5月21日 18:10
怪人を退治した数日後の朝、柊は聖夜の部屋の前にやって来た。今日は2人がパトロールの担当日なのだ。 天ヶ原町は中央支部の拠点であるため、何か事件が起きた場合に任務に支障が出る場合がある。それを防ぐために、問題の早期発見を目的としたパトロールが行われているのだ。「聖夜、パトロールの準備できた?」 柊は、聖夜の部屋をノックした。しかし聖夜は一向に現れない。「聖夜?」 柊が繰り
2024年5月20日 17:59
「ここが医務室だ」 翔太は玄関のすぐ隣にある部屋の扉をノックする。すると、部屋の中から間延びした返事が聞こえてきた。「はーい。どうぞー」 部屋の中に入ると、丸眼鏡を掛けた、お団子頭の女性がパイプ椅子に座っていた。女性は眠たげな表情で聖夜を見ると、のんびりとした声で呟く。「おや、これは酷いなぁ……」 女性は、ゆったりとした足取りで聖夜に歩み寄る。突然近寄られて、聖夜は表情を強張ら
2024年5月19日 09:51
翔太の真っ直ぐな瞳を見て、柊は覚悟を決めて頷く。「……分かった」 柊は高次元生物に手のひらを向けて構えた。「いくよ……!」「ギィ……!?」 高次元生物が空色の光に包まれ、スローモーションになる。「今!」 柊の声に、聖夜は頷き、加速した。空色の光が、彼の身体に尾を引く。「食らえ!」「ギィ!」 聖夜の拳を食らうギリギリで、高次元生物は遅延を加速で打ち消し、聖夜
2024年5月18日 14:50
「こっちだ」 翔太は2人を連れて走り、ワープルームと書かれた扉を開けた。八畳ほどの部屋の片隅に操作パネルがあり、中央には青白く光る大きな床がある。「この床に乗るの?」 柊の問いかけに翔太は頷いた。「ああ。操作は俺がやる。待ってろ」 2人が床に乗ったのを見て、翔太はパネルを操作した。「埼玉県大宮駅前……ここだな」 床の光が更に強くなる。翔太も床に乗った。「行くぞ」
2024年5月17日 12:21
特部に入隊することになった聖夜と柊は、琴森と真崎に寮を案内されていた。「ここが聖夜君、隣が柊さんの部屋ね」「すごい……綺麗だし、キッチンもお風呂もトイレも付いてる!」 柊が目を輝かせた。柊の言う通り、それぞれの個室には二口のガスコンロがついたキッチンと、少し小さめの浴槽がついた風呂がついている。ちなみに、トイレと風呂は別だ。「一応説明しておくと、大浴場は廊下を曲がって右。共同キッ