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僕らと命のプレリュード 第17話

 柊はベッドの上で自室の天井を見上げていた。

(暇だな~……)

 聖夜と翔太は任務で他県へ、白雪と深也はパトロールで外出中だった。海奈と花琳の行方は分からないが、2人は姉妹だという理由から、なんとなく一緒に居るような気がして、柊は探しに行く気が起きなかった。

(姉妹の時間、邪魔しちゃ悪いしな~……)

 そう思った矢先。

「柊ちゃん、居る?」

 花琳の声だった。柊がドアを開けると、そこには穏やかな笑顔を浮かべた花琳と海奈が立っていた。

「お茶会、やらない?」

 花琳の提案に、柊は目を輝かせて頷く。

「やります!」

 柊は花琳と海奈と共に、談話室に向かった。

* * *

「はい、どうぞ」

 花琳は柊に紅茶を淹れて手渡す。

「ありがとうございます!」

「いえいえ」

 そう言って微笑むと、花琳は席に着いた。花琳は自分の紅茶をこくりと飲んで、優しい声色で柊に尋ねる。

「柊ちゃん、もう特部には慣れた?」

「はい!少しずつですけど……」

 柊は頷く。柊が聖夜と2人で特部に入ってからもうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。日々の任務や琴森の授業など、始めは慣れなかったことにも、最近は慣れつつある。

「そう、良かったわ。何かあったら、いつでも言ってね。私でも、海奈でも、相談に乗るから」

 花琳は蕾が綻ぶような笑顔を浮かべ、柊に優しく付け加えた。傍らの海奈も笑いながら頷く。

「柊よりも長く特部にいるし、力になれることも多いと思うよ」

「うん、ありがとう。……そういえば、2人はいつから特部に?」

「私が中学2年生、海奈が1年生の時に特部に入隊したの」

 花琳は紅茶を一口飲んで、穏やかに目を閉じながら過去のことを思い返す。

「私ね、小さい頃特部に助けて貰ったことがあったの。それ以来、ずっと特部に憧れてて……だからここに来れたこと、本当に嬉しかった」

 花琳はそこまで言うと、少し頬を染めながら、ぽつりと呟いた。

「それに、会いたい人にも会えたしね」

「会いたい人……?」

 柊が海奈の方を見ると、海奈はそれに気がついて、こそりと耳打ちする。

(白雪さんのことだよ)

(白雪さん……?)

(あたしは覚えてないけど、昔2人は会ってたみたいで……姉さん、ずっと会いたがってたから)

 柊は頭の中で整理する。

(白雪さんと花琳さんは昔会ってて、花琳さんはずっと白雪さんに会いたかった……ってことは!)

 自分が大好きな恋バナの気配を察知して、柊は目を輝かせた。

「花琳さん、もしかして白雪さんのこと……!」

 柊は花琳に向かって勢い良く身を乗り出す。花琳は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、海奈にじとっとした視線を向ける。

「……もう、海奈?」

「ごめん……つい」

 海奈は誤魔化すように笑った。

「告白したりしないんですか!」

「告白って……」

 ぐいぐいと迫る柊に、花琳はたじろぐ。

「……負担になりたくないし、白雪君きっと昔のことなんて覚えてないもの……言えないわよ」

「でも!好きって言われて嬉しくない人は居ないですよ!」

 柊の勢いは止まらない。

「白雪さんきっと喜びますって!」

 その時、ドアが開く音がした。

「僕がどうかしたのかい?」

 3人が視線を移すと、不思議そうに首を傾げる白雪と、白雪の影に隠れた深也が入り口に立っていた。

「し、ししし、白雪君!?」

 白雪の姿を認めた瞬間、花琳は、顔を真っ赤にしながらガタリと立ち上がった。

 その勢いで、彼女のティーカップが倒れそうになってしまう。それに気づいた海奈が、慌ててカップを支えた。しかし、自分の気持ちがバレてしまったか気が気じゃない花琳は倒れかけたカップに気づかず、早口で白雪を問い詰めた。

「い、いい、いつからそこに!?」

「僕がきっと喜ぶって言ってた辺りかな」

「そっかぁ……」

 白雪に自分の想いが知られていないことを知って、花琳は胸をなで下ろした。すると、再びドアが開いて、今度は琴森が入ってきた。

「白雪君と花琳さん、居る?」

「はい。どうかしたんですか?」

「2人とも、聖夜君と翔太君の援護に向かってくれる?思ったより苦戦してるみたいで……」

「分かりました。……花琳、行けるかい?」

「う、うん!大丈夫よ!」

 花琳は勢いよく頷く。白雪はそれを見て微笑み、談話室を出て行った。それに続き、花琳と琴森も速足で談話室を後にする。

「……あんなに分かりやすいのに、何でくっつかないんだあの2人」

 深也がぼそりと呟く。

「ねえ、白雪さんも花琳さんが好きなのかな?」

 柊が問うと、深也はびくりと体をすくめて、早口でまくし立てる。

「え、いや……ぼ、僕には分からないです……な、何か羨ましくて……つい偉そうなこと言いましたごめんなさい……!」

 それだけ言うと、深也は談話室を出てしまった。

「……海奈はどう思う?」

 柊はめげずに海奈に尋ねた。

「……どうなんだろ」

 海奈は苦笑いして呟いた。

「人を好きになるって、どういう感じなのかな……」

「海奈……?」

「……ごめん、なんでもない」

 海奈は紅茶を啜った。

「冷めちゃうよ。柊も飲みなよ」

「あ、うん……」

 柊はティーカップを持った。

(海奈、もしかしてこういう話苦手だったのかな……)

 少しはしゃぎ過ぎたことを内心反省しながら、柊は紅茶をこくりと飲んだ。

 その時だった。

『天ヶ原駅前にて高次元生物が発生!隊員は直ちに向かって下さい!』

    柊と海奈は、ハッとした表情で立ち上がった。

「行こう、柊!」

「うん……!」

    2人は頷き合い、ワープルームへと急いだ。


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