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僕らと命のプレリュード 第5話

 特部に入隊することになった聖夜と柊は、琴森と真崎に寮を案内されていた。

「ここが聖夜君、隣が柊さんの部屋ね」

「すごい……綺麗だし、キッチンもお風呂もトイレも付いてる!」

 柊が目を輝かせた。柊の言う通り、それぞれの個室には二口のガスコンロがついたキッチンと、少し小さめの浴槽がついた風呂がついている。ちなみに、トイレと風呂は別だ。

「一応説明しておくと、大浴場は廊下を曲がって右。共同キッチンは左ね。食事はそれぞれで済ませること」

 琴森はそう言うと、2人に鍵を手渡した。

「部屋の鍵よ。大事に持っててね」

「分かりました!」

 聖夜は元気よく返事をした。

「よろしい。……さて、昨日はバタバタしちゃったけど、改めて特部について聞きたいことはある?」

 琴森の質問に、聖夜は少し考えながら答える。

「えーっと、昨日言われた気がするんだけど、教育も特部で受けるってほんと?」

「そうよ。先生は支部長である私が務めます。ちゃんと教員免許持ってるからね」

 琴森は、そう言いながらドヤ顔を見せた。初対面の大人っぽい印象からは連想できない表情に、聖夜も柊も苦笑いする。それに気づいた琴森は、照れ隠しに咳ばらいをしてこう続けた。

「ゴホン!……普通の高校とは違って、通信制学校のような感じになるわ。課題を出して、決められた日に授業で答え合わせする感じね」

 琴森の解説に2人は頷いた。

「他にはあるかしら」

「あ、はい」

 柊が手を上げて尋ねた。

「結局、特部って高次元生物を相手にする専門機関ってことで、警察とは違うんですよね?」

「その通り。アビリティによるトラブルの対応はアビ課の仕事だけど、その中でも高次元生物と戦うのは特部の仕事ね。たまに協力したりすることもあるけれど」

 琴森の返答に、柊は頷く。

「真崎さんは、何か質問ある?」

「え、私ですか!?えーっと……」

 真崎は急に当てられてオロオロしながら答える。

「……私も配属されたばかりでよく知らないんですが、特部には全国に支部があるんですよね。どの位隊員がいるんですか?」

「そうね……まず、ここ。中央支部には聖夜君と柊さんを合わせて7人いるでしょ。でもこれ、多い方よ」

 琴森は続けた。

「北関東から南東北をカバーする東日本支部は4人、関西から中国、四国地方までカバーする西日本支部も4人、北東北と北海道をカバーする北日本支部は3人、できたばかりの南日本支部は今の所2人ね」

「そんなに少なくて大丈夫なんですか……?」

 真崎が不安そうに尋ねると、琴森は苦笑いした。

「正直ぎりぎりって所ね。各支部にワープパネルなどを置いて出動に時間がかからないように工夫はしてるけど……まぁ、志野総隊長の方針だから仕方ないわ」

「ワープパネル……?」

 聖夜が首をかしげた。

「ああ、この前は急だったから使わなかったけど、各支部と各地を繋いでいる移動手段よ。『転移』のアビリティの仕組みを応用して作られたものなの」

「なるほど……」

 聖夜が呟いたときだった。

『埼玉県大宮駅前にて高次元生物発生!中央支部は直ちに出動して下さい』

「……!」

「琴森さん!」

 廊下の向こう側から、翔太が走ってきた。

「分かってる」

 琴森は頷き、聖夜と柊に視線を送る。

「聖夜君、柊さん。翔太君と一緒に大宮駅前へ向かって」

「はい!」

 聖夜と柊は返事をして、翔太に着いていった。

「真崎さんは私とオペレーションに入るわよ」

「は……はい!」

 真崎は背筋を正して返事をした。


続き

1話


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