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ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学


ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学

 もはや、私ごときがレビューを書くまでもありませんね。偉大なベストセラーです。

 私にとって、多くのベストセラーは、正直なところ、面白いと思えません(^^;
 けれども、本書に関しては、文句なく、面白いと思えました\(^o^)/

 生物のサイズに注目したという、その着眼点が良いです。
 サイズというものが、これほど、生物に大きな影響を与えていることを、改めて知りました。

 タイトルになっている『ゾウの時間 ネズミの時間』とは、「ゾウが感じる時間と、ネズミが感じる時間」という意味です。

 ゾウは、寿命が長い生物ですね。百年近く生きます。
 いっぽう、ネズミのほうは、寿命が短いです。二年くらいしか生きません。

 客観的には、あまりに長さが違いすぎる寿命です。
 ところが、主観的には―つまり、ゾウ自身や、ネズミ自身が感じている時間では―、ゾウとネズミとは、同じ長さの時間を生きているというのです。

 なぜ、こうなるのかと言えば、それは、ゾウやネズミのサイズに関係しているといいます。巨大なゾウは、その巨大さに見合った時間を生きます。小さなネズミは、その小ささに見合った時間を生きます。

 「体のサイズと時間とに、何の関係があるのか? それは、まったく別個のものを混同しているのではないか?」と思いますよね。
 それが、関係あるのですねえ。体感時間は、体のサイズと、直接、関係しています。

 詳しく知りたい方は、ぜひ、本書をお読み下さい。理系の本ですが、文系の人にも、無理なく読めます(^^) 文章も、わかりやすいです。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第一章 動物のサイズと時間
 サイズによって時間は変わる
 心拍数一定の法則?

第二章 サイズと進化
 コープの法則
 大きいことはいいことか?
 島の規則

第三章 サイズとエネルギー消費量
 標準代謝量――基本的なエネルギー消費量
 表面積と体積
 3/4乗則――生命の設計原理
 ヒトのサイズ・現代人のサイズ

第四章 食事量・生息密度・行動圏
 大きいものは大食らいか?
 食うもののサイズ・食われるもののサイズ
 ウシを食う贅沢――成長効率の問題
 動物の生息密度
 行動圏の広さ

第五章 走る・飛ぶ・泳ぐ
 サイズと速度
 走るコスト
 飛ぶコスト・泳ぐコスト

第六章 なぜ車輪動物がいないのか
 車社会再考
 ひれVS.スクリュー

第七章 小さな泳ぎ手
 鞭毛【べんもう】と繊毛【せんもう】
 低レイノルズ数の世界
 スパスモネームとレイノルズ数のトリック
 拡散が支配する世界

第八章 呼吸系や循環系はなぜ必要か
 肺も心臓もない動物
 ヒラムシはなぜ平たいか
 ミミズはヘビほど太くなれるか?
 呼吸系

第九章 器官のサイズ
 心臓と筋肉
 脳のサイズ
 骨格系

第十章 時間と空間
 生理的時間と弾性相似モデル
 時間と空間の相関

第十一章 細胞のサイズと生物の建築法
 細胞のサイズ
 植物の建築法・動物の建築法

第十二章 昆虫――小サイズの達人
 クチクラの外骨格――昆虫の成功の秘訣
 気管の威力・脱皮の危険
 食べる時期と動く時期――一生を使いわける

第十三章 動かない動物たち
 サンゴと木――光の利用者
 群体――ユニット構造の利点
 流れの利用者

第十四章 棘皮動物――ちょっとだけ動く動物
 ウニの棘とキャッチ結合組織
 ヒトデの外骨格的内骨格
 クモヒトデの自切とユニット構造
 進化と支持系
 棘皮動物の謎
 棘皮動物のデザイン

あとがき
付録



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