夏から秋の変わり目に
あれは夏から秋にかけての出来事です。
高校時代の先輩がうちに泊まりに来てくれたんです。うちは北海道にあって、先輩は東京に住んでて。ずっと短文のLINEが続いてて、やっと言えたんです。
「北海道に来てみますか?」って。
わたしの大学は北海道にあって、先輩の大学は東京で。多分ひまだから旅行したかっただけだと思うんですけど、
「行きたいな~いつならいい?」
って返信が来て。何が何でも予定空けて、一緒に行きたい場所とか案内したい場所ピックアップして。それが本当に楽しくって。
「10月の半ばなら空いてますよ」
で、やっとその日が来たんです。わざわざ飛行機で来てくれて。久し振りに会えるし、しかもこっちに来てくれてるし、なんかもう幸せ嬉しい!って感じの、分かりやすく浮かれてました。
しかもうちに泊まる。
なんだか変な感じ。
でも、薄々感じてたんです。LINEしているときから。
わたしに会いたいっていうより、北海道に行きたいが勝っているんだろうなって。いや、勝負の土俵にすら上がってなかったです。
車運転してくれているときも、隣を歩いているときも、うちにいるときも。
わたしの存在は視界に入っているし、わたしの声は鼓膜に吸収されているけど、中心には届かないし震わせることもできないんだろうなって。痛いほど感じてしまって。一緒に居れば居るほど。
しっかり8時間も寝てしまって。ちょっとくらい触ってくれてもいいに。顔とか脚くらいなら。なんならもっと、他のところも。
何日泊まるのか不確定で、突然、「明日バイト入ってたから帰るわ」って言われたんです。
急ですよね。
「分かりました」
って言いました。もうなんだか虚しくなっちゃったんです。もう先輩の心の片隅にすら侵入できないんだよなーって。
「来てくれてありがとうございました。楽しかったです。」
「こちらこそ泊めてくれてありがとう。じゃあね。」
宿が欲しかっただけだったんですかね。
夏から秋に変わるとき、先輩との出来事をいつも思い出します。
今となっては良い思い出です。あの時のわたしはとってもメンヘラになってました。良くない良くない、こんなわたし良くない。
女は男に愛されていた方が幸せで、
男は女を愛していた方が幸せって真実ですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?