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行ってきました「情報社会世界サミット大賞」授賞式inチリ!(Part 3 受賞サービス紹介編)

前回のnoteでは「情報社会世界サミット大賞」通称WSAとは何か、そしてグローバル会合と授賞式では何が行われたかについてお伝えさせて頂いた。

今回は我々以外の受賞者の中から、個人的に印象深いと感じたプロジェクトをいくつかご紹介したいと思う。これら以外のプロジェクトも勿論それぞれ関係者の熱意が込められている上興味深いもの。是非こちらのWSAページから概要をご覧頂きたい。


政府と民間の連携部門

WSAの受賞者の中には、政府機関も含まれている。が、こちらは政府と民間のよき連携に焦点が当たった部門。その部門で選ばれた5プロジェクトの中から、ここではモロッコの「T3」を紹介したいと思う。
これは卒業証書のフィジタル(物理的要素とデジタル要素を掛け合わせる)認証プラットフォームで、学校にとっては学位の管理ツール、学生にとっては就労アシスト、企業にとっては信頼できる採用情報サービスと言えるだろう。モロッコには13の公立大学、3の半公立半私立大学、5の私立大学があるらしいが、それを束ねる文科省が率先してスタートアップの技術を採用したことで、モロッコの大学を卒業した学生たちの競争力強化をも実現している。優秀な生徒が主に旧宗主国フランスの大学へ行き、そのまま根付いてしまうという人材の流出を防ぐことにも貢献していくのではないか。

企業は受け取った証書に偽りはないか、さっと写真を撮って確認
デジタル出典:サービス紹介動画

健康とウェルビーイング部門

この部門の中からは、シンガポールの会社Mediwaveがスリランカで実施している医療緊急対応管理システム「Emergency Response Suite」を。これはコネクテッド・アンビュランスと呼ばれる、インターネットへの常時接続機能を備えた救急車に導入されるシステムで、救急隊員はVRヘッドセットを着け救急車内からデータベースや医療情報へアクセスし、車外からモニタリングしている医者の指示を受ける。下部写真のキャプションにリンクを貼ったサービス紹介動画、なかなか意欲的で見ていてテンション上がる!とは言え企業サイトを見たところ、まだ実装している様子はなく、加えて全国の救急車台数も今年2月の企業ブログによれば322台とのこと。(人口約5.6倍の日本は2022年の統計では6,549台。)人材・機材不足、インフラ未整備、農村と都市の格差、と様々な課題が入り混じる開発途上国では特にこのようなシステムの必要性は高いため、今後が期待される。

VRヘッドセットを着けた救急隊員には、救急車の中がこの様に見える!
出典:サービス紹介動画

環境とグリーンエネルギー部門

ここではネパールのデジタル廃棄物管理プラットフォーム「Safa Nepal」を紹介したい。首都では急激に人口が増加していて、1人が1日に出す廃棄物の量は東京23区の1.7倍にもあたる一方で(世界の医療団ホームページより)、処理システムの発達は追い付いていない。そんな中、スマホのアプリを通して誰もがゴミの不法投棄や出火などの情報を写真やビデオと共に自治体の担当局に送付できる、というのである。アプリの内容は、更にゴミ関連施設の場所表示や、ゴミ収集車トラッキング、環境教育コンテンツと盛り沢山。加えて興味深いのは、アプリを通した市民からの情報を元に、自治体は廃棄物処理に関する業務や方針を決めていくという前提で、行政への市民参加を可能にしている点である。自治体がこの前提を実現させる意思があれば、ではあるが…。

出典:サービス紹介動画

文化と遺産部門

今回のnoteの最後に紹介するのは、インドの言語学習プラットフォーム「Rongring」。見た目が多くの日本人にそっくりなこのプロジェクトチームの国籍は知らないままに「どこから来たの?」と聞くと、「ヒマラヤの東側から」との答えが。人生初めて得たその答えに思わず2度聞きしてしまった。彼らは国籍はインドであるがレプチャという民族に属していて、その文化を守るために、失われつつある彼らの言語を学ぶアプリを開発した。実際に活動を行なっている彼らでさえネパール語を普段は話しているというから、その危機的状況はかなり切迫したものだと想像できる。アプリでは言語を学ぶに留まらず、民話や食、医療情報などにも触れることができる。またオンラインでの学習も可能で、海外のレプチャコミュニティや言語学者、愛好家たちにもその輪が広がっている。現在7000程度の言語があるが、何も対策を打たなければその90%が今世紀中に消滅するという。当該者たちだけでなく外部者たちも巻き込んだプラットフォームを作り、消滅の危機にある言語そして文化を守っていこうという仕組みに可能性を感じる。

レプチェの帽子を被らせてもらい、超ご機嫌な筆者

次のnoteでは、WSAにおいて筆者が感じた世界、そして考えたWSAの存在意義について記したい。

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