惰性治

※この物語は全てフィクションであり、実在する人物・団体とは一切関係ありませんのでご了承…

惰性治

※この物語は全てフィクションであり、実在する人物・団体とは一切関係ありませんのでご了承下さい。 鎌倉幕府ってあと3年成立するのが早かったら1182(いいヤニ)作ろう鎌倉幕府っていう語呂合わせになってたよね。

最近の記事

2023年5月31日(水) 日記

私事で恐縮だが、昨日20歳の誕生日を迎えた。 「わかものはばかもの」という表現を昔何かの書籍で目にして以来、その言葉が頭から離れない。 すきなひとから、誕生日のお祝いにプレゼントをもらった。素敵な柄の傘だった。 「私が雨女だから?」と聞くと、すきなひとは「焼けてもらったら困ると思って」と、笑いながら言った。彼は私の不健康に白い肌のことを綺麗だと褒めてくれる。 プレゼントを家に持ち帰ると、プレゼントが入っていた紙袋からすきなひとの匂いがした。 胸がぎゅーっとなった。これがきっ

    • 愚鈍、饂飩、具丼。

      「そんなもの捨ててきなさい。」 母は私に言った。 今となっては思い出せないが、捨ててきたものは真っ白な繭にくるまれた虫の卵だったのかもしれないし、赤子だったのかもしれない。 キタマクラだった。 あの繭と同じような、目が覚めるような白さの清潔なティーカップに紅茶を注ぐ。 注がれた紅茶の水面に映る自分の虚ろな目を眺めているうちに、ティーカップの縁に付着した紅い口紅が、金魚のひれになり、悠々と泳ぎだした。金魚の真っ赤なひれが血のようにも見えて、少しグロテスクだった。 私は子供

      • 拝啓

        桜の花が儚く散り、葉桜の季節となりましたがいかがお過ごしですか。 僕はあなたと離れてから詩が書けなくなりました。それ以外はいたって健康です。 引越しは上手くいきましたか? 僕は昔から引越しなんて大嫌いです。 染み付いた思い出は引越したところで無に帰すわけじゃないのに、どうして人は引越したがるのでしょう。僕には到底理解ができないです。理解することを自ら放棄しているのかもしれません。 また葉桜でも囲んで、どうでもいいような話をしながらお酒でも飲みたいですね。 今日、ふたりの女子高

        • Blue Saturday

          あれ?私なんでこんな平和な土曜日の昼下がりに、東京都杉並区のコンビニの横で、hi-liteのメンソールを吸ってるんだっけ。 時の流れに反逆して走る電車。 駅の喫煙所で肩を寄せあっている、不倫関係にある部長と受付嬢。この関係に''エモ''と名前を付けてるようぢゃあ、この世も夜も末だね。私が言えたギリじゃないけど。シアワセならそれでいいじゃない。 いぬは好きだ。男は手も首筋も噛んでくるけれど、よく躾られたいぬは男なんかより噛みグセがないし賢いし従順だし、死以外で私の人生から別

        2023年5月31日(水) 日記

          野梅

          狂い咲きは美しいと思う。狂っていても、たったその一瞬だけでも愛してるもらえるのだから。それは彼岸花、悲願花。 何者かであって、何者でもなくても許されてしまう街。都会の淀んだ空気と、知らない人の幸福を受動喫煙する。気分は最高。 吸って吸って吸って飲んで飲んで呑まれて吐いて吐いて吐いて 僕だけが映らない映画のフィルムと資本主義 靴擦れの痕は意外と治らない。 大体抱いた代替品。 ネオン街に群がる、疲れた顔をした手取り24万3564円のサラリーマンに、「虫みたいだ。」とあ

          2023/02/19 23:44:09 日記

          落書きのつもりで原稿用紙に描き始めたアロワナが、文学の水槽の中で暴れて手に負えなくなってきている。文字たちを食い破る。でも、淡水でしか生きていけなくて。あんなに大きいのにそんなところで繊細さを出すなよな、と思った。 早朝4時、やっとほんのりとした眠気に体が包まれたため、布団に入った。 好きだった人が、私の夢にあそびに来た。雪山。夢の中で、あの人の少し乾いた笑い声が聞こえてきた。最近そんなことばっかりだ。こちらの世界線ではたぶんもう私の人生と交わることはないというのに。立体

          2023/02/19 23:44:09 日記

          ハシリドコロ

          夢を食う獏 才能を食う僕 絶望が追いかけてきた 怠惰だから追い越す気も起きず放っておいたら過去も現在も未来も絶望に挟まれて後戻りできなくなっちゃった 悩みの種を頭に蒔いたら芽が生えてきた このまま育って頭の中がお花畑になってくれたらいいのになぁ。 愛という薬が足りないから、ジェネリックな愛で痛みを誤魔化して、溺れながら生きてる。愛依存性。 酔っぱらいと考えるイデア論。哲学を500mlと皮肉を少し。針を失ってよわくやさしいヤマアラシになったつもりだったのに。もう誰とも

          ハシリドコロ

          挽歌

          幽霊人間はさ、改札を通る時にお金を取られるのかな。さァね、そんなことわからないよ。除霊にだっておかねがかかるんだから、きっと取られるんじゃないのかなァ。 もしも非常口のピクトさんが、出口じゃなくて入口に戻ろうとしていたのならば、どうしよう。大いなる自己犠牲。 未来ある若者の、筆が私に刺さる。彼女らが木炭の煤を指で弾くたびに、私はダーツの的になる。 M.Cーーーー マイ、チェーホフ。 彼は私のチェーホフにはなりえなかった。 挽肉の豚は、屠られた後にあの処刑台みたいな機

          ロールキャベツ【再掲】

          私の生活から誰かが消えるのが怖い。そう思っていたがたぶんそれは逆で、ほんとうは誰かの生活の一部から自分という存在が消えることに計り知れない恐怖を感じているのだと思う。いつも下を向いて歩いているのに、気まぐれでふと上を向いて歩いた時に気が付いた星空の綺麗さだとか、卵を割った時に双子だった時のほんの少しの喜びだとか、起きがけで悪夢から覚めて流す涙の冷たさだとか。そういう些細だけど大切な、人と共有したくなるような生活のひと時を失って自分が空っぽな人間になってゆくのが怖い。 だからそ

          ロールキャベツ【再掲】

          点M

          点Mは、この世の負の感情の全てをその一身に背負って、たくさんの人に忌み嫌われて、時には無関心という名の針の雨に打たれて、それでもまだなお進み続けている。 寿司、味見したなら最後まで食べるのが礼儀ってぇもんです。てやんでぇ、駅前の鮨屋のシャリはどうもベチャベチャしてていけねぇな。ありゃ着飾っているだけで中身のねぇ女みてぇだ。 入れ歯にたったひとつの 愛 を捧げる男。わたしの牙が、きみの心を貫いて離さなかったらいいのに。そんなの無理だって分かってるから。 へんなひとね。

          オーパーツ

          匿っている。ずっと匿っている。何を匿っている?それは世間では心と呼ばれていたり、ホンネと呼ばれていたりする。らしい。 雨の日。濡れたアスファルトに映るまちが、彼女の艶やかな髪のようで。僕の胸はギュッとなった。この街には思い出が散りばめられすぎている。 明日があるかも分からないのに、明日を生きることがまるで決まっているかのように早足で通り過ぎる人びと。都会の喧騒みたいで、僕はどうしてもその早足についていけなくて、いつも置いていかれることを選んでいる。 溶け落ちたろうそくの

          オーパーツ

          おためごかし

          ピンクと黄色のポップな字体の死。 酒で内蔵をアルコール消毒。私は社会の毒。 サルバドール・ダリとそのペット大阪湾の迷いクジラ淀ちゃん。 取り調べでカツ丼をたらふく食べた、グチョベドッってした肉の脂と吐き出されるゲンダイシャカイの功罪。 五回誤解五戒。 切り裂きジャックin豊岡 インスタントカメラに冬を閉じ込めるんだ、そうすればこの冬は色褪せない永遠の冬になる。 大山椒魚って沢庵漬けの味がするらしいよ、知ってた? 嘘つきだから左目から悲しみの涙を流せる。 生物

          おためごかし

          秘密結社Kについての手記

          ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。ヒュー、ヒュー、ヒュー。 逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。 走る。息が、切れる。 血生臭い鉄分の味が込み上げてきて、冷ややかなナイフを喉元に当てられているかのような感覚が押し寄せる。 、、、 やつらが来る。 私は今とある場所に身を隠し、息を潜めながらこの手記を書いている。この場所にもやつらの追手が迫ってきているため、あまり長くはいられないだろう。このように文章として形に残すのはリスクの高いことだが、やつらの悪事を白日のもとに晒すため

          秘密結社Kについての手記

          eclipse

          月とコーンスウプと虎狩り。 蜂蜜と杏茶の水面、ホイヘンスの原理。 ひとりぐらしに思いを馳せてニキシー管時計に閉じ込める惰眠。 レモンシャーベットの上に控えめにのせられたミントの葉っぱみたいに、彩りを添えるために存在する、綺麗だけど余計な感情。 「君の方があざといよ」と言って蠱惑的な笑みを浮かべる過去の人。フラッシュバック。 昨日から卵液に漬け込んでおいたふわっふわのフレンチトースト。独り占めできるのは大人になったって証拠かな。だけど、胸焼けした。重すぎる愛を摂取した

          無題

          羊を数えても眠れない夜があっただから羊を殺した。 ささくれた指に刺さった麻縄の感触。 母親の遺書に添えられた、細胞分裂をするカエルの肧のブツブツとした図形。 ないはずの故郷に対して、朧気に抱く「懐かしい」という感情。 蛍光灯の光を反射する、爪に塗られたはげかけの黒いマニキュア。その中途半端に塗られた黒に、意味もなく「私みたいだね」って呟く午前4時44分。残念ながら44秒ではなかった。たぶん。 カンバスの描きかけの絵が「才能なんて虚構だ」と嘯いている。そうだね、と私は