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Blue Saturday

あれ?私なんでこんな平和な土曜日の昼下がりに、東京都杉並区のコンビニの横で、hi-liteのメンソールを吸ってるんだっけ。

時の流れに反逆して走る電車。
駅の喫煙所で肩を寄せあっている、不倫関係にある部長と受付嬢。この関係に''エモ''と名前を付けてるようぢゃあ、この世も夜も末だね。私が言えたギリじゃないけど。シアワセならそれでいいじゃない。

いぬは好きだ。男は手も首筋も噛んでくるけれど、よく躾られたいぬは男なんかより噛みグセがないし賢いし従順だし、死以外で私の人生から別つことがないから。

七五三が、十九十七十五になった。

垢抜けない街の垢抜けないラブホテルで身に纏う、安いピンクのテロテロの生地でできたナース服。その生地の安さが、まるで私の体の価値の安さを体現してるみたいだった。どうしたって女。女でしかない。病気を治してほしいのは私の方なんだけどなぁ。

朝ごはんにコチニール色素を摂取。化学式が、栄養素になる。虫さんも頑張って生きてた。

あぁ、もう春だなぁ。春なのに死にたい。春だから死にたいのか。花柄のワンピースでも着て踏切に飛び込もうかしら。蛹から蝶になり損ねた幼虫宛らに、今の私には外界の光は眩しすぎて届かない。ずっと、白い壁だけを見つめる。ミシミシミシミシ。

友人に、「死にたい」って言ったら「今度メシ行くために生きろ」って返ってきた。そう、その言葉だけでいいんだ。慰めの言葉より同情の言葉より何より君のその阿呆らしさが欲しかったんだ。

貧血と酸欠で、頭がクラクラする。私と同じように青白い顔をした冷たいマネキンが、月明かりに照らされてショーウィンドウに並んでいる。でもねレバーは苦手だ。

誰かが私のために淹れてくれた、あたたかいココアが飲みたい。

群像劇と、カフカと、ライ麦畑と、アカククリの幼魚と、バスジャック。日常と非日常が交差する透き間。

逃避行おしまい。





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