2023/02/19 23:44:09 日記
落書きのつもりで原稿用紙に描き始めたアロワナが、文学の水槽の中で暴れて手に負えなくなってきている。文字たちを食い破る。でも、淡水でしか生きていけなくて。あんなに大きいのにそんなところで繊細さを出すなよな、と思った。
早朝4時、やっとほんのりとした眠気に体が包まれたため、布団に入った。
好きだった人が、私の夢にあそびに来た。雪山。夢の中で、あの人の少し乾いた笑い声が聞こえてきた。最近そんなことばっかりだ。こちらの世界線ではたぶんもう私の人生と交わることはないというのに。立体交差点。
目が覚めた。
携帯の充電器が壊れてしまったみたいで、機能しなくなっていた。少し雑に扱ってしまったからだろうか。仕方がないので百円均一ショップへ新しい充電器を買いに行った。壊れても替えがきいてしまうんだなぁ、これが。そのことに少し悲しくなった。
日中に1人で外に出るのは、なんだか久しぶりな気がした。大学生という不規則な生活の代表格みたいな職業をしているものだから、曜日感覚というものが薄れてきていた。しかし、ショッピングモールがやけに人でごった返しており、「あぁ、そうか今日は日曜日だったのか」と思い出すなどした。
都会の人混みは苦手だが、田舎の人混みはもっと苦手だ。狭いが故の息苦しさ。全員に監視されているような気がして、でもきっとそんなことはないんだろうけど、気持ち悪くなった。
それに田舎の人混みは「しあわせ」で充満しているような気がするから苦手なのだ。子供にせがまれてドーナツ屋の列にならぶ家族連れ。バレンタインの告白に成功して付き合い始めたのであろう初々しい高校生風のカップル。人生の苦楽を共にしてきたことが見て取れる、深いしわの刻まれた手を固く握り合う老夫婦。その誰もから「しあわせ」の香りがする。その香りに噎せそうになった。他人の幸せを心から願えるような素直さを持ち合わせていたのならば、今よりしあわせに生きることができたのだろうか。
財布の残金240円弱。
口座の残高30円。
惰眠を貪った。
昼寝を挟んだおかげか、体が心地よい怠さを保って存在していた。5時を告げる時報がなった。
寝起き、ダラダラと携帯を弄る。
何の気なしに、ノリで始めたマッチングアプリを開く。
わたしを知りもしない人から、「とりあえず結婚しようか」とメッセージが来ていた。年甲斐もなく、「そういう言葉はもっとちゃんとした、本当に大切な人ができた時のためにとっておいた方がいいですよ。こんなどうでもいいような人に対して使うんじゃなくて。」と真面目に説教をしてしまった。
メッセージに返信をしてから、外の空気が吸いたくなって、散歩に出た。突然マンゴーラッシーが飲みたくてたまらなくなり、なけなしの240円を握りしめてスーパーに向かった。
散歩途中、コインランドリーの目の前を通った。好きだった人の柔軟剤がすごく良い香りだったことを思い出し、自分以外のどこかの家庭の香りに胸がギュッとなった。
マンゴーラッシーは無事に買うことができたが、スカイブルーの財布は、心做しか鉛色に見えた。
母からもらった小さな黄色の肩掛け鞄には、大容量サイズのマンゴーラッシーは収まらず、手で持ち歩くことにした。冷えた手で抱えて帰ったら、さらに手が冷えて、寂しさを噛み締めた。
帰り道、少しだけ背伸びをしたくて履いていた2センチほどのヒールのブーツで足をくじき、また爪半月の大きさほど世界を呪ってしまったことを後悔した。
マンゴーラッシーを飲んだ。きちんと予想通り美味しかった。
...また眠ってしまったみたいだった。
なぜかとても官能的な夢を見た。だが、最近人間の三大欲求で言うところの「性欲」が自分の中から抜け落ちてしまったため、一切の欲情も湧いてこなかった。その代わり、「彼氏に振られた女子大生がヤケになって何人もの男性と..というシチュエーションのアダルトビデオを撮りたいなぁ。振られたシーンをねっとりと心理描写を多めに撮れば撮るほど良い映像になるだろう。」という感想が浮かんできてしまったので、人間としての終わりが近いのかもしれない。
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