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『彼女の行方』【第9話】

「些細なこと」

レストランの順番を間違えていたため、パズルの数が違っていた。
奈緒はパズルを四隅以外は時計まわりで順番にばらしたようだった。
おそらく手に持った1枚の写真が本来の4枚目と思われた。

写真はスカイツリーの展望台で撮ったものだった。

内容は忘れてしまったがここで珍しく些細なことで口論になったことを思い出す。
奈緒はとても穏やかな性格で、めったに怒ることもなかった。
あの時もすぐに仲直りして、スカイレストランで食事をしたり、プロジェクションマッピングのショーを見た記憶がある。

ショーは当時と同じものをやっているわけではないため、ここでもしパズルを残すとすればレストランの方だろう。
どちらにせよ日々大勢の人間が訪れる場所のため、先に「落し物センター」に問い合わせをしてみることにした。

電話しようとして、ふと手が止まる。
いつ、どこで、何を忘れたのか・・・
パズルのピースが入った袋のようなものを無くした、としか説明のしようがないことに気づく。
思い切って直接センターに行ってみることにした。

たくさんの落し物が届いているというので、直近1週間以内のものに限定して見せてもらった。
それらしきものが見当たらない。

ふと、写真の順番を間違えていたため、
タイミング的にもう少し前に奈緒が来ている可能性に気づいた。
さらに1週間遡って範囲を広げてもらうことにした。

 「あっそれです。」

忘れ物の中に見覚えのある文字で書かれた自分あての封筒を見つけた。

「これはどこにあったのですか?」
「スーベニアショップに落ちていたそうです。」

些細な口論の原因が、会社に持って行くお土産だったことを思い出した。
奈緒は思い出の場所に置いていったのだ。

身分証明書を提示して封筒を受け取る。
本来であれば落とし主は奈緒なので、彼女に渡すところであるが、封筒の表に記載の内容が一致したこと、中身のパズルが蓮の持っているものの一部であったことから引き渡してもらうことができた。

5枚目の写真までたどり着くことができた。
これでパズルのピースは21枚。
いつになったら彼女を見つけることができるのか見当もつかなかった。

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