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記事一覧
「十戒」を読んで(一風変わった設定のミステリーを読みたい人にお薦め)
つくづく色々なミステリーがあるなあと思った。この前に読んだ死んだ被害者と会話できるという設定の「真夜中法律事務所」も面白かったが、この小説の「犯人探しをしてはいけない」という設定も斬新だった。
ある島の所有者が事故で死亡した。その故人はその島に宿泊施設を建設する計画を立てていた。その計画を引き継ぐため、遺族と計画関係者の計9人が島に視察に行く。その島と行き来する定期船はなく、事前に依頼しないと誰
「時を壊した彼女 7月7日は7度ある」を読んで(面白かったおすすめです)
事故で死んでしまった友人を助けるため、過去の自分に現在の記憶を上書きできる装置を使って、7月7日を繰り返す物語。
この小説は、本当に面白かった。そして本当によくできたミステリー小説だった。
基本となる登場人物は7人だが、一度に過去の自分に上書きできる人数が最大4人と限られていることや過去の自分に記憶を上書きできる回数も一人あたり最大7回といった設定もすばらしかった。
繰り返した7月7
「密室方典」を読んで(気軽にタイパなミステリー小説を読みたい人にお薦め)
法廷遊戯の続きとなる短編小説
登場人物は前回と同じで、法科大学の院生と個性豊かな女子大学生2人による法律の解釈を軸としたミステリー小説。
前作に引き続き、美容整形、コンカフェ、SNSでの身バレ、DNA鑑定、ジェンダーレスといった、今の時代の社会現象をテーマにしている。
短い物語を無駄なく描かれているので、少しでも内容に触れると気づかずネタバレしてしまう気がするので、多くの文章は書きません。
「ナナフシの恋」を読んで
病院で昏睡中の女子高生から、学校に呼び出しのメールが届いた6人の高校生の物語。
昏睡中の女子高生は、あたりまえだが、メールを送れない。社交的ではなく友達も少なかった女子高生。誰もいない学校に集まった6人の高校生。なぜこの6人が選ばれたのか、この6人にはどのような接点があるのか。
と、こんな感じで、ミステリー小説風に始まります。しかし、この小説は、ミステリー小説というよりは、苦悩を抱えた高校生達
「わたしの結び目」を読んで(嘘について考えさしてくれる本)
嘘って何だろう?嘘は一律悪いことなのか?嘘も必要では!と思った本です
女子中学生二人の物語。周りの人を幸せにすることを自分の使命としている転校生と、家族と友達の問題で不安と不信になって友達の作り方に少し癖がある孤独な女の子
この二人が友達になる過程を、二人の視点が切り替わりながら進行する物語
転校生の女の子が、クラスのグループやスクールカーストを観察し、どう振る舞っていくべきかを思案している
「無事に返してほしければ」を読んで (”子どもだから”という偏見を見直すのに役立つかも)
この物語は3部構成で描かれている。最初の1部と2部と最後の3部は、物語としては繋がっているが、まるで違う作品のように感じた。
1部で事件が起き、2部と3部で解決するという構成になっている。登場人物は、夫婦と長女と死亡扱いとなっている弟の長男である。物語は、2年前に川で行方不明になり死亡扱いとなっている長男を誘拐したという電話がかかってきたところから始まる。そして、その事件のさなか、さらに姉
上木らいちシリーズを読んで(一風変わった探偵を知りたい人にお薦めかも)
こんな探偵の小説があるのかと思った。それに尽きる作品でした。素直に面白かった。探偵小説好きには一読の価値があると思います。援助交際を生業としている女子高校生が探偵の小説。援助交際が生業だからこその斬新な切り口で謎を解明していくことが面白く感動しました。だからといって、適当ではなく説得される論理性がさらに良かった。
パイアグラを飲むタイミング、男性のズボンのジッパーの開け方を軸にした推理、性行為を
『ギロチン城』殺人事件を読んで(ギロチンのことを少し知りたい方は、読む価値あるかも)
ギロチン城と呼ばれる、ギロチンをはじめとする処刑道具が集められた城のような館のなかで、人を斬首し続けるロシア人形の逸話と降霊術や都市伝説として伝えられる”スクエア”という儀式を題材にしたミステリー小説です。最後に、ギロチン城はなぜギロチン城かわかるようにもなっています。
スクエアとは、真っ暗にした正方形または長方形の部屋の4角に4人が立つ。ある角の一人が対角線ではない違う角に向かってまっすぐ歩き
「密室ロジック」を読んで(論理的な解明が好きな人向け)
殺人事件が起きます。
論理のみで犯人を推理します。
犯人がAの場合、犯人がBの場合、もしくは犯人がAとBの共同の場合等、犯人となるパターンを列挙し、一つずつ犯行が加納であるかを論理的に検証します。動機の推測はありません。物的証拠の探索もありません。ただ論理的の検証した結果、犯人となる可能性は誰某だと帰結して、この本は終わります。本当に論理パズルの解き方を説明するような小説です。
例えば、ある登
「サーカスから来た執達吏」を読んで
面白かった。時代は大正時代、サーカス出身の借金取り(執達吏)の少女と借金の担保として執達吏に預けられた少女の二人が、借金返済のために、ある華族の財宝探しをする物語
大量の財宝が数時間で消失する不可解な現象、その際に起きた殺人事件、財宝の場所を示す暗号といった謎を解いていく物語ではあるが、結局のところ、借金の担保として預けられた女の子の成長の物語であった。
借金取りの女の子は、家族はいな
魔女の原罪を読んで(道徳の勉強に)
この本は、
”法律違反以外は自由”という校則の高校。特定の人物に対する無視は、”話をしないという個人の自由選択の範囲内”であり、法律違反ではないため、校則違反ではない。そのため、全生徒が特定の人物を無視している事実を学校側が認識しても、何も対応しない。そんな学校で、校長先生が盗難事件があったと発表する。盗難事件を起こした生徒に対して、全校生徒が、”話をしない”という選択を実行する。主人公の青年は
「傲慢と善良」を読んで(生き方に関するちょっとした参考書)
面白かった。読んで良かった。小説としてではなく、生きることを学ぶ本として。
自分の意志で生きてきた男性(傲慢)と母親の言いなりで生きてきた女性(善良)の、ぞれぞれの考え方や価値観、そして世界の捉え方について、結婚をテーマに教えてくれる本です。
女性から男性へ「ストーカーが家に来ている」という電話から、物語は始まります。その電話をきっかけに、二人は同棲し結婚を約束する。しかし、何も言わずに女性
僕のメジャースプーンを読んで(自分で決めることが苦手な方におすすめ)
単純に面白かった。
他人の行動を制限できる能力を持つ少年が、偶然、その能力を使ってしまう。それを知った母親から危険な能力と言われ、使用を禁止されていた。
しかし、2年後、仲良くしている女の子が理不尽な目に遭い心を閉ざしてしまう。少年は、一週間後にその原因となった青年に会う機会を得る。禁止していた力を使いたいと少年は考えた。母親は、使って欲しくなかったけれど、同じ力を持つ先生(母親の叔父)のもとで
閻魔堂沙羅の推理奇譚6、7を読んで(テンポの良い推理小説が読みたい人にお勧め)
このシリーズは、1話完結の短編または中編小説である。死んだ人に対して天国か地獄かを判断する閻魔大王代理の閻魔堂沙羅と死んで復活する各話毎の主人公を中心とする物語である。起承転結もパターン化している。
起:主人公の悩みや人間関係が描かれる。
承:主人公が何者かに殺される。
転:沙羅が主人公に、生き返りたかったら自分が死んだ謎を解きなさいと
提案し、主人公が推理する。
結:主人公の推