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【#67】修学旅行編① いざ、ゆかん!

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

←前の話  第1話  目次


1998年(平成10年)6月18日【木】
半蔵はんぞう小学校6年生 12歳


「いきなり遅刻するなんて!!何を考えとるの!!!!!!」

 

集合時間に1分遅れただけなのに、3人の先生に囲まれてしまった。

 

修学旅行は、集団行動を勉強するために行くんですよ!!」

「特に、時間を守ることが大事なの!!」

「しかも、服部くんは『時計係』でしょ!!」


 【※】
 グループの中で時計の着用が認められた者。
 『5分前行動』が求められる修学旅行において、その役割は極めて大きい。

 

昨晩、修学旅行にアレを持って行こうか悩み過ぎてしまった。その結果寝坊し、遅刻したのだ。

 

「す、すみません」

 

先生たちのキレっぷりはすさまじく、全員が眉を吊り上げて大声で叱ってくる。

集合完了したみんなが見ている前でこんなに叱られるのは、正直きつかった。


【※】
 児童にとっては『楽しい修学旅行』であるかもしれないが、教師にとってはもちろん仕事の一環。
 人によっては、いつも以上に熱心になる。(よい意味で)

 修学旅行の集合時間が朝6時なら、5時から学校で待機するくらい当たり前のようにある。

 

「大変だったな・・・・・・」

「いや、僕が悪いんだからしょうがない」

 

自分の班の場所に行き、腰を下ろすとイイケンが小声で話しかけてきた。

そう、イイケンが同じ班であり、泊まる部屋も一緒なのだ。

 

「半蔵、旅行中は私のそばから離れちゃダメよ」

 

美緒が班長だという点もすばらしい。

僕が好きな物事を熟知している美緒なら、旅先での行動を“大目に見てくれる”可能性が高い。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

(好きなだけ戯れるがいいさ・・・・・・)

 

同級生の一部がバスレクの『マジカルバナナ』に興じている。

その隙に、僕はイイケンから借りたゲームボーイで『6つの金貨』に興じていた。

 


 

「半蔵、なんかおしゃべりしようよ」

「いま、忙しい」

「おしゃべりしないと、そのゲーム機のこと先生に言うわよ」

 



実にしたたかな美緒の要求を泣く泣く飲み込み、僕はゲームボーイをそっと鞄にしまう。

まぁいい。これは、あくまで今夜のためのウォーミングアップに過ぎない。

 

「美緒は、どんなお菓子を持ってきたんだ?」

 

仕方がないので、質問してみる。

 

「えっとね、こういうのだよ」

 

美緒は『チョコあーんぱん』『たけのこの里』を取り出して並べた。

チョコ系の物が好きらしい。


 

「かわいいでしょ?半蔵は何を持ってきたの?」

 

お菓子を『かわいい』という観点で見るのは、僕にとって意味不明である。

それはさておき、美緒は僕が持ってきたお菓子を知りたいらしい。

 

「それならこの紙を見るのが早いぞ」

 

1(遊) ポテトスナック ステーキ味
2(左)蒲焼さん太郎
3(一) じゃがりこ サラダ味
4(右) ヤンヤンつけボー
5(中)ヤングドーナツ
6(三) もろこし太郎
7(二)ビッグカツ ソース味
8(捕)まけんグミ
9(投)コーンポタージュ

 

「・・・・・・なにこれ?」

「お菓子の精鋭で、野球の打線を組んでみた」


 

特に四番打者で悩んだ。

 

『ヤングドーナツ』は、「まぶされた砂糖のザラっとした食感」「しっとりとした生地」が魅力で、一口サイズという食べやすさも嬉しいお菓子である。


が、四番打者を任せられるかというと、やや地味なのが気になった。



『ポテトスナック』には華がある。
サクっとした軽い食感と『ステーキ味』という豪華な味つけに、僕はすっかり魅了されていた。


だが・・・・・・

 

「こんなメモ・・・・・・わざわざ作ったの?」

「うん。2時間かかった」

 
だが、やはり『ヤンヤンつけボー』がオフェンス面でもディフェンス面でも抜きん出ていた。

 

「四番打者のヤンヤンつけボーってお菓子、おいしいの?」

「知らんのか!?」



【※】
 「おいしさ」だけでなく、「楽しさ」も追求したお菓子。
 スティックにチョコやラムネをディップすることができる。

 そのうえ、スティックには「クイズ」がついているので、「食べながら学習できる」という究極の逸品。
 パーティーセットも存在する。

(みなさんが子どもの頃好きだったお菓子の思い出、ぜひ教えてください😃)


「しょうがない、分けてあげるから一緒に食べよう!」



バスに乗っているうちから、最高に楽しい。

奈良に着いたら、いったいどれほど楽しくなっちゃうんだ?


(つづく)

次の話→ 

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