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【#107】源氏の小手は盗めない
平成。
それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。
主人公・半蔵は、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?
この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。
2001年(平成13年)12月21日【金】
半蔵 中学校3年生 15歳
目の前にクリスマス給食(きなこ揚げパン、クリスマスチキン、ゆで野菜、ポテトスープ、クリスマスケーキ)が広がっている。
さては私……天才だな?
— 厄年でもめげないなごみ@性癖垢 (@spa_open) December 24, 2019
今年のクリスマス給食です( ˇωˇ ) pic.twitter.com/6gyQBD6gYD
しかし、昨日の保護者懇談を思い出すと、食欲が減退していってしまう。
「今の学力では、志望校合格は難しいでしょう」
成績が伸び悩んでいた僕は、岩本先生にハッキリと言われてしまった。
このままでは、志望校の合格は難しいらしい。
「クリスマス給食も今年で最後よ。食べないともったいないんじゃない?」
「お、おぅ」
同じ班の花蓮に促されるが、どうしても受験のことが気になってしまう。
もし不合格になれば私立の学校に通うことになるが、そうなるとお金がかかる。
(母さんには迷惑かけたくないな)
夏休みに、『アゼルパンツァードラグーンRPG』を買ってしまったことを、強く後悔した。
#レトロコンシューマー愛好会 #AZELPanzerDragoonRPG#セガサターン#私の好きなBGM
— ラブ (@Love3z999Game) May 8, 2019
もうひとつのお気に入りBGMがアトムルドラゴン戦BGMです。 pic.twitter.com/BpzOsYjegD
【※】
1998年1月29日にセガサターンで発売されたソフト。
サターン末期に発売されてしまったがために、埋もれがちなってしまった悲劇の名作。
少年は、ドラゴンに乗って帝国と戦う。
特にドラゴン対ドラゴンの戦いがアツイ。 「ねらえ」は名言。
「なんか悩んでるの?」
「実はなぁ・・・・・・」
僕は花蓮に、勉強のことを相談した。
「だから言ったでしょ!定期テストは大切にしなさいって」
「いや、ドラゴンに乗って帝国と戦うのに忙しくて」
「何わけわかんないこと言ってんのよ。しょうがないわねぇ、あたしが勉強教えてあげるわ」
花蓮は、私立の女子高の推薦入試を受けることに決めていた。
しかも、『特待生』という授業料がかからない特別な待遇を受けるらしい。
「わるいな。じゃあ、久しぶりに花蓮の家に行っていいか?お好み焼きも食べたいし」
「えっ・・・・・・」
わざわざうちに来てもらうのは申し訳ない。
気を利かせて家に行くことを提案してみたのだが、反応は微妙だった。
「・・・・・・いいわよ。なら、学校終わったら勉強道具持ってうちにおいで」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「二酸化炭素は、水に溶けにくい。だから、集め方は・・・・・・」
「水上置換!!」
「アンモニアは、水に溶けやすく空気より軽い。だから・・・・・・」
「上方置換?」
「そうそう。ちなみに、上方置換で集める気体はアンモニアだけよ」
水上置換大好き❕ pic.twitter.com/rXDLRT8A4c
— どくバケツ (@dokubaketu) March 26, 2022
ふむふむ。
僕はけっこう理科は得意なのかもしれんな。
【※】
中学校理科の定番問題。
覚えてしまえば、貴重な得点源となる。
「裸子植物の代表的なものは?」
「え・・・・・・チューリップ?」
「違うわよ・・・・・・マツやスギよ」
「植物なんて興味ないから、覚えられる気がしないな・・・・・・」
「花言葉なんて、覚えると楽しいわよ。貸してあげるわ」
なんだか乙女チックな表紙だし、読む時間なんてないが、一応借りておくか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「次は数学を教えてくれ」
「いいけど、その”算術”ってなに・・・・・・?」
「数学をカッコよくいうと、『算術』になるだろ」
![](https://assets.st-note.com/img/1649330386492-UIqa2MYyDW.png?width=1200)
【※】
1997年6月20日にスクウェアから発売された『ファイナルファンタジータクティクス』に登場する職業。
『算術』という言葉に惹かれて、『数学』のノートに『算術』と書いていた黒歴史。(実話)
ちなみに、このゲームの『源氏の小手』は絶対に盗めない。(わかる人には、わかる)
FFTのジョブで好きなのは?
— アル夕イ (@r000g000b104) July 12, 2021
「算術士」に投票しました!
https://t.co/5SkZ3dzQ4N #算術士 #FFT #FFTの好きなジョブ教えて #ねとらぼ調査隊
「あっそう・・・・・・。とりあえず、この例題を解いてみなさい」
そういって、花蓮は問題集を僕の方に向けた。
【例題】
AB=6cm, BC=8cmの長方形ABCDがあり、点PはAを出発して毎秒1cmの速さでA→B→C→Dと移動していく。
出発からx秒後の三角形APDの面積をyc㎡とする。
(1) 0 ≦ x ≦ 6 のとき、yをxの式で表せ。
(2) 6 ≦ x ≦ 14 のとき、yをxの式で表せ。
(3) 0 ≦ x ≦ 16 のときのグラフを描け。
![](https://assets.st-note.com/img/1649210417423-6mU4L7tLmz.jpg?width=1200)
「あのさ・・・・・・」
なに、と花蓮が聞き返してくる。
まつ毛が長いな、とどうでもいいことを思ってしまった。
「なんでこの点Pって移動するんだ?」
「そんなの、アタシに言われても知らないわよ!!黙って解きなさい!」
【※】
考えても無駄。
だが、当時は『じっとしてろ!』と思っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二次方程式や、三平方の定理の問題を繰り返し解く。
平日に2時間も勉強するという偉業を達成してしまった。
「数学って、だいたいパターンはおんなじなんだな」
「そうなのよ。やり方さえわかっちゃえば、得点源になるわ」
ふむ。
花蓮に勉強を教えてもらい続ければ、受験も何とかなる気がする。
そう考えると安心し、お腹が減ってきた。
「お好み焼き食べに行っていいか?あ、もちろんお金は払うから」
「あのね、・・・・・・お店やってないの」
言葉の意味は簡単だった。
が、理解できない。
「やってないってのは?」
「お好み焼き屋は、閉店したの。アタシが東京に引っ越したのを機にね。設備の老朽化もあったから・・・・・・」
『夕焼け小焼け』が外から、聞こえた。
僕はもう中学3年生だ。そんなものが鳴ったからと言って帰る必要はない。
![](https://assets.st-note.com/img/1650282398619-kcgPcnh5em.jpg?width=1200)
「そうなのか・・・・・・。ごめん、無神経なこと言って」
「アタシが言わなかったんだから、知らなくて当然よ。お腹が空いたんなら、何か作ってあげるわ」
花蓮は焼きそばを作ってくれた。
さすがだ、僕の好物を知っている。
花蓮と過ごす何気ない日常。
それが壊れる日が来るなんて――この時は考えるはずもなかった。
(つづく)
![](https://assets.st-note.com/img/1649210850802-RJfwHJMv3z.png?width=1200)
見出し画像は『ファイナルファンタジータクティクス』(1997年6月20日/スクウェア)です。
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