朝から晩まで怒鳴られる仕事!『督促OL 修行日記』
「今日入金しようと思ってたんだよ!あーもー、お前が電話してきたからやる気なくなったわー、頭に来たからもう絶対入金しないから」
これは、『督促OL修行日記』のp155に書かれている言葉です。
著者の榎本氏が、超就職氷河期に入社したのがクレジットカード会社でした。
そこで配属されたのは、会社説明会では何も語られなかった債権回収部門。
しかも、クレジットカードやローンではなく、最もえぐいと言われたキャッシング(借金)の部署でした。
という無茶苦茶な怒鳴り声が飛んでくるところなのです。
相手は、消費者金融からもお金を借りることができなくなり、仕方なくクレジットカードでキャッシングをしている”猛者”たち・・・・・・。
気弱だった榎本氏は、ビビりまくりです。
しかし、やがて300人のオペレーターを指示し、年間2000億円の債権を回収するスーパー社員に成長します。
いったい、彼女に何があったのでしょうか??
本文中の引用はすべて『督促OL修行日記』(文庫版)のものです。
❶ 気弱な榎本氏
榎本氏は、一般的な女性。
普通の中学、高校を経て大学に進みます。
運動部はなじめず帰宅部になった、とのことなので人と争うことが苦手なタイプなのかもしれませんね。
待ち合わせに2時間遅刻してきた友人に文句も言えない性格でした。
なぜ、そんな人が督促の仕事を続けられたのでしょうか?
あなたの疑問は最もですが、答えは簡単明瞭。
そんな榎本氏を襲うのは債務者だけではありませんでした。
職場環境も、非道なところだったのです・・・・・・。
❷ ひどい!劣悪な職場環境
入社初日、いきなりコールセンターに連れていかれた榎本氏は、一日中怒鳴られるという”洗礼”を受けます。
やっと、帰宅許可が下りたところ、隣に新入社員がガチガチと震えています。
なんと、入社初日にインフルエンザを発症したのでした。
そのうえ、勤務時間は朝7時~23時。
食事の時間以外は、ひたすら電話をするということですから頭がおかしくなりそうです。
実際に榎本氏は、この仕事に蝕まれており、
といった事態になってしまいます。
気弱な榎本氏は、コワモテ男性社員と比べ債権回収率が低く、自信を失っていきます。
ここまで読むと、『督促OL 修行日記』って、読むのがしんどい本なのでは?と思われるかもしれません。
が、決してそうではない、と私は力強く述べます。
❸ 4コマとユーモアで乗り切る!?
仕事内容は凄惨の一言ですが、各章の冒頭にある4コマが癒しです。
どこか笑えてしまうのは、4コマだけではありません。
文章全体がユーモアに書かれているので、暗い気持ちにならず一気読みできます。
いきなり、「直接会って話そうじゃねぇか。今から高速飛ばして行くから待ってろよ!」と言われた榎本氏が、上司に相談したときの場面です。
軽快な文体なので、バラエティー番組を見ているかのような気軽さで読めるのですよ。
しかし、この本の最大の明るさは4コマでもユーモアでもありません。
榎本氏の「超前向きで工夫に満ちた仕事への取り組み方」なのです。
❹ 私がやるしかない
榎本氏には、飲みに行くほど仲の良い同期のA子さんがいました。
入社時に男性社員から歓声が上がるほどのルックスと、高い業務成績だったA子さんを、榎本氏は憧れていました。
ところが、A子さんは体調を崩し、「仕事なのにお客さまに嫌われるのが耐えきれなくて」と言って退職してしまいます。
そこで榎本氏は、
と考えます。
そして、
という結論に至ります。
そう考えて職場を見渡せば、そこは宝の山でした。
5件、6件と借り入れを行なっている多重債務者という難敵に対し、実際に債権を回収している職場です。
長年培われてきた督促スキルの宝庫だったのでした。
そして、そのスキルを惜しみなく披露してくれます。
など、督促に限らず社会生活で使えるものがほとんどで実に勉強になります。
その具体的内容を読めば、榎本氏がトップオペレーターに登りつめていく様子がわかりますよ。
❺ 感想
以前紹介した本『弱くても勝てます』に通じるものがあるなぁと思います。
何事にも、「弱者の戦い方」というのがあるのですね。
私は突出した才能がないですが、やり方次第で成功する姿に勇気と希望をもらえました。
個人的に弱者が活躍する話が好きなのですよ。
あえて、万人に通じない例を挙げますが、『ジョジョの奇妙な冒険』では第五部の主人公・ジョルノが好きです。
それまでの主人公といえば、「破壊力:A」でしたが、ジョルノの能力は「破壊力:C」。
単純なパワーだけ見れば「弱い」と言えそうですが、「物体に命を与える」能力を工夫して使い、臨機応変に活躍します。
その姿が実にかっこいいんですよね。
榎本氏の『督促OL 修行日記』にも同じ魅力を感じました。
出版を目指しています! 夢の実現のために、いただいたお金は、良記事を書くための書籍の購入に充てます😆😆