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日本語はヨコ書き?タテ書き?←3秒で回答できるようになる話

結論。
日本語は、本来・・タテ書きです。


(あえて『本来』と書きました。最終結論は下にあります

多くの書籍、国語の教科書、お品書きなどが、タテ書きですね。


では、なぜ日本語はタテ書きなのでしょうか?


この記事は、日本語の素晴らしさ・面白さをみなさんに伝えたい、という思いで書きました。


1.日本語がタテ書きである理由


日本には文字がなかったので、中国から文字を輸入しました。
(輸入した文字とは、【漢字】のことです)

それが、四世紀後半のことだと言われています。



ところで、当時の中国では何に文字を書いていたのでしょうか?



昔の中国に、製本の技術はありません。
したがって、巻物に書いていました。


巻物を書くとき、人はどうするでしょうか?
右手(利き手)で筆を持ち、左手で巻物を押さえたり広げたりします。

※実際は、「紙」ではなく「竹」でした。


そうすると、タテ書きが最も自然に書けるはずです。
そういった事情で中国語(漢文)は、タテ書きとして使われていました。



中国から漢字を輸入した日本語は、中国語の影響を強く受けています。

つまり、

なぜ日本語はタテ書きなのか?

答えは、

中国語がタテ書きであり、その影響を受けたから。

と言えます。


2.そもそも、タテ書きではない?


いま、あなたは、

「日本語ってヨコ書きばかりじゃん?」
「noteもヨコ書きじゃん?」

と思われたかもしれません。

不機嫌そうな男性



「ありがとう」をタテ書きとヨコ書きで記述し、比較してみましょう。

それぞれ、筆記具の軌跡を描くと・・・・・・

こうです。

タテ書きの軌跡の方が、短く自然なつながりと言えるでしょう。

漢字も平仮名も片仮名も、右下で書き終わる文字が多いので、タテ書きの方が自然に書き連ねることができるのです。


このことからも、日本語は本来タテ書きするものだとわかります。



また、下記の画像をご覧ください。

文字と文字のつながりが、実に美しいでしょう?


二千円札には、『源氏物語』の『第三十八帖「鈴虫」』の詞書※ことばがきが書かれており、|麗《うるわ》しいことこの上ないです。

【※】
詞書ことばがき=絵巻(この場合は『源氏物語絵巻』)などにおいて絵の前後の説明を書いた文章のこと。


さらに、下記の画像の芸術性は、もはや美の極致です。


文部科学省検定済教科書
高木聖雨ほか17名『書Ⅰ』
p101/令和3年3月1日検定済み

ちはやふる
かみよもきかず
たつたがは
からくれなゐに
みづく々るとは

在原業平ありわらのなりひらの歌/『小倉百人一首』より)



美的鑑賞ができる文字なんて、世界のどこかにありますか?


実用面でも美的側面でも、タテ書きは良いこと尽くしなのです。


3.タテ書きの有効性


タテ書きの利点はいくつかありますが、字数の関係で1つだけ挙げます。



それは、読みやすさ。
タテ書きの文章の方が、読みやすいです。



なぜか?

突然ですが、鏡を見てください。

目は、どんな形をしていますか?
横長ですね。



目が横長の形をしているので、ヨコ書きの文章の方が多くの文字を捉えることができます。
したがって、ヨコ書きの方が読みやすい。(えっ?)








・・・・・・とは、なりません。

福井大学名誉教授の熊谷高幸たかゆき氏は、次のように書いています。

ヨコ書きでは目にとまった文字群の認知がよいだけに、それがそのまま視覚像として残りやすく、記憶の切り替えを困難にしている可能性がある。

熊谷高幸『タテ書きはことばの景色をつくる』p73




これに対してタテ書きは、文字認知では劣るものの、視点を移し、記憶内容を更新しながら文脈的なつながりを見つけていくのには適していると考えられる。

熊谷高幸『タテ書きはことばの景色をつくる』p73


ヨコ書きの場合、一度に多くの文字を捉えてしまうゆえに、かえって読みづらくなってしまうのです。


4.ヨコ書きの反撃

この記事を読み、

「ワシもタテ書きが好きじゃ。最近の日本はヨコ書き文書が横行しとるであかん!!」

と言いながら、机を『ドン!』と叩く高齢男性がいるかもしれません。

「やはり新聞は、ええのぅ。タテ書きは読みやすいわ」

その男性は、タテ書きの筆頭である新聞を愛しているでしょう。






でもちょっと待ってください。

新聞には、ヨコ書きが含まれています。

(下記のツイートの内容は、本文とは関係がありません。画像の新聞記事をご覧ください。また、ツイート主さんからは、掲載の許可を得ています)


現在の日本においては、むしろヨコ書きの方が主流なのは言うまでもないでしょう。

職場で使われている文書のほとんどは、ヨコ書きですね?
あなたの運転免許証もヨコ書きですし、noteもヨコ書きです。



国なんて、1951年(昭和26年)の『公用文作成の要領』の中で、

一定の猶予期間を定めて,なるべく広い範囲にわたって左横書きとする。

と宣言しています。


『公用文作成の要領』p8

※上から3行目にご注目ください


国が横書きを推奨し、それにならって一般の文書もヨコ書きになっていきました。
さらにパソコンの普及により、ヨコ書きは浸透します。




かといって、賞状のような格調高い文書には、今でもタテ書きが使われています。

つまり、現代の日本はタテ書きとヨコ書きが併用されているのです。

私はタテ書きが好きだと書きましたが、スマートフォンやパソコンの画面で文章を読むときはヨコ書きの方が読みやすいと感じます(慣れているので)。


今日こんにちの日本では、


タテ書きか、ヨコ書きか

ではなく、

タテ書きも、ヨコ書きも

という態度が望ましいのです。



つまり、

『日本語は、ヨコ書き?タテ書き?』

の最終結論は、

日本語は、タテ書きもできるし、ヨコ書きもできる

が、ふさわしいと思います。




5.タテ書きとヨコ書き



現代の日本はタテ書きとヨコ書きが併用されている。
これは、たいへん素晴らしいことだと思います。


そもそも、世界の言語の配列はどうなっているのでしょうか。
金田一春彦先生は、『日本語 新版(下)』において、五種類紹介しています。

金田一春彦『日本語 新版(下)』p40
1988年/岩波書店



世界において、ある程度の人口を有する国でタテ書きなのは日本と台湾しかありません。

中国も、今はヨコ書きです。


日本語がタテ書きとヨコ書きを併用するのは素晴らしい。
私がそう主張する理由は、実質3種類の配列方法(書き方)ができるからです。

まずは、からへ進むタテ書き。

夏目漱石『吾輩は猫である』


次に、からに進むヨコ書き。

夏目漱石『吾輩は猫である』


最後に、からに進むヨコ書き。

(トラックの側面で、よく見かけるものです)


【注意】
上記のツイートは、5年前のものです。
現在は状況が変わっています。(めいらくの逆文字トラックは通常横書きに置き換わりつつあります)


「ターャジス」なんて間違いやろ。

と思われたあなた。
次のような考え方なら、いかがでしょうか?

まず、タテ書きにして・・・・・・、


改行を増やし・・・・・・、

│一行一字《・・・・》のタテ書きとしてみれば、決して間違いとは言えません。

タテ書き1種、ヨコ書き2種が共存している日本語は、世界的にみて稀有なのです。

タテ書きもヨコ書きもそれぞれ良さがあるので、両方が使える日本語は、実にスバラシイのです。

6.まとめ


①    日本語がタテ書きなのは、「巻物」の扱い方が関係している
②    タテ書きは実用面でも美的側面でも優れている
③    しかし実際は、ヨコ書きが主流ではある
④ 日本語は、タテ書きとヨコ書きが共存している

⑤    タテ書きもヨコ書きも共存している日本語は、素晴らしい!

この記事を書き、私はますます日本語のことが好きになってしまいました。

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