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英国放浪記(散策編その1)

目が覚めると午前6時20分、私はロンドン郊外ウェンブリーにあるホテルの6階のベッドの上だった。昨夜、14時間のフライトを終え羽田からどうにかここまでたどり着いたのだ。
眼下に照らされる街並みは、薄桃色の朝日に照らされ、優しく色づき始めていた。大通りをまだライトを点けた車が滑るように進んでいた。私はぼんやりと窓に目をやった。

窓ガラスが割れている。

よくボールをぶつけてできる蜘蛛の巣のような割れ方ではない。稲妻でも走ったような亀裂が、高さ2メートル半はありそうなガラス窓に入っているのである。窓を恐る恐る触ってみると、亀裂は外の方から入っているらしく、こちらから触れることはできなかった。
急いでホテルの内線電話でフロントに電話し、たどたどしい英語で状況を説明した。朝食の席で添乗員さんと相談することになった。

朝食後、添乗員さんと相談し、部屋を移るかと言われたが、私はほんの数時間でその光景を見慣れてしまったため、特にそのような必要はありませんと答えてしまった。部屋を移るよりも、これから始まるロンドン観光で頭が一杯だったのだ。

大英博物館 2日連続で入館

ホテルの前に2階建ての貸し切りのロンドンバスがやってきて皆で市街地に向かった。
ロンドンの街並みは、古い建物がたくさん残っており、石造りの家や100年近く経っていそうなビルなどもまだまだ現役で使われている。何だかシャーロックホームズの世界にタイムスリップしたような気分だ。
そうこうしているうちに、開けた広場に出た。横に目をやると、白くて大きな建物が鉄柵の向こうで悠然と佇んでいた。
大英博物館。世界中の様々な考古学的遺産が集まった世界一大きな博物館だ。白く大きな柱の間を抜けると、大きな四角いクリアケースがあった。その中には様々なお金が入れられていた。
大英博物館は、基本的には入場無料である。しかし、入場者の寄付という形で運営されているのだ。そのため、いくら投じても良い。私は10ポンド札をケースの中に入れ、奥へと進んでみた。そこには、本から飛び出してきたような光景が広がっていた。
ロゼッタストーン、メソポタミア文明の遺産、ヒエログリフが書かれた石板、ツタンカーメンの黄金のマスク…。社会科の教科書に載っている様々な遺産が目の前に展示されている。とんでもない場所である。更に驚いたことに、入場者はほとんどの展示品の写真撮影を自由にすることができたことだ。私はこれでもかというくらいにスマホで写真を取りまくった。

古代エジプトのパピルス 死者が裁きを受けている


中でも私が印象深かったのは、日本の展示品だ。二代目歌川広重の浮世絵や江戸時代に作られた機械式時計、更には東インド会社のために日本で作られた有田焼の焼き物など…。日本が海外の品々を手に入れるために手放してしまったものの多くが、海を渡った遥か彼方で数百年の時を経ても大切に保管されていた。当時から、日本は海外から注目されていたことがよくわかった。

江戸時代に作られた機械式時計

結局私は、ツアー1日目と自由行動の半日を大英博物館で過ごした。私は、展示されていた品々に感動したことはもちろん、大英博物館の世界の歴史に対するリスペクトにも胸を打たれた。


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