結城一縷

ゆうきいちる

結城一縷

ゆうきいちる

最近の記事

アルバトロス・ジャーニー

まえがき 鉄道のレールは、継ぎ目に隙間が作られています。 なぜなら、その継ぎ目が全くないと、夏の暑い日に鉄が膨張し、レールが歪んでしまうから。 そんな隙間、いわゆる「遊び」が人生にもあっていいのではないかと、私は思います。 今は立ち止まって一休み。 この期間に自分でレールを敷いて、ある程度線路が出来上がったら、またがたんごとんと音を立てて、走り出していきたいと思います。 ◆ ◆ ◆  2022年7月から2023年10月までの1年4か月は、私にとって「遊び」の期間でした

有料
750
    • テンポラリー・ニート

      いわゆるニートになって2週間以上が経過していた。 8月下旬には退職していたので、その時点で定義上はニート(Not in Education, Employment or Training)であった。ただ、日本一周という目的のために退職したので、ほとんど毎日車を走らせており、ある意味忙しいニートであった。 ところが9月下旬にあえなく車が故障し、修理に1か月はかかることになった。車でないと行きづらい場所を訪れるのが今回の旅の目的だったので、行く術を失った以上、修理が終わるまでの間

      • ことのはのは

        幼い頃、私は一人遊びが好きだった。今でこそ弟がいるが、弟が生まれたのは私が小学校1年生のときだったので、一人でも楽しめる「一人っ子マインド」が醸成されるには十分な時間だった。そんな私が当時特に夢中になっていたのは、「文字ブロック」だった。 幼児が誤嚥しないよう、大人の拳ほどのサイズになっている四角いブロックは、上部に突起、下部に窪みがあり、側面にはひらがなやカタカナ、ローマ字が書かれていた。その窪みを突起に嵌め込んで積み上げると、「やま」「かわ」等、単語を作ることができた。幼

        • 過去の作品まとめ(楽曲、小説)

          聴いて&読んでみてね!! 【楽曲】 お願い! ワンクッション Chin-an-ago 御中 Want You 【小説】 八月蝉い (第9回ネット小説大賞:二次選考通過作品) やさしくない 博愛主義者は君を愛せない〜愛に関する一考察〜 以上です! まだまだ勉強中だよ!

        アルバトロス・ジャーニー

          あうたりわかれたりさみだるる

          五月雨式に申し訳ございませんが、とメールを書き出すとき、未だにいつも少しだけ、社会人になったなあという気持ちが顔を覗かせるが、その度にこいつは碌な社会人ではないと反省することになる。 社会人なりたての頃、五月雨式に申し訳ございませんが、から始まる先輩のメールを見て、わざわざ意味を調べた。 使うべきでないのにこんなに使いたくなる言葉があるとは、と思った。乾燥したビジネスメールの中に降って湧いたように現れる叙情は、まさにオアシスのようで、私自身も度々メールに長雨を降らせているう

          あうたりわかれたりさみだるる

          ホラーマンは君さ、元気を出して

          小学生の頃、「一人勉強」という所謂自主学習を毎日ノート2ページ分行うことになっていた。どんな学習でもよかったので、私は漢字を書き連ねるか、市区町村の形を羅列するか、挙げ句果てに小説を書くか、そのいずれかしかしていなかった。当時の私の辞書に、「まんべんなく」という言葉はなかったのかもしれない。 興味のあることには全力を尽くせるが、興味のないことには無理をしないと力を注げない子供は、結局そのまま社会人になってしまった。それでも、自分が興味を持っている範囲内の仕事に就けたはずだった

          ホラーマンは君さ、元気を出して

          数珠の鳴らぬ間に

          祖父の一周忌に参列してきた。 土曜日の朝、父と弟と私は羽田空港に集合し、秋田へと飛んだ。本当は新幹線で向かいたかったのだが、先日の地震の影響で一部不通となっていたため、土曜日の朝に出発して日曜日の夜に帰着するという、忙しないスケジュールとなってしまった。 それでも、昨年の葬儀にはコロナ禍で参列できなかった私たちにとっては、今回一周忌を実施できること自体が有り難かった。 秋田空港のビルを出てしばらく待っていると、向こうから赤い車が走ってきて、停車スペースに停まる。私たち一行が

          数珠の鳴らぬ間に

          オゾンホール

          紫の輪を幾度となく潜り抜けて、何故か知っている場所に辿り着く。土色の乾燥した岩肌は、背丈ほどの穴がまばらに繰り抜かれていて、その中の一つを選んで中へと入っていく。 逃げ惑う人々の中で、追い立てられるように走る。自分だけが素っ裸で、いったい何が起こっているのかわからないまま、懸命に足を動かす。雲の上を駆けるように、残酷にも下半身が空回る。黒くて濃い異空間が迫りくるのは、背中で見えていた。それはおそらくコンクリートの津波ともいえる。 進まない、進まなくとも足掻くしかない。段々と視

          オゾンホール

          海へ帰る

          約2億5000年前、パンゲア大陸という巨大な陸地があった。現在の五大陸全てが陸続きになり、「超大陸」とも呼ばれているが、その大陸が徐々に分裂し、現在の地形になった。 これがあくまでも一説である一方で、私たちは再び「超大陸」が完成しつつあるのを目の当たりにしている。新型コロナウイルス・オミクロン株の世界的な蔓延である。 2021年11月下旬、南アフリカでオミクロン株がWHOに報告された。遠く離れた大陸から日本にオミクロン株がやってきて、爆発的に感染者数が増えるまで、ほんの1か月

          Femme Fatale〜頓知気なアイドルに貴方は戦慄する〜

          「ファム・ファタール」という言葉をご存知だろうか。可能な限り簡単にまとめるなら、これは「男を破滅させる魔性の女」を指しており、言うなれば傾国の美女、楊貴妃などが代表的な例だろう。 そんな名前を冠したアイドルユニット「Femme Fatale」が日本にいると知ったのはいつだっただろうか。明確な記憶はないが、少なくともMV「鼓動」が途轍もなく印象的だったことは覚えている。 そんな彼女たちの、もはや恐るべきとも言える「魅力」を、8つのポイントに分けて紹介していきたいと思う。 1

          Femme Fatale〜頓知気なアイドルに貴方は戦慄する〜

          5. 山形 vs. フルーツ怪獣

          さくらんぼ東根駅、さくらんぼテレビ…これらの名前を聞けば、おそらくそれが山形県の駅であり、山形県の放送局であることを知っている、または推測できる人は少なくないのではないだろうか。フルーツ王国の一つである山形県の中でも、特にさくらんぼのイメージは強いが、これからそのイメージを、私の実体験で補強していきたいと思う。 1. 【思い出の場所①】寒河江 幼い頃、私は「フルーツ怪獣」と呼ばれていた。あらかたの果物が大好きで、食卓に現れれば食べ尽くしてしまうからである。そんな怪獣が毎年

          5. 山形 vs. フルーツ怪獣

          3-1. 乳頭温泉郷訪問記(後編)

          「乳頭温泉訪問記」と銘打ったものの、前編ではアクセスやプランに全振りして、実際の感想については言及していなかった。後編は冬の乳頭温泉郷がいかに最高だったかを具体的にお伝えしていこうと思うので、後編を読んで興味をお持ちいただいた方には、以下の前編をお読みいただくのもよいと思う。 さて、今回訪れたのは以下の4軒なので、それらについて簡単にではあるが語っていきたい。 (参考)乳頭温泉郷ウェブサイト ※各温泉ウェブサイトへのリンクあり 2-1. 宿について〜大釜温泉〜 202

          3-1. 乳頭温泉郷訪問記(後編)

          3-1. 乳頭温泉郷訪問記(前編)

          2021年12月24日。秋田県は田沢湖駅に、私は降り立った。理由は二つある。一つ目は、以前から抱いていた「乳頭温泉郷を訪れたい」という思いを叶えるため。二つ目は、現在訪れたい場所を以下のような記事にまとめている中で、まずは一つ有言実行するためであった。 乳頭温泉郷は7軒の宿(別館除く)で構成されており、残念ながら今回全部は訪れることが叶わなかった。それでも、まさに湯水のように溢れる魅力を浴び、より多くの方々に訪れてほしいと強く思ったので、まずは現地への細かいアクセスについて

          3-1. 乳頭温泉郷訪問記(前編)

          4. 銀河鉄道、岩手発イーハトーヴ行き

          みなさんは「銀河鉄道」に乗ったことはあるだろうか。「銀河鉄道は架空の存在だろ」「そういう名前のアトラクションね」と思う方もいるだろうが、私が言っているのはれっきとした交通機関の話である。その鉄道は、「いわて銀河鉄道線」という名前で、実際に岩手県北部を走っている。 いわて銀河鉄道線(IGR, Iwate Galaxy Railway line)は、もちろんその名を宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』にちなんでいるが、私が幼少期に訪れた岩手県も、各所で日本を代表する作家・宮沢賢治を身近

          4. 銀河鉄道、岩手発イーハトーヴ行き

          3. 秋田さけ!

          死亡率は9年連続の全国ワースト。死因別はがんが全国で最も高かった。出生率、自然増減率、婚姻率は最下位だった。 (2021/6/5, 河北新報, https://kahoku.news/articles/20210604khn000036.html) 命を失う人が多い一方で、新しい命はなかなか誕生せず、人口はひたすらに右肩下がり。いったいどんな過酷な場所なのだろうと思うかもしれないが、これはどこか遠い国などではない。秋田県、私が生まれ育った場所である。 実際のところ、秋田県は

          3. 秋田さけ!

          2. 青森に青い閃光を見た

          青森県は私にとって、近くて遠い場所だった。私は秋田県出身なのだが、隣県といえど東北6県は一つ一つの面積が広く、東京から埼玉や神奈川に行くのとは訳が違う。おまけに青森と秋田両県には、白神山地と十和田湖という二つの景勝地が跨っており、それらがどちらのものかと聞かれれば、各県出身者は自らの県の所有権を主張するような有様なのである(というのは過言だが、実際十和田湖上の両県境界は今でも明確に定まっていないらしい)。 実際のところ、私は青森に対して何の反感も持っていないどころかその魅力を

          2. 青森に青い閃光を見た