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『夏の朝の成層圏』読了感想

『夏の朝の成層圏』読了感想

今回はサラッと感想を書いてみよう。

船から落ち、無人島に漂着した男の話。
自然の脅威に晒され、脱文明の生活に苦労するが、馴染んでいく日々を重ねる毎に元の生活に帰りたくなくなる様子に、不思議と分かるなーって思える。

漂着してすぐ、椰子の実を割る行為でさえ苦戦する。その描写がこれでもかと思えるくらい続く。

生きることに必死で、生きることが生きる目的みたいな、シンプルな生活。お金を稼ぎ、お金を消費

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軌跡を知る。【梨木香歩著 やがて満ちてくる光の 読了感想】

軌跡を知る。【梨木香歩著 やがて満ちてくる光の 読了感想】

本が好きなくせにエッセイものを読了した経験がない。それは恐らく、小説とは違い、起承転結のストーリーではないから。そして一節一節が短く読みやすい分、辞め時が有り過ぎて後回し癖が出てしまうから。

しかしそういったマイナスの肩書きに終わりを告げる。こちら、最後まで読めました。

やがて満ちてくる光の 梨木果歩

この本は作者の25年間の軌跡が書かれている。内容は日々のことから今まで連載してきた著書にま

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はしっこから、風が吹く【河田桟著 はしっこに、馬といる 読了感想】

はしっこから、風が吹く【河田桟著 はしっこに、馬といる 読了感想】

1匹の馬と1人の人間の特別な関係。

恐らく本屋さんには売ってない、だけど素敵な本だったので、読了感想をここに書き記します。

この本に興味を持ったきっかけは、梨木果歩さんのエッセイ「やがて満ちてくる光の」での河田さんとの対談記事。その考え方に非常に興味を持ち、購入に至りました。

著者の河田さんはもともと東京で本に関わる仕事をされていたそう。とある馬と出会い、共に暮らすため与那国島に移住されまし

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夢を見させてくれている 【原田マハ著 楽園のカンヴァス 読了感想】

夢を見させてくれている 【原田マハ著 楽園のカンヴァス 読了感想】

美術ミステリー。
だけど人が死ぬとか、殺されるということは無く、ルソーの絵画に魅入られた男女の研究者が、とある絵画の真贋判定を行う話。

物語は早川織絵の話から始まる。現在の仕事は美術館の監視員。そんな一介の監視員に、ニューヨーク近代美術館(以下、MoMAと記載)のチーフキュレーターからお声がかかる。

そしてもう1人の主人公、ティム・ブラウン。
織絵に声をかけた、MoMAのチーフキュレーターであ

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受け入れるということ【梨木香歩著 村田エフェンディ滞土録  読了感想】

受け入れるということ【梨木香歩著 村田エフェンディ滞土録 読了感想】

「え、綿貫さん出てきますよ?」

本好きの方と話をしていた時に言われたひとこと。
このひとことで、何故今まで読んでなかったのだろうかと後悔した。

なんのこっちゃらだと思うので説明をしたい。
まず、私は梨木香歩さんの大ファンである。梨木さんと言えば、「西の魔女が死んだ」がいちばん有名だろうか。実写映画化もされている。
初めて読んだ時、自然の描写の表現力が凄まじく、まるで木々の中ですーっと呼吸してい

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