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オオキユーヒ三題噺まとめマガジン

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2022年10月の記事一覧

178.三題噺「ポケットティッシュ、学生、落ち着く」

178.三題噺「ポケットティッシュ、学生、落ち着く」

 今日はハロウィン。
 ある場所では仮装した人で賑わうらしい。

 そんな恒例行事といえるものをこの人が見逃すわけもなく……。

「後輩くん、とりっくおあとりーと!」

 昼休み、僕は先輩の占拠している空き教室に強制連行された。

「なんですか先輩……」

「あれ? 後輩君。とりっくおあとりーとだよ? お菓子くれないと悪戯しちゃうよ?」

「今更ですが、その格好はなんですか?」

 先輩の格好は、

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177.三題噺「抜け殻、着の身着のまま、からっ風」

177.三題噺「抜け殻、着の身着のまま、からっ風」

「さて、今日は何しようかな」

 出かける妹を見送り、僕は今日の予定を考えた。

 誰からも連絡は来てないし、何もせず抜け殻のように自堕落な時間を楽しむのもいいかもしれない。

 そんなことを考えていたら、スマホに一件の通知。僕は差出人を確認する。

「同クラさんだ。『暇なら出かけない?』か……」

 僕はいいよ、と返信をした。

 待ち合わせ場所に向かうと、ロングスカートを履いた同クラさん。
 

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176.三題噺「ケータイ、投げキッス、10月」

176.三題噺「ケータイ、投げキッス、10月」

 早いもので10月も終わりだ。

「……」

 土曜授業が終わった教室で、元生徒会長の俺は自作したお菓子を頬張った。おいしい。

 帰り支度をしていると、教室の扉が開いた。

「先生?」

 そこには俺が片想いをしている相手がいた。

「残ってくれてよかった。ケータイを出してくれ」

「ケータイ? あぁ、スマホのことっすか」

 俺はスマホを取り出した。

「どうしたんすか?」

「この前猫カフェ

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175.三題噺「放心、マーマレード、生徒会長」

175.三題噺「放心、マーマレード、生徒会長」

 最近、校内の風紀が乱れているという噂があり、僕と後輩ちゃんは見回りをしていた。

「いつまで残ってるんですかー!」

 後輩ちゃんは教室に入り、大声で注意した。
 残っていた生徒達は蜘蛛の子を散らすように鞄を手にして逃げていく。

「まったくもう……。あ、ギターが置きっぱなしじゃないですか」

 急いでいたせいで机に放置されたままだ。
 後輩ちゃんはギターを手にして少し鳴らす。

「後輩ちゃん。

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174.三題噺「ソロ、修正ペン、玉突き事故」

174.三題噺「ソロ、修正ペン、玉突き事故」

 放課後、僕は先輩と一緒に下校していた。
 駅のホームで電車を待つ。

「はぁ……」

 疲労感からため息をつくと、先輩が顔を覗き込んできた。

「後輩くん。元気がないぞ〜?」

「先輩のせいですからね」

 なぜ疲れているのかというと、文化祭用に先輩が作った段ボールの勇者セットを装備したRPGごっこに付き合わされたからだ。

 ソロ冒険してくれたらよかったのに、と思わずにいられなかった。

 途

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173.三題噺「電撃、おじいさん、スキャンダル」

173.三題噺「電撃、おじいさん、スキャンダル」

 放課後、僕は用事があって図書室に来た。

 誰もいないと思ってたら、同クラさんが本を読んでいた。
 西日が当たる横顔は神秘的な美しさがあった。

「同クラさ……」

 声をかけようとしたけど、本に夢中みたいだ。流石は文学少女。本の虫だ。

 邪魔しないようにひっそり息を潜めて、僕は自分の用事に取り掛かる。

 何事もなく、僕の用事が終わったところで、同クラさんに挨拶くらいはしようと周囲を見た。

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172.三題噺「スローダウン、朝日、遅延」

172.三題噺「スローダウン、朝日、遅延」

「せんぱーい……もしもーし」

 耳元で後輩ちゃんの声が聞こえる。

「っ……。ごめん、意識飛んでたかも」

「眠かったら寝て大丈夫ですよ?」

「後輩ちゃんは眠気きた?」

「私はまだ眠れなそうなので、もうちょっとだけ起きてようかなと思ってますが……」

「なら付き合うよ」

「ありがとうございます。やっぱり先輩はやさしい」

 深夜、寝付けなかった僕がスマホを見ると、後輩ちゃんからメッセージが

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171.三題噺「スライディング、ビール、戦闘力」

171.三題噺「スライディング、ビール、戦闘力」

 担当教科の先生が急に体調不良になったらしく、昼休み後の授業は自習に変わった。

「ねえねえ、同クラさん」

 僕は隣の席の同クラさんに話しかけた。
 同クラさんは書いていた手を止めて僕を見る。

「ん? どうしたの?」

「無感情ゲームしない?」

「な、なにそれ?」

 これは先輩の考案したゲーム。
 簡単に言えば感情を表に出した方が負けというルールだ。

 ルールを説明すると、同クラさんはす

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170.三題噺「永久保存、ラテアート、桟橋」

170.三題噺「永久保存、ラテアート、桟橋」

 元生徒会長の俺はとあるカフェにいた。
 ただのカフェではない。

「にゃ、にゃ」

 身を屈めている先生が猫の声真似をした。

 ここは猫カフェ。
 昨晩、勇気を出して先生を誘ったところ、偶然にも休みだったのだ。

 今、先生は自由気ままに過ごす猫に夢中で、ソファに座っている俺のことは完全に視界から消えている。

 注文していたコーヒーが届いた。
 俺の方にも先生の方にも猫のラテアート。

 デ

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169.三題噺「入道雲、筆箱、ドーナツ」

169.三題噺「入道雲、筆箱、ドーナツ」

「青空が綺麗だね。後輩くん」

 どうして僕は先輩と河原の芝生に寝転がるなんていう、青春物語のようなことをしているのだろう。

 たしかに青空は綺麗だ。
 でも、なんでこんなことをしてるんだろうと思ってしまうのは否めない。

「文化祭でやりたいことやりきって完全燃焼しちゃったよ、燃え尽き症候群かな?」

 先輩はぐぅーっと伸びをした。一緒に空を眺める。

「いわし雲見つけました」

「あっちにはし

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168.三題噺「喉、会議、砕く」

168.三題噺「喉、会議、砕く」

 文化祭最終日、僕は体育館の舞台袖にいた。

 今は一大イベントのミスコンが開催されている。異様な熱気と緊張感だ。

「誰が優勝となるのでしょうか!」

 元生徒会長のマカロンくんが司会だ。
 喉を張って大声を出している。

「どっちが優勝すると思う?」

 マカロンくんによってもう一人の進行役、後輩ちゃんに話が振られる。

「どちらも大人気ですよね」

 僕は舞台袖にいるふたりの少女に近づく。

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167.三題噺「貯金、見どころ、探索」

167.三題噺「貯金、見どころ、探索」

 今日は文化祭二日目。

「貯金を使い果たす勢いで楽しむぞ〜」

「廊下は走っちゃダメですよ」

 一仕事終え、休憩時間になった途端に先輩に手を引っ張られて僕は校内を連れ回される。

 縁日をやっている教室で水ヨーヨー釣りをした後は、食べ歩きをしたり、プラネタリウムを見たりした。

 どれも文化祭というクオリティを超えたものばかりで、見どころがいっぱいだ。

 先輩は歩きながらいちご飴を食べている

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166.三題噺「モデルチェンジ、ポチッとな、勝ち抜き」

166.三題噺「モデルチェンジ、ポチッとな、勝ち抜き」

 今日から文化祭。

 学校はハロウィンを先取りした飾り付けがされていて、朝から賑わっている。
 準備期間が半月とものすごく長い分、かなり豪華だ。

 そんな校内の隅っこで、僕は誰にも見つからないように潜んでいた。

 何故かというと……。

「こんなところに逃げたの? 後輩くん……じゃなかった。後輩ちゃん」

 全身着ぐるみを着た先輩が僕に追いついた。
 僕は先輩によって女装をさせられたのだ。

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165.三題噺「跳梁跋扈、隣町、有頂天」

165.三題噺「跳梁跋扈、隣町、有頂天」

 文化祭前日の今日、僕は騒がしい校内をほぼ走っているような速度で歩き回っていた。

「後輩ちゃんはこっちの確認をお願い!」

「わ、わかりましたっ!」

 生徒会の各メンバーに指示を出したから、僕も自分の仕事をしないと……。大忙しだ。

「こうはいくーん!」

 廊下を疾走する先輩。
 段ボールで製作した勇者セットを身につけていた。

 今更だけど、何故この人は野放しにされているのだろう。
 よく

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