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企画小説『扉』2

今回の設定スキは、7です。1月末で締め切ります。
前回までの内容はこちらです↓

ーガチャー

真正面から師走の寒太郎が抱きしめてくれた。あまりの歓迎振りに身振りがした。両手をポケットにしまい、僅かな小銭をしっかりと握りしめた。街は煌びやかなイルミネーションに飾られており、クリスマスソングが流れている。そんな中、身だしなみの乱れた三十路男性は浮くのだろう。街の視線が冷たい。
『チッ』と舌打ちをしたと同時に、目の前に白い布が現れた。その視線の先には、上下を紺のスーツを身に纏い、黒のロングコートを羽織っていた男性が立っていた。
「早くマスクしろよ」
その言葉で、我に帰った。マスクを付けていないが為に、世間の視線が冷たかったのである。恐る恐る封を開けマスクを身に付けた。マスクの上部から抜ける自分の息を目線で掻き分けながら、その男性を観察した。しかし、マスクに色眼鏡、ニット帽でさっぱり誰か分からなかった。
「ついて来い」
そういうと男性は歩を進めた。酒以外の出逢いがあったことに戸惑ったが、黙って付いて行った。すると男性は、喫茶店の扉を開けた。

ーガチャー


社長室から出た後のことはほんど覚えていない。誰かが仕切りに自分の名前を呼んでいた気もするが、無意識で身辺整理をしていたらしい。もう何もこの会社に想うことはなかった。何の為に働いてきたのだろうか。悔しさだけが湧き上げてきた。就職が決まった際に、周りからはもっと良い所なかったの?だの散々言われた。自分の人生、自分で決めて何が悪いと思っていたが、その行く末がこれだ。この5年間、朝も早くから夜の遅くまで働いてきた。それでも何も報われなかった。これから何処へ向かうのか自分でもこの時さっぱり分からなかった。いや、進む気すらしていなかった。しかし、無意識ながらも身体は自宅へと向かうべく事務所の扉を開けた。

ーガチャー

純喫茶の雰囲気が漂う店内。昭和感漂うマスター。そのマスターにホット2つとだけ告げ、その男性はテーブル席に腰を下ろした。
「久しぶりだな。」
そう言うと、男性はマスクと帽子を取った。そうこの男性は。。。

続く?

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