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2024年6月の記事一覧
不確定日記(クミンの幽霊)
もう夕方なのに、友人たちはみんな消耗した顔で玄関を入ってくる。まだ外気がだいぶ蒸し暑い。我が家が駅から遠くてごめん、と思う。一番早く着いて、まだ料理を並べる前のテーブルで仕事をしていたTちゃんが、「クミンのにおいがする」という。クミンはこれから使うつもりだが、まだ棚から出してもいなかった。
ぽつぽつと皆が集まり、手土産を受け取って冷蔵庫に入れたり、氷がないからすぐそばのコンビニで買ってきても
不確定日記(夏の細切れ)
夢で確かに大笑いしていたが、私が実際声を出していたかどうかはわからない。
することは多かった。ここ数日、グループ展の搬入や、家で料理をする仕事をして出たり入ったり荷物を運んだりが多く、とにかくものが散らかっている。すべてを片付けるのは無理なので、することを選ばねばならない。昨日は大雨だったが今日は晴れていたので、まずシーツを洗い、寝床に迫る勢いで積み上がった衣類の整理とだいぶ遅い衣替えをする
不確定日記(二度会う)
グループ展に出す作品を作るために、シルクスクリーン版画を自分で刷ることのできる工房に行った。バス停を降りてから、急で細い坂道を降りる。午前十時はもう暑くて、見晴らしのいい坂道は祖父と父の墓のある霊園を思い起こさせるからか、お盆のような気持ちになった。まだ梅雨前で、梅干しも漬けていない。
工房に着いて、PCを借りて版を作るためのデータを修正していると、Kさんが入って来た。「運命?」と言われる。
不確定日記(潰して煮る)
誰かの怒鳴り声で目が覚めた。マンションの共用部で誰かが怒っていた。怒号の内容までは聞こえなかったが「帰れ」という言葉だけが何度も聞こえた。その後、いなすような優しい声が聞こえ、怒号はおさまり、優しい声を出せる人はすごいな、と思う。私はといえば、足がすくんでいた。高所と、地震と、怒鳴り声が怖い。怖いと、足首のあたりが震える。
恐ろしさで目覚めたことを引きずりたくなくて、再度少し眠った。
昨日
不確定日記(ピンク色のこと)
歯列矯正用のリテーナーを入れるためにもらったケースが、派手なピンク色だった。
わたしが子供の頃は1980年代で、世間的にはまあまああった色とジェンダーを紐づける偏見は、我が家に関してはなく、というか、「ピンクは女の子の色、というような刷り込みも、女が過剰に女の役割を演じるのも大変によろしくない」という明確な教育方針のもと、母はわたしに「女児向け」のものを買うのが嫌そうだった。そのため、ちょっ
不確定日記(味覚の情緒)
ここ最近、あれ、なんかすごい美味しいな、と思うことが多く、それはタコだったりケイジャンチキンサンドだったり干し椎茸だったり、元々好物ではあるが、毎回しばらくジーンとしてしまうような感激があるので、ちょうど大雨だったりもして気候や体調による情緒不安定を疑っていた。わたしは自分の気分の上下を基本的にあまり信用していない。どこか他人事なのは、子供の頃からの癖だ。同級生に無視された時などに役に立ったよう
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