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「この経験で身につけたスキルを活かして働きたい」

就職活動で面接試験の際によく使う言葉ですね。

さて、ここでいうスキルとは何を指しているのでしょう?

実習で磨き上げた自分の技術のことを指しているのか、それとも他の人にはない独自の技法を指しているのか、はたまた熟練の技能を指しているのか。

ここで改めてスキルについて考えてみます。


プログラミングスキル、営業スキル、カウンセリングスキル、コミュニケーションスキル、ビジネススキル・・・などなど、○○スキルという言葉はたくさん存在します。

また、スキルを磨く、スキルを身につける、スキル不足など、日常的な言葉として浸透しています。

スキルという言葉。辞書にはこのように掲載されています。

スキル【skill】
手腕。技量。また、訓練によって得られる、特殊な技能や技術。

デジタル大辞泉 小学館

手腕、技量、技能、技術・・・と似通った言葉が並んでいます。
そこで、それぞれの言葉に対するわたしの見解をまとめてみます。


【技術】テクノロジー
言語などによって明文化され、他者に伝達できるよう知識化された技。文書等によって大勢に広めることができる。

【技法】テクニック
技を使う手順や方法のこと。技術を使いこなすための具体的な手法を指し、知識を実際に使うための行動を示す。

【技能】スキル
技法を高いレベルで使いこなし、熟練の技へと昇華させる能力。経験によって積み上げた技術の集大成で、他者には容易にまねできないその人固有の能力として磨き上げた技のこと。


特にこの3つには、技術→技法→技能の順に、習熟度や熟練度、知識から実践的な能力へとステップアップしていく、そんなイメージを描いています。

一般的にはスキル=技術・技能と言われますが、技術は「誰でも知識としてインプット可能なもの」であるのに対し、技能は「熟練の技・能力として身につけたもの」という違いを見出しています。


また、手腕とは身につけた技術を発揮して取り組む能力であり、実力ともいえます。

さらに、技量は身につけた技の熟練度を表し、経験値の大きさを示します。


・・・という感じに定義してみました。あくまでわたしの見解としてご理解ください。


なぜわたしがここまでスキルという言葉にこだわっているのか。
それは「スキルは一朝一夕で身につくものではない」と捉えているからです。

例えばプログラミングスキルの場合、確かに参考書やサンプルプログラムを作成すれば、なんとなくプログラムが組める程度のスキルは身につくでしょう。
でも、困っている人を助けるためのプログラムを作るとなれば、お手本通りに作成する程度のスキルでは太刀打ちできません。
自分で様々なプログラムを試行錯誤してつくり、バグやエラーとの戦いを経て、ようやく思うようなコードが書けるようになります。
この過程で膨大な経験をし、その経験値・経験知を基礎となる技術と組み合わせる技法を身につけたとき、初めて技能=スキルと呼べるレベルに達するはずです。

学生時代の数年間でプロと同等のスキルを身につけることは容易ではありません。もちろん四六時中プログラミングを行う強者もおりますので、時間だけが指標ではありません。ですが、そんな強者たちが集まるのがプログラミングの世界ですので、安易に「スキル」と口にすることははばかられるような印象があるんです。

これはあなたの仕事でもそうではないでしょうか?
あなたが何年もかけて磨き上げてきた技能を、新入社員が数か月の研修で身につけたレベルの技術と一緒にされたくないと思いませんか?
まして入社試験で「学生時代に身につけたスキルを活かして~」と言われると・・・プロとしてのプライドが傷つけられる感じを抱く人もいるかもしれません。


ですので、わたしはあえて「スキル」という言葉を使わないようにと指導しています。その代わり、「アルバイトで身につけた技術」「学校で学んだ技法」という言葉を使うことをおススメしています。

もし使うとしても、「学生として学べる範囲のスキルは磨いてきました」というくらいの表現に抑えています。そのうえで「入社後はプロとしてのスキルを身につけて活躍できる人材に成長したいと考えております」とプロのスキルとは差があることを付け加えるようにしています。


技能は、技を使いこなす能力と書きます。
国家資格である技能士は、高い技能を有していることを国が認めるというものです。そこまで達して初めて「本物のスキル」と言えるはず。

わたしのキャリアコンサルティングスキルは、まだ入門者レベルです。
2級技能士で「熟練」、1級技能士で「指導者」のレベルですから、まだまだスキルと呼べるほどの技能は持ち合わせていません。

一方でJCDA認定のピアファシリテーターとして経験代謝に基づいたキャリアカウンセリングを実践するスキルは仲間と共に磨いてきました。熟練と言えるかわかりませんが、少なくとも経験値・経験知は相当な時間をかけて積み重ねてきたと自負しています。わたしが「カウンセリングスキル」という表現を好むのは、わたしの中に技能士に対する畏怖の念・尊敬の念があるからかもしれませんね。


今日は、「スキル」という言葉をきっかけに「技術・技法・技能の違い」について考えてみました。いかがでしたか?




明日も佳き日でありますように

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