おかし

平野レミさんの料理愛好家を真似して、作文愛好家を名乗ってます。 書くことや読むことが大…

おかし

平野レミさんの料理愛好家を真似して、作文愛好家を名乗ってます。 書くことや読むことが大好きです。 オンライン作文教室「言葉の森」の講師をつとめた後、 【読書作文教室@みのり】をこっそりやってます。 【KajiBlog】に小さな暮らしのあれこれや読み書きのことを書いています。

最近の記事

『正欲』の社会

朝井リョウさんの『正欲』を読んだ。人気作家の映画になるくらい人気の作品。おもしろそうと思っても、実際には読めない本の方が多いと思うと、こうして今読む本には、人との出あいと同じくらいの縁を感じて読んでいる。ふだん昭和の作品を読むことが多いせいか、『正欲』はあたりまえだが現代的で映像的だと思った。 なかでも佐々木佳道の社会観が興味深かった。知らないうちに、いつの間にか人々がひとつの価値観に集約されていくようすを川の流れにたとえていたのが印象的だった。といっても、本はもう手元にな

    • 愛読『生物と無生物のあいだ』

      人間は現実と非現実を案外かんたんに取り違えてしまうのではないか。 「事実は小説よりも奇なり」を地で行く事件のニュースを見るたび思う。人生いろいろあるけれど、一線を越えてしまう人と超えずにとどまる人がいる。何が違うのか。 一線を超えてしまうのは、もしかしたら現実と非現実の区別が「ごちゃっ」とする瞬間ではないか。 わたしたちは現実と非現実のあいだを生きているのだ。 『生物と無生物のあいだ』を真似してみた。 最近読み直していたら、〇と〇の「あいだ」が気になりだしてきた。「

      • 映画『市子』と『火車』の新城喬子

        映像見てたら読んだ本のことを思い出すことがよくある。 映画の『市子』は宮部みゆき『火車』のヒロイン新城喬子を思い起こさせる。 他人になりすましたり入れ替わったりする話、失踪物語と同じくらいありがちだけど面白いから好き。事件やドラマのにおいがするからなのか。どうしてこんなに興味をひかれるのかふしぎ。 誰でも一度くらい、別人に生まれ変わって生き直したい気持ちがあるのかも。 そういえば指名手配されてたオウム信者が、ごく真っ当に健康保険証を取得してふつうに暮らしてたというようなニ

        • 今さらアガサ・クリスティに挑戦

          横溝正史と同じく、映像でしか知らないクリスティ作品の読書に挑戦したくなったのは、やっぱり映像のポアロ、ケネス・ブラナーが素敵だったから。 もっとも原作に近いと称賛されているデビッド・スーシエ演じるポアロの良さはまったくわからなかった。ただただ嫌味な感じが鼻についた。 子どもだったのね……。

        『正欲』の社会

          「VRおじさんの初恋」と「贅沢貧乏」

          NHKの夜ドラ「VRおじさんの初恋」を見ていたら、ふと森茉莉の「贅沢貧乏」を思い出した。

          「VRおじさんの初恋」と「贅沢貧乏」

          KajiBlog 更新しました。 ”e-Taxで確定申告してみた” https://homemaking.hanaranman.net/e-tax.html

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          KajiBlog 小さな暮らし模索中

          家事ブログを細々と運営しております。 noteでは家事ブログの更新のお知らせをしていく予定です。 よろしければ、ぜひのぞいてみてください。

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          『人新生の「資本論」』を思い出して

          感染症に戦争に自然災害で不穏だから『人新生の「資本論」』を読んだのは2022年の三月ごろ。 2019年にバルファキスの『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』を読んで、あたりまえだと思っていた世の中の経済活動に疑いの目を持つようになったからだった。単純である。 マルクスの『資本論』という古典を再評価する動きがあるらしかった。ところがマルクスはすっかり忘れ去られた存在になっていて、新しい文献も専門家もおらず、学ぼうとする学生もいないような状態が

          『人新生の「資本論」』を思い出して

          小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』

          想像力に乏しいわたし、文章を読んだだけではなかなか映像が思い浮かばない。建物や景色の説明文が延々と続く小説は大の苦手。密室トリックは挿絵がないとお手上げで挫折することも少なくない。 ところがこの『バタフライ和文タイプ事務所』は独特の世界観にすぐ引き込まれ、ありありと具体的な光景が浮かんできた。 小川洋子氏は風景や建物の写真を見るのが好きで、そうした写真を見ているうちに物語が出てくるといったような話をしていたものをかつて読んだ記憶がある。その卓越した文章力は、わたしのような

          小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』

          アンソロジー読書

          この年になって残り時間を意識するようになったら、読める本の数って限られるなあと実感。 それで『東西ミステリー100』のベスト10作品を片っ端から読んでみるようなことをしている。 https://amzn.to/3O2qX5z 最近読破を目指しているシリーズが新潮文庫の『日本文学100年の名作』全10巻である。 文庫本10冊のアンソロジーだからいろんな作家の小説が一度に楽しめる。1914年から10年ごとに一冊の中短編がまとめられたもので、最終巻で2004年から2013年だ

          アンソロジー読書

          なぜか北村薫氏の文芸趣味にハマる

          ミステリーのガイドブックをもとに読み進めていくつもりだったのだけど、ランキング上位10作品を読んだあたりで次は外国作品にしようか、それとも新しい作品を読んでみようか悩んでいた。 ふと日常のミステリーで有名な北村薫氏の『空飛ぶ馬』を読んでみる気になった。いろんなところで話題にのぼる作品だったので、いつかは読んでみたいと思っていたものだ。 最初の印象は正直退屈な感じがして、シリーズを全部読み進めることになろうとは思いもしなかった。教科書にあるような小説らしい文体がどこか懐かし

          なぜか北村薫氏の文芸趣味にハマる

          父が娘に語る経済の話。

          たいてい本は図書館で借りて読むのだけど、この「父が娘に語る、美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」は、2019年の4月にめずらしく購入して読んだ。当時すでに話題の本だったと思う。 わたしにとって経済というのは縁遠いもので、これまでほとんど考えたことがなかった。いつも苦労している家計もまた経済の一部分であるということも意識したことがなかった。 家計が苦しいのは、身の丈に合わない贅沢をして貯金を怠ってきた自分が悪いと思い込んでいたふしがある。 ところがあん

          父が娘に語る経済の話。

          『魍魎の匣』三分の一を読んで

          東西ミステリーベスト100の国内ランキングベスト10を読んでいる。 図書館で借りる都合上、第9位の『魍魎の匣』が最後になった。 京極夏彦氏の作品は、映画やアニメになるほどエンターテイメント性が高く、面白いに違いないのに、恥ずかしながら読むのはこれがはじめて。 薄気味悪い感じや文芸作品並みの品質の高さは、横溝正史作品に負けず劣らず。読み進めるのが楽しみになる。 上・中・下巻に分かれた長編で、ようやく中にさしかかったところなので、何が何だかさっぱりわからない混迷のさなかである

          『魍魎の匣』三分の一を読んで

          82歳母の作文

          母はわたしのブログの一番の読者である。 ブログを始めたものの、知り合いに告知することができない。むしろ知ってる人のほうが恥ずかしくて言えないまま今に至る。それがどういうわけか離れて暮らす母にだけは読んでもらっている。 小さい頃、母に日記をたいそうほめられて、その日記をずっと大事にとっておいてくれていた。それがわたしの数少ない自信になっているのかもしれない。 母は、厳しくほめてくれない祖母を反面教師に、よくほめてくれた。子どもはほめるといいというけれど、それほどでもないこ

          82歳母の作文

          個性に寄り添う作文教室です。

          まだ電話と郵便だったオンライン作文教室「言葉の森」で長年講師をしていました。独立して個人で読書作文教室@みのりを運営しています。 ひとりひとり丁寧に対応したかったのと、夜間や長時間、常時専念することがむずかしい個人的な事情もあり、お問合せくださった方を対象に、細々と、でも楽しく続けられています。 これまで幼稚園児から大学生まで幅広い年齢の作文を読んできました。みな個性豊かで読むのが楽しいです。 多少のルールやテクニックは練習してもらいますが、基本的に書いた作文を添削する

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          『信仰』

          新聞の本の紹介記事を読んで面白そうだと思った。 図書館でずいぶん長い間予約待ちをして、ふいに順番が来たとき、安倍元首相銃撃事件の後で、世の中は偶然にも宗教の話で大騒ぎ。なんだかとってもタイムリーな感じ。 信仰といえば宗教をイメージしがちだけれど、考えてみれば知らない間に信じ込んでることはいっぱいあって、常識とかブランドとか幸せとか、どんなものも勝手に都合のいいように信じて生きているのだなあ、ということをあらためて思い知らされた話だった。 エッセーらしい文章が小説に混ざって

          『信仰』