小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』
想像力に乏しいわたし、文章を読んだだけではなかなか映像が思い浮かばない。建物や景色の説明文が延々と続く小説は大の苦手。密室トリックは挿絵がないとお手上げで挫折することも少なくない。
ところがこの『バタフライ和文タイプ事務所』は独特の世界観にすぐ引き込まれ、ありありと具体的な光景が浮かんできた。
小川洋子氏は風景や建物の写真を見るのが好きで、そうした写真を見ているうちに物語が出てくるといったような話をしていたものをかつて読んだ記憶がある。その卓越した文章力は、わたしのような鈍い映像再現能力でさえ容易に刺激して活性化してしまうのだろうか。子どもの頃の絵本を読んでいたときのような感覚を思い出した。
『バタフライ和文タイプ事務所』はおもしろいところに位置する個性的な職場である。どういうわけか宮崎駿のアニメ『魔女の宅急便』とか『千と千尋の神隠し』を思い起こさせた。
これが冒頭部分。絵本みたい。
事務所内の描写がまたいい。
さらに
何だかアニメを見ているような気になってくる。
ところがだんだん、知らず知らずのうちに、何だかあやしくなまめかしい色っぽい想像をかきたてられるようになっていく。
漢字やことばが持つイメージを巧みに使った非常におもしろい作品。
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