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米中決戦2020-世界最終戦争への道⑥

おはようございます。MSX(経済安全保障局)のアルキメデス岡本です。

さて、前回の続きです。

前回は主に軍事的な観点からの戦略分析を行いましたが、今回は経済安全保障の観点から米中覇権戦争の今後と世界の未来を考えたいと思います。

アメリカの新世界秩序

5月末、トランプ政権は「米国の中国に対する戦略的アプローチ」と題する公式文書を連邦議会あてに送った。米国政府全体が中国との新たな対決姿勢をとるにいたり、そのための多様な政策を認めるよう米議会上下両院に要請する目的で、新対中政策の骨子を議会に向けて説明した。

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米国政府は同文書で、中国が米国主導の国際秩序を根底から壊そうとしていると断じ、その野心的な動きを抑えるために中国と対決することを政府の基本方針として明示していた。米国による中国との全面対決新時代の公式宣言ともいってもよい。

16ページから成る同文書は、【序言】【チャレンジ】【アプローチ】【実行】【結論】の5部で構成され、全体として、中国が米国に正面から挑戦する脅威の存在となり、米国および日本など同盟諸国の利益の根幹を侵すにいたったとの見方を示している。同文書の概要は以下のとおりである。それぞれのパートを見ていこう。

【序言】

米国は1979年の中国との国交樹立以来、中国がより豊かに、より強くなれば米国主導の国際秩序に加わり、国内的にも民主化を進めるだろうという期待に基づいて関与政策を進めてきた。だが、この政策は失敗した。

中国はより豊かに強くなった。しかし、共産党政権の非民主的な国内弾圧は強まり、対外的にも米国主導の「開放的で自由で法の支配に基づく民主的な国際秩序」を侵し、周辺諸国に対して軍事、政治、経済の各手段で自国の意思を押しつけるようになった。

米国がとるべき行動は、自陣営の価値観や制度を守り、その正当性を証明すること、中国の制度や価値観の世界への拡大を防ぐことである。またインド太平洋で日本やインド、オーストラリアなどとの団結を強め、中国の危険な行動を抑止する。

【チャレンジ】

現在の中国は以下の諸点で米国に戦いを挑んでいる。

(1)経済的チャレンジ

中国は2001年から世界貿易機関(WTO)に加盟したが、同機関の規則を守らず、自国の不当な市場や生産構造を改善しようとしない。習近平政権は自国産業への違法な政府補助金供与などを停止すると公約したのに止めていない。知的所有権についても米国企業の知的所有権を違法に使用することを続けている。全世界の偽造商品の63%は中国産となった。

中国は「一帯一路」構想を通じて、自国の非民主的、不透明な制度を国際的に拡大しようとしている。環境保護でも中国は国際的な合意や規則を無視している。

(2)価値観へのチャレンジ

中国共産党はマルクス・レ―ニン主義に基づく独自の政治システムを構築し、国家や政府を共産党に従属させている。このシステムは米国の自由な競争や個人の権利に基づく原則と衝突する。

中国は国際的にも中国型の独裁統治を拡大しようとしている。その統治は、競合政党の駆逐、政治活動家への不当な迫害、市民団体の抑圧、言論の検閲と弾圧などが主体となる。新疆ウイグル自治区、チベット自治区ではウイグル人やチベット人を組織的に弾圧し、さらにはキリスト教徒、仏教徒、法輪功・気功集団などの抑圧も進めてきた。

中国共産党政権のイデオロギー的画一性の追求は国内に留まらない。自国の政治思想を対外的なプロパガンダとして世界各国へ発信している。米国、オーストラリア、イギリスなどの市民団体、スポーツ組織、学術団体に影響力を行使し、外国のメディアにも圧力をかける。統一戦線工作による諸外国への干渉も目立つ。

(3)安全保障へのチャレンジ

中国政府は軍事力の行使や威嚇によって、黄海、南シナ海、東シナ海、台湾海峡、インド・中国国境などで自国の利益の拡大を図り、周辺諸国の安全保障を脅かしてきた。

習近平政権は「軍民融合」を国策としており、企業も商業的な取引を通じて中国の軍事目的に寄与させられることが多い。中国政府は「一帯一路」も軍事拡張の手段にすると言明している。

中国の軍事力は、国際的商業取引の輸送路やサプライチェーンの支配にも利用される。中国政府は軍事組織を使って他国の情報や通信の技術を盗用し、サイバー攻撃などを実施する。ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)などの大企業も人民解放軍の指令を受けて他国の安全保障システムに侵入する。

米国政府の対中新政策についての公文書は 以上のように中国側の動向を米国へのチャレンジ(挑戦)という特徴でまとめながら列記していた。その内容からは、トランプ政権が中華人民共和国という存在を完全に“敵”と認識していることが明白になる。ただし、一国の政府の公文書で、少なくともまだ戦争状態にはない国を正面から「敵」と呼ぶのは支障がある。そこで「チャレンジ(挑戦)」という言葉に替えているのであろう。

「力」で平和を守り、アメリカの影響力を拡大

では米国側はどう対応するのか。同文書はまず基本姿勢として以下のように述べる。

【アプローチ】

中国は民主主義を貶める目的で、西側の自由民主主義陣営に関する虚偽の情報を流し、米国とその同盟諸国、友好諸国との間の離反を図ろうとしている。

米国は、自由で開放された法の統治に基づく国際秩序を弱め、ゆがめようとする中国の活動を受け入れない。中国共産党の「米国は戦略的に後退し、国際安全保障の誓約も放棄しつつある」という宣伝を断固、排する。米国は、主権、自由、開放性、法の統治、公正、相互主義という価値観を共有する同盟諸国とともに、努力を続ける。

米国は中国側からの対話のための「前提条件」や「雰囲気醸成」の求めには応じない。具体的な結果と建設的な前進だけに価値を認める。中国政府は貿易と投資、表現と信仰の自由、政治の自主と自由、航行と航空の自由、サイバー攻撃や知的財産の盗用、兵器の拡散、国際公衆衛生など、多くの領域で公約を履行していない。中国との合意には、厳格な検証と執行のメカニズムが欠かせない。

米国は、中国の国民との率直な話し合いと指導者の誠実さを求めたい。そのため意思疎通のチャンネルは保ち続けるが、中国との折衝は国益に基づく選別的な関与となる。

【実行】

米国政府は中国に対して、「力に基づく平和」の原則により、自由で開かれた世界の実現を目指す。トランプ政権は過去3年あまりこの基本に基づく戦略を以下のように実行してきた。

(1)アメリカの国民、国土、生き方を守る

司法省は「中国構想」という方針の下、中国の経済スパイ、対世論工作、政治謀略などを取り締まってきた。ホワイトハウスや国務省はそのために米国内の中国の外交官や留学生に新たな規制を課し、中国側の自称ジャーナリストも国家工作員とみなして規制の対象とした。

大統領は、新たな行政命令によって、中国側の米国研究機関への浸透、大学への影響力行使、通信分野への介入、高度技術の盗用などを防ぐ措置をとった。とくに同盟諸国と協力して、中国側の諜報活動やサイバー攻撃への対策の強化を図った。

(2)アメリカの繁栄を守る

米国政府は、高度技術や知的所有権などを盗用する中国の不公正な経済慣行を終わらせ、米国の産業界や労働者、消費者の利益を守る。そのため、中国製品への懲罰的な関税など強硬な手段をとってきた。

米国政府は5G(第5世代移動通信システム)やAI(人工知能)の分野でも中国の不公正な挑戦を排除して、米国の優位を保つことに努力する。トランプ政権が最近、中国との間でまとめた経済合意の「第一段階」でも、中国が公正な経済慣行に則っているかに注意を払う。米国政府は日本および欧州との提携を強めて、中国の不透明な経済慣行の排除に全力をあげる。

(3)力により平和を保つ

米国は中国の軍事力増強に対して、核戦力の総合的な強化、通常戦力の増強によって抑止力を保つ。中国は世界最大規模の中距離ミサイルを保有するが、米国はその管理や削減のための交渉を呼びかける。中国はサイバー空間や宇宙でも軍備を強化して、超音速の兵器の開発も進めている。米国はそれらの分野でも中国を抑止できる能力を確保する。

中国はとくに東アジア、インド太平洋という地域で、軍事力大増強による覇権の確立を目指している。米国は日本などアジアの同盟諸国と連帯を深め、兵器供与を拡大する。

米国は台湾との非公式な関係をさらに増強する。中国の台湾有事を念頭に置いた軍事大増強に対して、米国は台湾の自己防衛態勢の構築に支援を続ける。2019年に米国は台湾に合計100億ドルを超える兵器を売却した。

(4)アメリカの影響力を拡大する

中国は専制的統治、言論抑圧、汚職、略奪的な経済慣行、民族や宗教の多様性への抑圧を続けているが、米国は国際的な呼びかけを通じてそれらに歯止めをかける。米国の価値観に基づく影響力の拡大を図る。

トランプ政権は、ウイグル人、チベット人、仏教徒、キリスト教徒、気功集団の法輪功信徒らの基本的な人権を守るために支援する。2019年2月には米国務省が初めて「国際宗教自由連盟」の集会を開き、全世界から25の国や地域、民族の代表が集まった。

米国は第2次世界大戦終結以来の国際秩序の堅持を目指し、その秩序の侵食を図る中国の動向に反対してきた。とくに香港の住民の自由は重要である。トランプ大統領、ペンス副大統領ら政権の高官は、中国政府に対して国際公約である香港の一国二制度を保つことを要求してきた。

【結論】

米国政府の現在の中国へのアプローチは、世界最大の人口を擁し世界第2位の経済大国であることへの理解や対応を踏まえた結果を反映している。

米国は中国との長期にわたる戦略的な競合を意識して、原則に基づきながら現実主義に立脚し、米国の利益を守り、影響力を広めることに努めていく。

問われる日本の立ち位置

以上が、トランプ政権の対中政策をまとめた公文書の要点である。この記述から明確になるのは、「中国の現在のあり方を認めない」とする米国の断固たる姿勢だろう。

日本の経済安全保障

情報通信分野の技術革新が進み、企業の活動が国家の安全保障に密接に関わるようになった。アメリカの戦略が明確となり、日本政府の戦略的な取り組みが欠かせない状況だ。

政府は来月、首相を議長とする国家安全保障会議(NSC)の事務局である国家安全保障局に、経済担当の新部署を設けた。

人工知能(AI)やビッグデータの普及は、あらゆる産業に変革をもたらした。技術面での優位性を保つため、米中両国の覇権争いは激しさを増している。中国は、民間の技術を活用して国防力を強化する「軍民融合」を図っている。通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」などの中国企業は、次世代通信規格「5G」の整備で先行する。

これに対抗し、トランプ米政権はファーウェイなどを安保上の脅威と見なし、米企業の取引を禁じた。重要技術を輸出管理の対象とする法整備も進めている。こうした国際環境を踏まえ、日本も対応を急がねばならない。政府は通信機器の政府調達に関する指針を定め、外部流出などのリスクのある機器を排除した。

今後は、外国人投資家などによる日本企業への投資を規制する。宇宙や原子力など安全保障に関わる分野で、情報窃取を防ぐ狙いがある。適切に審査する体制を整えることが不可欠だ。大学や研究機関などの情報管理が甘いとの指摘が出ている。官民が連携し、技術流出を防ぐ仕組みを構築することが大切だ。米政府と意思疎通を図り、協調して取り組むべきである。

民間の経済活動や研究開発に過度に介入すれば、健全な競争を阻害しかねない。安全保障政策と、企業の競争力確保のバランスに留意する必要があろう。早急に解決すべき課題は多い。政府は今国会に、国産ドローンの普及を後押しするため、開発予算を支援する法案を提出した。

ドローンの国内シェアは、中国製が大半を占める。災害対策や物流など幅広い分野に普及するにつれ、不正な情報収集や重要施設への攻撃に使われる懸念が高まる。着実に法整備を図りたい。新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国からの部品調達が滞り、自動車メーカーなどは、減産に追い込まれている。

生産拠点の過度な偏りは、産業基盤を揺るがすリスクがある。サプライチェーン(部品供給網)の多様化が求められている。

日本は経済安全保障戦略をどの様に構築していくのか注視していきたい。

日本の新国際秩序創造戦略

新型コロナウイルス収束後の日本の対外的な戦略を議論する自民党「新国際秩序創造戦略本部」の初会合が4日、党本部で開かれた。本部長に岸田文雄政調会長、座長に甘利明税調会長が就任し、政府が7月にもまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」に向け提言する方針だ。

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岸田氏は会合で「党として、政治として大きな責任を果たせるよう努力をお願いしたい」と述べ、甘利氏も記者団に「先を見据えた世界の秩序に踏み込んでいく」と意気込みを語った。
一方、下村博文選対委員長や稲田朋美幹事長代行も同日、コロナ収束後の新たな社会や国家ビジョンを議論する議員連盟発足に向けた準備会合を開催。会長の下村氏は会合後、記者団に「コロナ後も『やっぱり自民党は期待できる』と思ってもらえるようなビジョンを打ち出していきたい」と述べた。党所属議員全員に参加を呼びかけ、150人規模の議連を目指す考えを示した。
両組織はテーマが重なるが、甘利氏は記者団に対し「(戦略本部は)政調の正式な機関で、戦略的な絵図を描く」と説明。「特に住み分けや連携をすることではないが、議連でいろいろと問題提起し、いいものは(戦略本部で)取り上げていくことはやぶさかではない」と語った。

急がれるデジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念。その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。

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言い換えると、“進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること”。「Digital Transformation」を直訳すると「デジタル変換」という言葉になりますが、“変換”というよりも“変革”という言葉が鍵になります。

ただし、デジタルトランスフォーメーションが及ぼすのは単なる「変革」ではなく、デジタル技術による破壊的な変革を意味する「デジタル・ディスラプション」。すなわち、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の意味

・デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること

・既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの

デジタル技術の進化に伴い、あらゆる業種においてこれまでにない新しい製品やサービス、ビジネスモデルを展開する新規参入企業が続々と登場しています。

こうした時代の潮流の中で、多くの企業では従来の権益を保つために競争力の維持・強化を図る必要に迫られています。そのために求められるのが、デジタルトランスフォーメーションを急速に進めていくこと。しかし、会社の組織改革を含めた従来のビジネス全体を大きく変えることは難しく、本格的にデジタルトランスフォーメーションに踏み出せているのは一部の先進的な企業のみというのが現状です。

そんな日本企業の現状に危機感を抱いた経済産業省が2018年9月に発表したのが、「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」です。

このレポートでは、

・既存基幹システムの老朽化に対して、デジタル市場の拡大とともに増大するデータ
・メインフレームの担い手の高齢化による世代交代の必要性
・テクノロジーの進化に伴う先端IT人材の不足

など、2025年を節目に多くの問題が企業の前に立ちはだかると警鐘を鳴らしています。

DXレポートの中で強調されているのが『2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要がある』ということ。

もしも対策を取ることができずに放置してしまった場合は、「既存システムのブラックボックス化」「膨大なデータを活用できない」といった問題から下記のようなシナリオを想定しています。

2025年までにシステム刷新を行えなかった場合に想定されるシナリオ

①市場の変化に合わせて柔軟かつ迅速にビジネスモデルを変更できず、デジタル競争の敗者になってしまう
②システムの維持管理費が高額化することで技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる
③保守運用の担い手が不足することで、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる

コロナショックのオンライン申請に見られるように、日本のデジタルトランスフォーメーションはまだまだ理想とはかけ離れている。

日本独自のミリタリーソーシャルトランスフォーメーション

それらの課題を解決させる為の新戦略が、経済安全保障という概念とデジタルトランスフォーメーションという概念が加わった「ミリタリーソーシャルトランスフォーメーション(MSX)」である。

これは、中国の「軍民融合」、アメリカの「対中戦略的アプローチ」に対応する為の、日本独自の国家戦略であり新しい概念である。

「Military Social Transformation」とは

「軍事的なアプローチ」「外交的なアプローチ」「経済的なアプローチ」「環境的アプローチ」それらを総合的に近代化させ、これから10年、50年先を見据えた長期的な国家ビジョンであり、これまでの日本の脆弱性を根本から変革し次世代型の国家と経済システムにアップグレードする新システムである。

これが、私が提言する新国際秩序における戦略的アプローチである。

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未来予測

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私たち人類が進み、選ぼうとしている方向は生活やキャリア、企業、世界に多大な影響を与えるだろう。2030年までに10のメガトレンドがどうなるか。私の予想は次の通りだ。リストは確実性の高いものから並べている。

近い将来、起こりうる10のグローバル・トレンド

人口動態
世界の人口は今よりも約10億人増え、平均寿命も延びる。2015年に73億人だった世界人口は2030年までに85億人に到達する。最も速く増加する層は高齢者だ。2030年までに、65歳以上の人口は10億人に達する見込みだ。この層の大半が経済的には中流階級であり、極度の貧困層は減り続ける。しかし中流階級が増えるにも関わらず、ピラミッドの最上段を占める新たな富裕層の割合は大きな課題であり続けるだろう。とは言え、特に気候変動などのメガトレンドは、人口増加を鈍化させるか、現在の予想とは異なる結果をもたらすだろう。

都市化
2030年、私たちの3分の2は都市に住んでいるだろう。都市化が進み、メガシティ(巨大都市)や小・中規模の主要都市がさらに誕生してくる。人が集まる多くの人気の都市で、生活費が上がる。より大きなビルが必要になり、レベルの高い管理テクノロジーも必要になる。ビッグデータやAIによって、ビルの効率化がさらに進むだろう。それから、食料がもっと必要になる。生産地から多くの人が暮らす都市へ運ぶが、アーバン・アグリカルチャー(都市農業)を迅速に増やしていくという方法もある。

透明性
世界はさらにオープンなものになり、プライベートという括りが少なくなってくるだろう。すべてのものを追跡・監視するという傾向がどこまでも行き渡ることは想像に難くない。しかも一方通行の追跡だ。すべての人やモノ、組織に蓄積される情報量は急速に拡大する。特に顧客や消費者に対して、情報を共有するプレッシャーは増していくだろう。情報分析ツールがより発達し、一部の意思決定は簡単にできるようになるだろう。例えば、二酸化炭素の排出量の少なさ、労働者の最高賃金、有害物質の少なさなどを基準に、商品を選ぶことが簡単になるだろう。しかし、こうしたツールはどれも使われる過程でプライバシーを保護することはないだろう。

気候変動
気候は急速に変わり、異常気象がどこでも発生するということが続くだろう。すべてが予想した通りに発生するかどうかはまだ不確かだが、気候が急激に、危険なほどに変わっているということは疑いようもない事実だ。大気圏の活動と経済・人間の活動のバランスを考えることが、わずか11年間にどんなことが起きるかをより正確に予測する手助けになるだろう。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の平均気温の上昇を産業革命前の水準から1.5℃に抑制するために、二酸化炭素の排出量を迅速に減らすことがどれだけ重要な意味を持つのか明確にしている。しかし、現在の各国政府のコミットメントを見ると、そう簡単なことではないだろう。理論上、各国政府は2015年に採択されたパリ協定で、平均気温の上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることに同意してはいる。しかし実際には、いま各国がコミットしているのはせいぜい3℃上昇させないというところだ。現状のままだと、2030年までには1.5℃上昇するだろうし、それに向かっているのが現実だ。

気候変動が引き起こす結末は容赦のないものだろう。人口密度の高い沿岸部の多くは、海面が上昇することで、共通の課題を抱えるだろう。自然界はさらにはるかにその豊かさを失い、多くの種の集団が壊滅的に減少し、サンゴ礁などの生態系は全滅する恐れもある。

干ばつや洪水は世界の穀倉地帯に打撃を与え、主要穀物の生産地域も変わっていく。北極圏は夏、氷がなくなるだろう。もちろん船が通れるようになるので、サプライチェーンを短縮できるという利点はあるが、ピュロスの勝利のようなもので、払う犠牲に比べて得るものが少なく、割に合わないだろう。

海面上昇や水源が変わることで、居住地を移さなければならない大規模難民が生まれ始めている。2030年までには、それ以降の数十年がどんな状態になるのかより明確になるだろう。私たちは生きている間に、主要な氷床が溶けることで多くの海岸沿いの都市が浸水するかどうか、そして、人の住めない地球に本当に近づいているのかどうかを知ることになるだろう。

資源不足
さらに積極的に資源不足問題に取り組まなければならなくなるだろう。経済成長に合わせて、金属などの主要な鉱物資源の埋蔵量を保つためにも、早急に循環型モデルに移行する必要がある。例えば、新たに採掘した資源を使用する量を減らし、リサイクルしたものや再生製品を使用すること、そもそもの直線型の経済を見直すといったことが必要だろう。

水は不足している資源だ。多くの都市が頻繁に水不足に直面するようになると考えられている。水に関するテクノロジーや、水不足問題の解決策となる脱塩技術へのさらなる投資が求められている。

クリーンテック(環境保全技術)
ゼロ炭素技術をつかった送電網や車道、ビルは予想よりも遥かに拡大しているだろう。いい知らせは、クリーンテクノロジーのコストが下がり続けているため、再生可能エネルギーは劇的に増えていることだ。2015年以降、毎年、世界の電気容量の半分以上は再生可能エネルギーでまかなわれている。2030年までには、事実上、石炭火力技術から生まれる新たな発電能力はないだろう。

電気自動車が輸送手段の大半を占めるだろう。道路を走る電気自動車の割合は、内燃エンジンの車が早々に使用されなくなると考えると、2030年までに10数%からほぼ100%近くになると予想されている。一方で、新しく販売されるほぼすべての自動車が電気自動車になるだろう。バッテリー価格の大幅な値下げや、化石燃料によって動くエンジンが法律で禁止されることで、この流れは加速するだろう。さらに、ビルや送電網、鉄道、水道システムなどを大幅に、より効率的にするデータドリブン・テクノロジーの台頭を目の当たりにすることになるだろう。

テクノロジー・シフト
IoTは勝利を収めるだろう。新しい機器はすべてコネクテッドになり、インターネットに接続される。AIが人間の知性を超えるとされる「シンギュラリティ(技術的特異点)」を支持する人たちは、2030年あたりまでには、手頃なAIが人間の知性を超えるだろうと予想している。AIと機械学習は私たちの暮らしの計画を立て、より効率的に、上手く交通を最適化し、車のルートを選べるようになるだろう。技術は私たち人間を今日よりもさらに操るようになるだろう。米国の選挙へのロシアの干渉も、古くさく映るかもしれない。AIは新しい種類の仕事を生み出すだろうが、トラックやタクシー運転手からパラリーガル、エンジニアと言った高い技術を必要とする仕事まて、ほぼすべての仕事の一部に取って代わるだろう。

国際政策
重要な物事をどう成し遂げればいいだろうか。私がとりわけ考えを巡らせているのは、世界の国々や機関が協調し、気候変動や資源不足に積極的に取り組むのかどうか、膨大な数の不平等や貧困の解決に取り掛かるのか、もしくはすべての地域や民族が自らのために立ち向かうのかどうかということだ。政策を予測するのはほぼ不可能であり、気候変動やそのほかのメガトレンドに対して世界政策がどう展開するのかを想像することは難しい。パリ協定は歴史的な幕開けだった。しかし、いくつかの国、特に米国は国際協調から離脱した。貿易戦争や関税の問題は2020年を席巻している。今日よりもさらに、ビジネスはサステナビリティを推進する大きな役割を担うだろう。

ポピュリズム
ナショナリズムや急進主義の台頭が盛んになるだろう。また、各地で民主化運動や独立運動が盛んになるだろう。民主主義対権威主義の構図はより鮮明になり、激しい競争が行われて行くだろう。

地域紛争

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フランスの哲人ジャック・アタリは世界大戦が迫っているとして、新刊『2030年ジャック・アタリの未来予測 不確実な世の中をサバイブせよ!』のなかで6つの要因を挙げ、その最も危険性が高いものとして東アジアを挙げている。

東アジアを制する者が世界を制する

「革命デュアリズム」

今始まる









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