深読み米津玄師_第1楽章_第1説A

米津K師殺人事件 第1楽章『アイネクライネ』第1節



2019年4月某日

東海道本線 車内


(哀れなるかな…)

(イカルスが幾人も来ては…)


(落っこちる…)



「次は~熱海~熱海~」


ふぅ…

降りる準備しなきゃ…

あれからもう12年…


ごめんね…






米津K師殺人事件

第1楽章『アイネクライネ』


第1節

熱海サンビーチにて




ああ…

気持ちいい…



やさしい波の音…

潮の香り…

そして、頬を撫でる海風…


12年前と何一つ変わらない…


ふぅ…

あなたも感じてる?


私にはわかるの…

あなたが私を通じて感じていることを…


今この瞬間、私が感じていること…

すべてを…


そうでしょ?



パチパチパチパチ…

「うまいもんだなァ…」


え?

わりー。ずっと後ろで聴かせてもらったんだけどさ。

いや、マジうまいってキミ。

すげー感動した。

どうも…

ありがとう…

でもさ…

なんで金髪にしてんの?

え?

キミの黒髪、すっげーキレイじゃん。

もったいねーよ。

何のこと…?

ていうか、あなた…

長い前髪で前が見えてないじゃないの。

それな(笑)

ふふ。へんなひと(笑)

ところでキミさ。

なんでこんなとこで歌ってんの?

海岸でアコギって、昭和の青春ドラマじゃあるまいし。

うん…

ここね、私の大切な場所なんだ…

12年ぶりに来たら、なんだかいろいろ思い出しちゃって…

誰かさんと打上花火見ながら抱擁したとか?

ううん…

打上花火じゃなくて…

静かな…満月の夜だった…

おっと…

そのせいで、私…

大切な人の人生、狂わせちゃったの…

満月が煌々と水面を照らしていた浅瀬で…

私とその人が抱き合ってる姿を…

みんなに見られちゃったのよね…

見られちゃマズい関係?

教師と教え子。

やるじゃん。

リアル『ぼくたちの失敗』(笑)

はーるのー♪

歌わなくていいっつーの。

翌日にはもう大騒ぎよ…

「教師と教え子による入水無理心中未遂」だって…

それが原因で私の大切な人、学校を辞めることになって…

二度と教鞭をとることも出来なくなっちゃったんだ…

罪な女だね。

そうね。

私は罪深い女だわ…

キミってさ…なんか…こう…

すっげー重たい業みたいなもんを背負ってる感じがする。

いや、背負ってるっつーか…

内包してるっつーか…

そうかも(笑)

だからさっき米津玄師の『アイネクライネ』を歌ったのかもしれないな…

その心は?

だってあの歌って…

男女の恋愛を歌っているようで実は…

自分の中の「もうひとりの自分」に語りかけている歌だもんね…

やり~!

黒髪の少女キターー!

え?

それって…

もしかして…

もしかして?

あなたが見た私の黒髪って…

ほら長い前髪で前も見えねえ~♪

(まさか、よね…。そんなわけないわ…)

アナタノ ナマエハ?

名前?

は、花笠…

苗字じゃなくてさ、下の名前。

自分だけの名前のほう。

クリ…スティ…

花笠クリスティよ…

それ奇遇。ウチもK。

K?

「ケン」とか「ケンジ」とか?

ん~

説明すんの面倒なんで「K」でよろ。

そ、そう…

よろしく。K…クン…



つづく






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?