深読み米津玄師_第1楽章_第7節A

米津K師殺人事件 第1楽章『アイネクライネ』第7節「穴とハチ」



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2019年4月某日
熱海サンビーチ



ガタガタガタガタガタガタガタ…

来てる…来てるわ…

あなたには見えて?

ああ。

心像放映で鮮やかに見えてきた!


リン、聴こえるか?


……………


リン!


……………

アタシ…



ガタガタガタガタガタガタ…

リンちゃん!


クリ…チャン…


リン!


ハチ…



………………


待って!リンちゃん!


………


ハァハァハァ…

これ以上は無理…

やっぱり…明日の満月じゃないと…

・・・・・

そういえば…最後にリンちゃん…

「ハチ」って言ってたように聞こえたけど…

何のことかしら…

俺の…

穴…

穴?

い、いや…たぶんさ…

アナ…トリアの…

「Hatti」のことじゃね?

アナトリアの「Hatti」?





ホテル ロビー



ねえねえ…

傘、借りてったほうがいいわよね。

そうだね。

天気予報では、急な雷雨に注意って言ってたから…

すいませ~ん!

傘、お借りしてもいいですか~?

どうぞどうぞ…

ありがとうございます。

いたわりと友愛じゃ。

あの~

今から散歩に行くんですけど…

有名な「金色夜叉の像」って、どこにあるんですか?

金色!

あの…

金色夜叉の像は…

おぬし…

もしや…宮さんの…

そう。貫一お宮の像を見に行きたいんですけど…

あな恐ろしや…

あな恐ろしや…

ブツブツブツブツ…

とりあえず行こうよ。

歩いてるうちにわかるでしょ。観光客がたくさんいるだろうから。

そうね…

傘、どうもありがとうございます…

宮さんじゃ…宮さんの祟りじゃ…

ブツブツブツブツ…



ホテルの外 路上



変なおばあちゃんだったね…

しかも、あのホテルの従業員ってさ…

なんであんな格好してるんだろ?

オーナーの趣味なんじゃない?

まあ、どうでもいいんだけどさ…

ふぅ…

部屋の窓からは海がすぐ近くみたいに見えたけど、歩くと結構ありそうね…

ちょうどいい運動になるよ。

ところでさっきの「ハチ」なんだけど…

なんで米津玄師はそんな名前を「もうひとりの自分」に付けたのかな?

いろんな意味があるらしいよ。

そのうちの1つが、漫画『NANA』のキャラクターなんだってさ。

ほら、主人公である二人のナナのうちのひとり小松奈々の渾名が「ハチ」だったでしょ?

人懐っこいけど世話の焼ける犬みたいだからって…

ふーん…

二人のナナか…

これも「表裏一体」に繋がるわね…

それと「玄師(けんし)」が「犬歯(けんし)」だから「ハチ公」になったとか…

「米津」の「米」が「八十八」だからとか…

まあとにかく、いろんな理由が混在してるらしい。

本人も「これです」と明言してないから、真相はよくわからないんだ。

ふ~ん…

まだ何か隠されてそうね…

僕もそう思う。

米津玄師って人は、一筋縄ではいかない感じだもんね。

ところでウルトラマンAとヤプール人なんだけどさ…

ほんとに『アイネクライネ』と関係があるの?

じゃあ話そうか。

『アイネクライネ』の、もうひとつの秘密を…





熱海サンビーチ



アナトリアの「Hatti」?

トルコがあるアナトリア半島に最古の文明を築いていたハッティ人のこと?


そ、そうだけど…

なんでそんなこと知ってんの?

私、”小アジア” オタクなの!

小アジア…おたく?

まさかKクンが「Hatti」を知ってるなんて!

「Hatti」で盛り上がれる人なんて私の他には誰もいないと思ってた!

すごい嬉しい!

いや…俺は別に…

ねえねえ!

Kクンは「Hatti」のどこ推し?

どこ…?

どこっていうか…

やっぱり最初は『風の谷のナウシカ』から入ったんでしょ?

実は私も同じなの!

ちょ…

「風の谷の民」って、絶対に「Hatti」のことだもんね!

そして強大な軍事力をもつ「トルメキア」は…

鉄製武器や鉄馬車を駆使して「Hatti」を滅ぼし、アナトリアに君臨した「ヒッタイト」!


ちょ…待って…

お前…

私ね、小さい頃に、最初に弾けるようになった曲がコレなの!

♪ ランラン ランララ ランランラン…

やっぱいいわコレ。

心が落ち着くっつーか、浄化されるっつーか…

母さんの子守歌みたいな…

たぶんKクンも知ってると思うけど…

ナウシカの舞台とアナトリアは、バッチリ一致するのよね!

オット キタカ…

最初この地図 見て驚いちゃった…

北と南が逆さまだったのね…

このアイデアすごいわ…

この設定を考えた人…

本当に小アジアの歴史をよく知ってる…

 感動しちゃった。

こいつはな…

原作漫画で肝となる設定なんだが…

危なくて使えねえってんで…

映画ではボツにされたのさ…

やっぱり…

こんな過激なセッティングでよく出版できたわよね…

それだけじゃねえ…

「風の谷」がある場所は、トルコ南東部の海沿いの地域にあたる…

かつて「キリキア」と呼ばれた場所だ…

ゴクリ…

キリキア…来た…

ローマ帝国…キリキア属州…

そして…

キリキアの州都タルソスで…

後の歴史に大きな影響を与えることになる、ひとりの男が生まれた…

その男の名は…

サウロ!

サウロは、当時破竹の勢いで広まっていたムーヴメントに対し…

アンビリーバーの立場をとり、ビリーバーズ迫害に加担…

だが、ダマスコへ向かう旅の途中…

サウロは突然、まばゆい「光」に包まれ、馬上から転げ落ちた…

そして不思議な声を聞く…

サウロ、サウロ、なぜ、わたしを迫害するのか…

サウロは、眩い光で視力を失ってしまう…

そしてサウロの目から「鱗(ウロコ)」のようなものが落ち…

迫害者サウロは回心する…

これが『使徒言行録(使徒行伝)』における「サウロの回心」…

つまり伝道者パウロの誕生物語…

そして…

この「目から鱗のようなものを落す」というモチーフが…

『風の谷のナウシカ』でも使われた…

それが…

王蟲の目からウロコ状の殻を切り落としたナウシカ!



へへへ…

あはは…

やっぱ俺たち、似たもん同士だな。

能力も趣味嗜好も、お互いアンナチュラルだ。

うん…

こんなに誰かとわかりあえたのって初めて…

私…あなたに会えて本当に嬉しい…

お?

どうしたの?

なんか今、遠くの方で雷の音が聞こえたような気がした。

ひと雨くるかもしれねえな…



つづく




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