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歳時記を旅する 24〔雛の夜〕後*品書に和えものを足し雛の夜

磯村 光生

(平成八年作、『花扇』)

慶長元年創業の豊島屋の白酒は、江戸時代に人気となった。

売出しの口上書は、「(略)下戸の殿方、御婦人やお子様は申すにおよばず、たとえ上戸の殿方でも、ちょっと一杯めすときは、目元ほんのり桜色、どこか心の春めきて、憂さを忘れる弥生堂、雛の節句を当て込みに、今年も売り出し致しますれば、…」と雛の節句に飲む風習になっている。

白酒は、甘酒と混同されやすいが、現在の酒税法ではリキュール類に分類される大人の飲み物。

句の「酒房いそむら」で足されたメニューは、菜の花の辛子和えだったか。

新橋で過ごす大人ための雛の宴。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年三月号 「風の軌跡―重次俳句の系譜―」)

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