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歳時記を旅する52〔夕立〕前*狛犬の口濡れのこし初夕立

土生 重次
(昭和五十七年作、『扉』)
墨田区向島の三囲(みめぐり)神社の雨乞の話。元禄六年は大変な干ばつで、秋の収穫を心配して困りきった小梅村の人々は三囲神社に集まり、鉦や太鼓を打ち雨乞いをしていた。ちょうど三囲神社に詣でた俳人其角が、このありさまをみて、「夕立や田を見めくりの神ならは」と詠み、翌日に雨が降ったと伝えられている。(榎本其角『五元集』)
其角の句は、能因法師が伊予国一之宮大山祇神社での雨乞いの和歌「天の川苗代水にせきくだせ あま下ります神ならば神」(『金葉和歌集』)が下地となっている。この時は伊予の国中に三日三晩雨が降り続いたという。
 狛犬は魔物から神社を守るためのもの。句は、狛犬の口の中までは濡らさずにおいた、初めての夕立の優しさ。

☆三囲神社について、湍廼舎 さんが説明されていますのでご紹介します。


(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年七月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)





 






   


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