緒方 壽人 (Takram)

デザインエンジニア/東京大学、IAMAS、LEADING EDGE DESIGNを経て…

緒方 壽人 (Takram)

デザインエンジニア/東京大学、IAMAS、LEADING EDGE DESIGNを経てTakramに参加。デザイン、エンジニアリング、アート、サイエンスまで幅広く領域横断的な活動を行う。『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売中 → https://convivial.tech

マガジン

  • わかるとつくる

    「わかる」ってなんだろう。なぜ人は「つくる」んだろう。理解と創造性について考えます。

  • コンヴィヴィアル・テクノロジー

    単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、いかにして再び「ちょうどいい道具」になれるのか——人間と自然とテクノロジーについて書いた本です。このnoteで取り上げてきた話題にも触れています。よろしくお願いします。

  • Mark@ Design Engineering

    • 19本

    Takramではさまざまな専門領域のエッジを探究する独自のリサーチプロジェクト「Mark@」を行っています。このマガジンでは、Mark@Design Engineeringに参加しているTakramメンバーが、それぞれのnoteアカウントでデザインエンジニアリング領域に関連する記事を発信していく予定です。

記事一覧

ラスト・プロトコル

先週大騒ぎだったOpenAI内部の意見の対立には、AIのリスクに対する考え方の相違があったとも言われている。すでにOpenAIの内部ではAGI(汎用人工知能)が実現されていてそ…

50

いいデザインとは?

一昨日、開催中の世界デザイン会議の関連イベント「人新世のデザイン Exhibition&Talk」で、デザイン評論家/編集者の藤崎圭一郎さん、デザインジャーナリストの土田貴宏…

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能動的推論とAI

拙著『コンヴィヴィアル・テクノロジー』や、このnote、寄稿した記事やトークイベントなどでも度々紹介している「予測する脳」の話。この数年、注目を集めつつあるようで、…

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数学で表す、数学で解く

子どもたちが二人とも中学生になり、娘は受験生なので、最近なるべく毎日少しでも勉強を見ることにしている。気分を盛り上げるためにダイニングの内窓にはまるホワイトボー…

117

ChatGPTで独自データを扱うためのエンべディング

【2023/11/7追記】 OpenAI Dev Dayにて、開発者向けの大型アップデートが発表されました。この記事で紹介している手法は、Retrieval-Augmented Generation(RAG)と呼ばれて…

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ChatGPTプロンプトエンジニアリングとUI/UXデザイン

ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、今後あらゆる場面で活用されていくことは間違いありません。そして、このパラダイムシフトは、コーディングだけでなくUIやUXのデ…

人間とAIについてのAIとの対話

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を活用したAIが話題である。大規模言語モデルは数十億、数百億単位のパラメータ数をもつと言われるが、そもそもパラメータ数と…

どうやってつくるのか?

去年の今頃、新型コロナウイルスについての記事を書いてから1年、日本でもワクチン接種が進んでいる。今回は、世界的なパンデミックで初めて大規模に実戦投入されているmRN…

次の世代と共に生きる

拙著『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売から数週間、少しずつ読んでいただいた方からの反響を頂いています。ありがとうございます。本格的に本の執筆に入ってからお休…

ちょうどいい道具

【追記】初めての単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、い…

人間と自然(後編)

今年のはじめに、人新世や気候変動を巡る前編を書いてから、思いもよらない形で世界は大きく変わり、ずいぶん間が空いてしまった。このパンデミック自体が気候変動を遠因と…

Mark@Design Engineering Magazineをはじめます

Takramでは、さまざまな専門領域のエッジを探究する独自のリサーチプロジェクト「Mark@」を行っています。Takramでは一つの領域に留まらない「越境」を大事にしていると同…

何が違うのか

新型コロナウイルスについては相変わらずわからないことも多いが、世界中で研究も進み、少しずついろいろなことがわかってきているようでもある。前回まではあくまで感染者…

増えているか減っているか

一旦収束に向かったかに思えた日本国内の感染状況だが、連日報道されているように再び感染が「第2波」として拡大しつつある。4月はじめ、指数関数的に拡大するウイルス感染…

倍になるのはいつか

3/30の443名から4/4には891名へ。891/443=約2.01。 つまり東京は今(2020/4/4)、5日間で2倍のペースで累計感染者数が増加している。 【2020/4/17追記】4/17現在、東京は10日…

目覚めるために眠る

人は眠らなければ生きていけない。 先日お会いした医師の稲葉俊郎さんの著書『いのちを呼び覚ますもの』は、「なぜ人は眠らないといけないの?」という子どもの頃から抱い…

ラスト・プロトコル

ラスト・プロトコル

先週大騒ぎだったOpenAI内部の意見の対立には、AIのリスクに対する考え方の相違があったとも言われている。すでにOpenAIの内部ではAGI(汎用人工知能)が実現されていてその扱いを巡る対立が原因だといったまことしやかな噂も目にするが、実はそもそもAGIに明確な定義が定まっているわけではない。では、AGIのリスクとは具体的にはどんなものなのだろうか?

AGIのリスクとは?まずこの記事によれば、

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いいデザインとは?

いいデザインとは?

一昨日、開催中の世界デザイン会議の関連イベント「人新世のデザイン Exhibition&Talk」で、デザイン評論家/編集者の藤崎圭一郎さん、デザインジャーナリストの土田貴宏さんと議論した。この企画は連続トークイベントで、わたし以外のセッションもとても有意義な議論があり、いろいろ考えさせられたので(今後自分の考えも変わるかもしれないが)記憶が鮮明なうちに振り返っておきたいと思う。

オルタナティ

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能動的推論とAI

能動的推論とAI

拙著『コンヴィヴィアル・テクノロジー』や、このnote、寄稿した記事やトークイベントなどでも度々紹介している「予測する脳」の話。この数年、注目を集めつつあるようで、昨年はこの原理を提唱したカール・フリストンが著者に名を連ねる本が日本語訳もされた。

なかなか難解でじっくり読む時間も取れないままだったが、ようやく読み始めてみることにしたので今回はその一部を紹介してみたい。

心、脳、行動の統一原理ま

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数学で表す、数学で解く

数学で表す、数学で解く

子どもたちが二人とも中学生になり、娘は受験生なので、最近なるべく毎日少しでも勉強を見ることにしている。気分を盛り上げるためにダイニングの内窓にはまるホワイトボードをDIYしたりして。

今日は中3の娘に数学を教えながら考えたこと、話したことを忘れないように書きとめておこうと思う。

数学で表す、数学で解く数学には「数学で表す」と「数学で解く」があって、それぞれ頭を切り替えた方がいいと思う、という話

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ChatGPTで独自データを扱うためのエンべディング

ChatGPTで独自データを扱うためのエンべディング

【2023/11/7追記】
OpenAI Dev Dayにて、開発者向けの大型アップデートが発表されました。この記事で紹介している手法は、Retrieval-Augmented Generation(RAG)と呼ばれてきましたが、今回のアップデートでコンテクスト長(やりとりできるテキストの長さの上限)がこれまでの8Kから128K(12万8千トークン)に大幅にアップするため、一般的な本の内容は1冊分

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ChatGPTプロンプトエンジニアリングとUI/UXデザイン

ChatGPTプロンプトエンジニアリングとUI/UXデザイン

ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、今後あらゆる場面で活用されていくことは間違いありません。そして、このパラダイムシフトは、コーディングだけでなくUIやUXのデザインにも大きく影響することになると思います。
今のところ、OpenAIが提供している「素のChatGPT」は、言ってみれば「膨大な量の学習をした人が何もググったり調べたりせずに記憶だけで応えてくれている状態」ですが、Bin

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人間とAIについてのAIとの対話

人間とAIについてのAIとの対話

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を活用したAIが話題である。大規模言語モデルは数十億、数百億単位のパラメータ数をもつと言われるが、そもそもパラメータ数とは何のことだろう。脳の神経細胞の構造を模したニューラルネットワークにおいてのパラメータ数は、脳でいえばニューロンの数やニューロン同士をつなぐシナプスの数ということになるだろうか。

この記事によれば、はっきりとはわかっていない

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どうやってつくるのか?

どうやってつくるのか?

去年の今頃、新型コロナウイルスについての記事を書いてから1年、日本でもワクチン接種が進んでいる。今回は、世界的なパンデミックで初めて大規模に実戦投入されているmRNAワクチンについて、自分で書いた本の中で「なるべくテクノロジーをブラックボックスにしない」と言っているので、自分ごととして調べてみた記録である。特に、このnoteのテーマは「わかるとつくる」なので、mRNAワクチンの仕組みだけでなく、物

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次の世代と共に生きる

次の世代と共に生きる

拙著『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売から数週間、少しずつ読んでいただいた方からの反響を頂いています。ありがとうございます。本格的に本の執筆に入ってからお休みしていたnoteも、この本に関連した話題や書ききれなかったこと、本の中で取り上げた書籍、本を取り上げて頂いた書評記事などを紹介していければと思っています。

今回は、ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之さんがSankeiBizに連載され

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ちょうどいい道具

ちょうどいい道具

【追記】初めての単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、いかにして再び「ちょうどいい道具」になれるのか——まさしくこの記事がイントロダクションになっているような、人間と自然とテクノロジーについて書いた本です。よろしくお願いします!

ウェブサイトも公開されました。扉絵になっているCGムービー

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人間と自然(後編)

人間と自然(後編)

今年のはじめに、人新世や気候変動を巡る前編を書いてから、思いもよらない形で世界は大きく変わり、ずいぶん間が空いてしまった。このパンデミック自体が気候変動を遠因とするものだとも言われたり、これこそまさに「人類が地球に影響を及ぼすだけでなく、その地球が人類に影響を及ぼし始めている」人新世を象徴するものだと言われることもある。一方で、世界中で行われている行動制限によって人々の移動や経済活動は停滞し、結果

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Mark@Design Engineering Magazineをはじめます

Mark@Design Engineering Magazineをはじめます

Takramでは、さまざまな専門領域のエッジを探究する独自のリサーチプロジェクト「Mark@」を行っています。Takramでは一つの領域に留まらない「越境」を大事にしていると同時に、メンバーが持っているそれぞれの専門領域を深めていくことも大事にしています。変化し続ける不確実な世界の中で、自らの専門領域の先端のエッジを常にマークし、そこに旗を立てて領域を牽引していけるような存在でありたいという思いか

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何が違うのか

何が違うのか

新型コロナウイルスについては相変わらずわからないことも多いが、世界中で研究も進み、少しずついろいろなことがわかってきているようでもある。前回まではあくまで感染者数という数字について考えてきたが、今回は、新型コロナウイルスのメカニズムについて、今までのウイルスと「何が違うのか」、今把握できていることを自分なりに整理してみたい。(但し、この分野の専門家ではないことはあらかじめ留意頂きたい。)

免疫の

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増えているか減っているか

増えているか減っているか

一旦収束に向かったかに思えた日本国内の感染状況だが、連日報道されているように再び感染が「第2波」として拡大しつつある。4月はじめ、指数関数的に拡大するウイルス感染を「倍になるのはいつか」という見方で把握することについて書いたが、第2波についてはそれだけでは状況を正しく把握することはできなそうである。状況はよくなっているのか悪くなっているのか?感染は拡大しているのか収束しているのか?今回は第2波を前

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倍になるのはいつか

倍になるのはいつか

3/30の443名から4/4には891名へ。891/443=約2.01。
つまり東京は今(2020/4/4)、5日間で2倍のペースで累計感染者数が増加している。
【2020/4/17追記】4/17現在、東京は10日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記。
【2020/5/17追記】5/17現在、東京は218日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記

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目覚めるために眠る

目覚めるために眠る

人は眠らなければ生きていけない。

先日お会いした医師の稲葉俊郎さんの著書『いのちを呼び覚ますもの』は、「なぜ人は眠らないといけないの?」という子どもの頃から抱いていた疑問が出発点になっているという。

寝る時、人は意識を失っている。周りがどういう状態なのか何も覚えていない。生物学的には極めて無防備で危険な状態だともいえる。(中略)なぜこうしたリスクの高い状態が、毎日周期的に訪れる必要があるのだろ

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