わかるとつくる

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ノート

世界を閉じる枠

「予測する脳」で取り上げた「予測的符号化理論(Predictive Coding Theory)」によれば、わたしたちは外の世界から情報を受け取っているようでいて、実は多くの時間、脳が予測した世界を生きている。そして、予測と現実に齟齬が起きた時にはじめて人は考える(予測モデルを修正する)のだという。

たしかに、目の前の状況に対して四六時中ありとあらゆる可能性を考えていたら無限の時間がかかって身動

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自立と依存

自立とは依存先を増やすことである。

脳性マヒの障害を持ちながら医師としても活躍され、現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授として「当事者研究」などの分野でも注目されている熊谷晋一郎さんの言葉である。

一般的に「自立(independent)」とは「依存(dependent)」の反対語であり、自立することは、誰にも依存することなくスタンドアローンになることだと思われがちだが、決してそうでは

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寛容と不寛容

寛容は不寛容に対して不寛容になるべきか。

自分と異なる多様な価値感を認め、ひとりひとりの違いを包み込む「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉をよく目にするようになった。これからの社会でますます重要になる考え方である。金子みすゞの言葉を借りれば「みんな違って、みんないい」。しかし他者に対して「寛容」であることは実は言うほど簡単なことではない。まず、寛容は無関心とは違う。寛容であるためには

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つかうとつくる〜セルフビルドとファブシティ

今年夏の1ヶ月を家族で過ごしたのは、AirBnBで見つけたサウスロンドンのWalters Wayという小さな通りに建つ一軒家だった。実はあとから知ったことだが、この家を含む近隣の家々は、1970年代から80年代にかけて、建築家ウォルター・シーガルの構想と監修のもと「シーガル・メソッド」と呼ばれる工法で施主たち自らの手によって建てられた「セルフビルド建築」の先駆けとして知られる建築だったのだ。もちろ

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非日常を日常にする。日常を非日常にする。

今年の夏は家族を連れて1ヶ月間ロンドンで過ごしていた。小学生の娘と息子にとっては人生初めての海外旅行でもある。AirBnBでサウスロンドンの一軒家を借り、大英博物館やタワーブリッジといった観光名所巡りだけでなく、子どもたちと近くの大きな公園に通ったり、ロンドンでしかできない自由研究を一緒に考えてみたり、足を伸ばして郊外の小さな街へ小旅行をしたり、またTakram Londonへ毎日出勤する週もあっ

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わかるには大きすぎる(TOO BIG TO KNOW)

Eテレの子ども向け科学教育番組「ミミクリーズ」で番組づくりをご一緒している生物学者の福岡伸一さんによれば、世の中には、まず地図を広げてから動くマップラバー(地図好き)と、自分の前後左右を見て動くマップヘイター(地図嫌い)がいるという。地図で全体を俯瞰するマップラバーは堅実で無駄がないが、動き出すのに時間がかかり、地図がないと身動きが取れない。一方、地図がなくても勘と嗅覚で動き出すマップヘイターはい

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マイノリティと選挙

選挙とは多数決である。民主主義では多数決の原理に従って様々な決断が下される。一方で、少数派の意見も尊重すべきであるとも言われる。多数決の原理と少数意見の尊重、一見矛盾するように思えるこの民主主義の2つの原則は両立しうるのだろうか。「マイノリティ(少数派)」とはどんな存在でそれを「尊重する」とはどうすることなのだろう。

常に説明を求められる「マイノリティ」

そもそも「マイノリティ(少数派)」とは

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正しさはどこにあるか

選挙とは、意見や考えが異なる人たちがそれぞれ自分の「正しさ」を主張する場である。当然そこにはお互いに相容れない「正しさ」が並んで存在することになる。ある党はAが正しいといい、またある党はBが正しいと言い、お互いに決して譲らない。そんな状況で急に選挙が始まってそれぞれの公約や政策だけを聞いていても、どちらが正しいのか、どちらを信じればいいのかわからず、思考停止してしまう人も多いのではないだろうか。

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ワカンナイ(Can’t Grasp It)

『情報環世界』の執筆中、家に帰ってもわかるだのわからないだのと話をしていたら、妻が「そういえば陽水さんの歌にそんな歌あったよね」と呟いた。確かに「ワカンナイ」という曲がある。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に対する井上陽水さんらしいアンサーソングである。調べてみるとこの曲にまつわるエピソードが沢木耕太郎さんのエッセイに綴られているというので気になって読んでみた。

「あの‥‥雨ニモマケズ、風ニモマケズ‥

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わからないものをつくる

What I Cannot Create, I Do Not Understand.
つくれないものは、わかったとはいえない。

『情報環世界』を通して「わかるとつくる」を巡る思索の旅を続けていく中で出会った、物理学者ファインマンの最期のメッセージ。果たしてファインマンはこのメッセージで何を言おうとしているのだろうか?いや、そもそもファインマンの言ったことは本当に正しいのだろうか?

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