マガジンのカバー画像

わかるとつくる

28
「わかる」ってなんだろう。なぜ人は「つくる」んだろう。理解と創造性について考えます。
運営しているクリエイター

記事一覧

どうやってつくるのか?

どうやってつくるのか?

去年の今頃、新型コロナウイルスについての記事を書いてから1年、日本でもワクチン接種が進んでいる。今回は、世界的なパンデミックで初めて大規模に実戦投入されているmRNAワクチンについて、自分で書いた本の中で「なるべくテクノロジーをブラックボックスにしない」と言っているので、自分ごととして調べてみた記録である。特に、このnoteのテーマは「わかるとつくる」なので、mRNAワクチンの仕組みだけでなく、物

もっとみる
ちょうどいい道具

ちょうどいい道具

【追記】初めての単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、いかにして再び「ちょうどいい道具」になれるのか——まさしくこの記事がイントロダクションになっているような、人間と自然とテクノロジーについて書いた本です。よろしくお願いします!

ウェブサイトも公開されました。扉絵になっているCGムービー

もっとみる
人間と自然(後編)

人間と自然(後編)

今年のはじめに、人新世や気候変動を巡る前編を書いてから、思いもよらない形で世界は大きく変わり、ずいぶん間が空いてしまった。このパンデミック自体が気候変動を遠因とするものだとも言われたり、これこそまさに「人類が地球に影響を及ぼすだけでなく、その地球が人類に影響を及ぼし始めている」人新世を象徴するものだと言われることもある。一方で、世界中で行われている行動制限によって人々の移動や経済活動は停滞し、結果

もっとみる
何が違うのか

何が違うのか

新型コロナウイルスについては相変わらずわからないことも多いが、世界中で研究も進み、少しずついろいろなことがわかってきているようでもある。前回まではあくまで感染者数という数字について考えてきたが、今回は、新型コロナウイルスのメカニズムについて、今までのウイルスと「何が違うのか」、今把握できていることを自分なりに整理してみたい。(但し、この分野の専門家ではないことはあらかじめ留意頂きたい。)

免疫の

もっとみる
倍になるのはいつか

倍になるのはいつか

3/30の443名から4/4には891名へ。891/443=約2.01。
つまり東京は今(2020/4/4)、5日間で2倍のペースで累計感染者数が増加している。
【2020/4/17追記】4/17現在、東京は10日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記。
【2020/5/17追記】5/17現在、東京は218日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記

もっとみる
増えているか減っているか

増えているか減っているか

一旦収束に向かったかに思えた日本国内の感染状況だが、連日報道されているように再び感染が「第2波」として拡大しつつある。4月はじめ、指数関数的に拡大するウイルス感染を「倍になるのはいつか」という見方で把握することについて書いたが、第2波についてはそれだけでは状況を正しく把握することはできなそうである。状況はよくなっているのか悪くなっているのか?感染は拡大しているのか収束しているのか?今回は第2波を前

もっとみる
目覚めるために眠る

目覚めるために眠る

人は眠らなければ生きていけない。

先日お会いした医師の稲葉俊郎さんの著書『いのちを呼び覚ますもの』は、「なぜ人は眠らないといけないの?」という子どもの頃から抱いていた疑問が出発点になっているという。

寝る時、人は意識を失っている。周りがどういう状態なのか何も覚えていない。生物学的には極めて無防備で危険な状態だともいえる。(中略)なぜこうしたリスクの高い状態が、毎日周期的に訪れる必要があるのだろ

もっとみる
冷静に右往左往する

冷静に右往左往する

「正しく怖がる」って誤解生む言葉だなと思う。

元ネタはおそらく寺田寅彦の随筆「小爆発二件」で、震災直後にすでに出版されていた数少ない放射能リスクに関する本『人は放射能になぜ弱いか』の冒頭で引用されていてよく知られるようになったのだと思われる。

正当にこわがることはなかなかむつかしい
この一節が出てくるのは、浅間山の噴火を偶然ふもとで目撃した寺田寅彦が、駅で山から降りてきた学生と駅員の会話を聞い

もっとみる
人間と自然(前編)

人間と自然(前編)

地球が燃えている。

火の歴史に詳しい環境史家のステファン・パインは、2015年にデジタルマガジンAeonで、今わたしたちは地球の歴史上、人の時代を意味する「Anthropocene(人新世/アントロポセン)」ならぬ、火の時代「Pyrocene(火新世/パイロセン)」を生きているのではないかと指摘した。パインは昨年夏のアマゾンやカリフォルニアの森林火災の際、「Prepare for the Pyr

もっとみる
世界を閉じる枠

世界を閉じる枠

「予測する脳」で取り上げた「予測的符号化理論(Predictive Coding Theory)」によれば、わたしたちは外の世界から情報を受け取っているようでいて、実は多くの時間、脳が予測した世界を生きている。そして、予測と現実に齟齬が起きた時にはじめて人は考える(予測モデルを修正する)のだという。

たしかに、目の前の状況に対して四六時中ありとあらゆる可能性を考えていたら無限の時間がかかって身動

もっとみる
自立と依存

自立と依存

自立とは依存先を増やすことである。

脳性マヒの障害を持ちながら医師としても活躍され、現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授として「当事者研究」などの分野でも注目されている熊谷晋一郎さんの言葉である。

一般的に「自立(independent)」とは「依存(dependent)」の反対語であり、自立することは、誰にも依存することなくスタンドアローンになることだと思われがちだが、決してそうでは

もっとみる
寛容と不寛容

寛容と不寛容

寛容は不寛容に対して不寛容になるべきか。

自分と異なる多様な価値感を認め、ひとりひとりの違いを包み込む「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉をよく目にするようになった。これからの社会でますます重要になる考え方である。金子みすゞの言葉を借りれば「みんな違って、みんないい」。しかし他者に対して「寛容」であることは実は言うほど簡単なことではない。まず、寛容は無関心とは違う。寛容であるためには

もっとみる
つかうとつくる〜セルフビルドとファブシティ

つかうとつくる〜セルフビルドとファブシティ

今年夏の1ヶ月を家族で過ごしたのは、AirBnBで見つけたサウスロンドンのWalters Wayという小さな通りに建つ一軒家だった。実はあとから知ったことだが、この家を含む近隣の家々は、1970年代から80年代にかけて、建築家ウォルター・シーガルの構想と監修のもと「シーガル・メソッド」と呼ばれる工法で施主たち自らの手によって建てられた「セルフビルド建築」の先駆けとして知られる建築だったのだ。もちろ

もっとみる
非日常を日常にする。日常を非日常にする。

非日常を日常にする。日常を非日常にする。

今年の夏は家族を連れて1ヶ月間ロンドンで過ごしていた。小学生の娘と息子にとっては人生初めての海外旅行でもある。AirBnBでサウスロンドンの一軒家を借り、大英博物館やタワーブリッジといった観光名所巡りだけでなく、子どもたちと近くの大きな公園に通ったり、ロンドンでしかできない自由研究を一緒に考えてみたり、足を伸ばして郊外の小さな街へ小旅行をしたり、またTakram Londonへ毎日出勤する週もあっ

もっとみる