緒方 壽人 (Takram)

デザインエンジニア/東京大学、IAMAS、LEADING EDGE DESIGNを経てTakramに参加。デザイン、エンジニアリング、アート、サイエンスまで幅広く領域横断的な活動を行う。『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売中 → https://convivial.tech

緒方 壽人 (Takram)

デザインエンジニア/東京大学、IAMAS、LEADING EDGE DESIGNを経てTakramに参加。デザイン、エンジニアリング、アート、サイエンスまで幅広く領域横断的な活動を行う。『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売中 → https://convivial.tech

    マガジン

    • Mark@ Design Engineering

      • 17本

      Takramではさまざまな専門領域のエッジを探究する独自のリサーチプロジェクト「Mark@」を行っています。このマガジンでは、Mark@Design Engineeringに参加しているTakramメンバーが、それぞれのnoteアカウントでデザインエンジニアリング領域に関連する記事を発信していく予定です。

    • わかるとつくる

      「わかる」ってなんだろう。なぜ人は「つくる」んだろう。理解と創造性について考えます。

    • コンヴィヴィアル・テクノロジー

      単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、いかにして再び「ちょうどいい道具」になれるのか——人間と自然とテクノロジーについて書いた本です。このnoteで取り上げてきた話題にも触れています。よろしくお願いします。

    最近の記事

    どうやってつくるのか?

    去年の今頃、新型コロナウイルスについての記事を書いてから1年、日本でもワクチン接種が進んでいる。今回は、世界的なパンデミックで初めて大規模に実戦投入されているmRNAワクチンについて、自分で書いた本の中で「なるべくテクノロジーをブラックボックスにしない」と言っているので、自分ごととして調べてみた記録である。特に、このnoteのテーマは「わかるとつくる」なので、mRNAワクチンの仕組みだけでなく、物理的にはどんなもので、どんな風に製造されているのかという「つくる」プロセスについ

      • 次の世代と共に生きる

        拙著『コンヴィヴィアル・テクノロジー』発売から数週間、少しずつ読んでいただいた方からの反響を頂いています。ありがとうございます。本格的に本の執筆に入ってからお休みしていたnoteも、この本に関連した話題や書ききれなかったこと、本の中で取り上げた書籍、本を取り上げて頂いた書評記事などを紹介していければと思っています。 今回は、ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之さんがSankeiBizに連載されている「ローカリゼーションマップ」に、本のことを取り上げて頂いたので紹介します。

        • ちょうどいい道具

          【追記】初めての単著『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』がBNNから5月21日に発売されました。行き過ぎた現代のテクノロジーは、いかにして再び「ちょうどいい道具」になれるのか——まさしくこの記事がイントロダクションになっているような、人間と自然とテクノロジーについて書いた本です。よろしくお願いします! ウェブサイトも公開されました。扉絵になっているCGムービーや、本の内容の一部も公開しています。是非ご覧ください。 昨年から準備している本

          • 人間と自然(後編)

            今年のはじめに、人新世や気候変動を巡る前編を書いてから、思いもよらない形で世界は大きく変わり、ずいぶん間が空いてしまった。このパンデミック自体が気候変動を遠因とするものだとも言われたり、これこそまさに「人類が地球に影響を及ぼすだけでなく、その地球が人類に影響を及ぼし始めている」人新世を象徴するものだと言われることもある。一方で、世界中で行われている行動制限によって人々の移動や経済活動は停滞し、結果としてCO2排出量が大幅に減っているという状況も、半年前にはほとんど誰も予想でき

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            Mark@Design Engineering Magazineをはじめます

            Takramでは、さまざまな専門領域のエッジを探究する独自のリサーチプロジェクト「Mark@」を行っています。Takramでは一つの領域に留まらない「越境」を大事にしていると同時に、メンバーが持っているそれぞれの専門領域を深めていくことも大事にしています。変化し続ける不確実な世界の中で、自らの専門領域の先端のエッジを常にマークし、そこに旗を立てて領域を牽引していけるような存在でありたいという思いからこの「Mark@」はスタートしました。(実はTakramを反対から読むと「Ma

            何が違うのか

            新型コロナウイルスについては相変わらずわからないことも多いが、世界中で研究も進み、少しずついろいろなことがわかってきているようでもある。前回まではあくまで感染者数という数字について考えてきたが、今回は、新型コロナウイルスのメカニズムについて、今までのウイルスと「何が違うのか」、今把握できていることを自分なりに整理してみたい。(但し、この分野の専門家ではないことはあらかじめ留意頂きたい。) 免疫のはたらく場所と仕組み そもそもウイルスが体に入ってきたとき、免疫はどこで何をして

            増えているか減っているか

            一旦収束に向かったかに思えた日本国内の感染状況だが、連日報道されているように再び感染が「第2波」として拡大しつつある。4月はじめ、指数関数的に拡大するウイルス感染を「倍になるのはいつか」という見方で把握することについて書いたが、第2波についてはそれだけでは状況を正しく把握することはできなそうである。状況はよくなっているのか悪くなっているのか?感染は拡大しているのか収束しているのか?今回は第2波を前提に「コロナで数学」第2弾として改めて考えてみようと思う。 何の増減が大事か?

            倍になるのはいつか

            3/30の443名から4/4には891名へ。891/443=約2.01。 つまり東京は今(2020/4/4)、5日間で2倍のペースで累計感染者数が増加している。 【2020/4/17追記】4/17現在、東京は10日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記。 【2020/5/17追記】5/17現在、東京は218日間で2倍程度のペースになっている。以下、文中に最新版グラフを追記。 【2020/7/11追記】「第2波」の感染状況を把握するには別の見方が必要に

            目覚めるために眠る

            人は眠らなければ生きていけない。 先日お会いした医師の稲葉俊郎さんの著書『いのちを呼び覚ますもの』は、「なぜ人は眠らないといけないの?」という子どもの頃から抱いていた疑問が出発点になっているという。 寝る時、人は意識を失っている。周りがどういう状態なのか何も覚えていない。生物学的には極めて無防備で危険な状態だともいえる。(中略)なぜこうしたリスクの高い状態が、毎日周期的に訪れる必要があるのだろう。 稲葉さんは、人は眠る瞬間を自覚出来るのか?という疑問を確かめるため、実際

            「せーの」で息を止める

            感染を抑えるために、社会全体で「せーの」で息を止める試み。 上手くやればきっと何らかの効果はあるだろう。でも、人間と同じで社会全体もずっと息を止めてたら死んでしまうから、「せーの」をいつにするかはとても難しい判断だ。早すぎても遅すぎてもだめなのだ。 「せーの」をどのくらい強制するかも難しい。比較的息を長く止めていられる人もいればそうでない人もいる。お客さんが来なくてまじでやばいというお店、急に休校と言われても共働きで詰んでしまうよという家庭、人生の一大イベントが流

            冷静に右往左往する

            「正しく怖がる」って誤解生む言葉だなと思う。 元ネタはおそらく寺田寅彦の随筆「小爆発二件」で、震災直後にすでに出版されていた数少ない放射能リスクに関する本『人は放射能になぜ弱いか』の冒頭で引用されていてよく知られるようになったのだと思われる。 正当にこわがることはなかなかむつかしい この一節が出てくるのは、浅間山の噴火を偶然ふもとで目撃した寺田寅彦が、駅で山から降りてきた学生と駅員の会話を聞いているシーンだ。  十時過ぎの汽車で帰京しようとして沓掛駅で待ち合わせていたら

            人間と自然(前編)

            地球が燃えている。 火の歴史に詳しい環境史家のステファン・パインは、2015年にデジタルマガジンAeonで、今わたしたちは地球の歴史上、人の時代を意味する「Anthropocene(人新世/アントロポセン)」ならぬ、火の時代「Pyrocene(火新世/パイロセン)」を生きているのではないかと指摘した。パインは昨年夏のアマゾンやカリフォルニアの森林火災の際、「Prepare for the Pyrocene(火新世に備えよ。)」と題したエッセイの中で、「それはもはや温暖化を意

            世界を閉じる枠

            「予測する脳」で取り上げた「予測的符号化理論(Predictive Coding Theory)」によれば、わたしたちは外の世界から情報を受け取っているようでいて、実は多くの時間、脳が予測した世界を生きている。そして、予測と現実に齟齬が起きた時にはじめて人は考える(予測モデルを修正する)のだという。 たしかに、目の前の状況に対して四六時中ありとあらゆる可能性を考えていたら無限の時間がかかって身動きが取れなくなってしまう。予測モデルという「枠(フレーム)」を作ることで、その枠

            自立と依存

            自立とは依存先を増やすことである。 脳性マヒの障害を持ちながら医師としても活躍され、現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授として「当事者研究」などの分野でも注目されている熊谷晋一郎さんの言葉である。 一般的に「自立(independent)」とは「依存(dependent)」の反対語であり、自立することは、誰にも依存することなくスタンドアローンになることだと思われがちだが、決してそうではないと熊谷さんは言う。 それまで私が依存できる先は親だけでした。だから、親を失

            寛容と不寛容

            寛容は不寛容に対して不寛容になるべきか。 自分と異なる多様な価値感を認め、ひとりひとりの違いを包み込む「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉をよく目にするようになった。これからの社会でますます重要になる考え方である。金子みすゞの言葉を借りれば「みんな違って、みんないい」。しかし他者に対して「寛容」であることは実は言うほど簡単なことではない。まず、寛容は無関心とは違う。寛容であるためには、同じ人間同士でも世界の捉え方(環世界)は千差万別であることを知り、自分の正しさ

            つかうとつくる〜セルフビルドとファブシティ

            今年夏の1ヶ月を家族で過ごしたのは、AirBnBで見つけたサウスロンドンのWalters Wayという小さな通りに建つ一軒家だった。実はあとから知ったことだが、この家を含む近隣の家々は、1970年代から80年代にかけて、建築家ウォルター・シーガルの構想と監修のもと「シーガル・メソッド」と呼ばれる工法で施主たち自らの手によって建てられた「セルフビルド建築」の先駆けとして知られる建築だったのだ。もちろん建築史の中でセルフビルド建築のパイオニアは彼だけではないが、近年書籍化されてい