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猫のように暮らしてみたい(その11)

医者が言うには「考えないでいる」ことが一番いいことだそうだ。

私は四六時中考えていた。

仕事、家族、お金、犯罪、災害、異常気象、戦争、
日本の未来から地球環境汚染まで心配事が尽きなかった。

「それはあなたが決めることではないですよ」と担当医に言われた時、

ハッとしてなぜだかとても安堵して涙が止まらまかったのを覚えている。

いつのまにか自分の手に負えない身に余ることまで考えて心配し、
より一層不安を増幅させていたようだ。

そういう自分を自覚していなかったのだ。


「考えないでいる」というのは実はすごく難しい。

自分の意志で思考を停止することは不可能なのだ。

うつ病の人の精神状態は
いわば神経がむき出しになったような感じで、
通常の精神状態であれば何でもないような出来事や会話が
ビリビリと神経を逆なでするように過剰に反応してしまう。

毎回毎日毎時そんな調子で脳に負荷がかかった状態では
車のエンジンならオーバーヒートになる。

だからそれらを抑えるために薬を飲むのだ。

初期の段階ではまず生活リズムの改善を試みるため、
睡眠導入剤や精神安定剤などで気分を落ち着かせ
疲労を取るところから始めた。

ただこの頃の私は鎮痛剤とお酒の常習で
投薬の効果はほとんど感じられなかった。

医師に休職を勧められてはいたが、
職務上代わりになる人がいなかったこともあって
休職はできなかった。

私の場合、
ストレスの原因は仕事上の事と人間関係だったので、
ストレスはますます大きくなっていった。


猫も何か考えているのだろうか。

宝石のように美しいその瞳を覗いてみる。

私を真っすぐに見つめ返し、ゆっくり瞬きをする。

猫たちのコミュニケーション方法のひとつだ。

聞いているよ、分かっているよと言われたような気になる。

猫と暮らしているとまるで相手が人間であるかのように
話しかけたりする事がある。

眠っていても耳をピンと立ててこちらに傾けている。


もちろん話の内容を理解しているとは思わないが、
ちゃんと聞いているし、
感情を理解している事は間違いないと思う。

当たり前だが猫は言葉を話さない。

繰り返される簡単な言葉、たとえば名前、ごはん、
おやつなどはそれが何なのか分かるようだ。

それから飼い主の声のトーンや態度で喜怒哀楽を感じている。

考えるではなく感じ取っている。

高い共感力を持っているのだ。

猫同士でもこの共感力を使って意思疎通をしているようだ。

抱き合って眠ったり、
他の猫の具合の悪さを心配するように近づいてくる。


ウチの猫たちは一匹をお風呂に入れると、
鳴き声を聞いた他の猫たちが
ドアの前で必死に鳴き声に応じて鳴いている。

まるで大丈夫かーとか、がんばれーとか言っているようだ。


                   つづく。。。

今日も読んでくださった方ありがとうございます。



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