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猫のように暮らしてみたい(その19)


私が今いるこの国この時代では、学歴や社会的地位、収入、
財産などが人としての位置づけをしているように思う。

わざわざそういう言い方をしたのは、
世界には多くの国や社会やコミュニティが存在するからだ。

私は、食べることに困るほどの貧困を経験したことがない。

親に身売りされたり、幼い児童が性暴力にあっていることも知らずにいた。

紛争地帯で学校にも行けず常に銃や地雷の危険にさらされたこともない。

戦争で住む家を追われ難民キャンプでその日暮らしをした経験もない。

宗教によって厳しい制約を受けたり弾圧されたこともない。

自分の国を守るために声を張り上げデモを行い逮捕されたこともない。

未開の地で農業や漁業、狩猟などで裸同然で暮らしたこともない。

私の今までの経験や価値観は
この国のこの場所でしか通用しないじゃないか。

今まで私が積み上げてきた経験や価値観が無意味に思えてしまった。

どの世界のどの時代でもどんな社会でも、
人は環境に左右されて生きていくのだ。

生まれた場所で生きるだけだ。

私はたまたまこの国この時代に生きて、
この社会のシステムで上手く行かなくなった。

私がすべてだと思っていた社会はほんの小さな集合体だった。

ならば別の可能性もあるということではないのか。

価値観なんてものは簡単に変わる不確かなものだ。

どのようの考え感じ思うのもすべて
私の気持ち一つでどうとでもなるのだ。

誰も私のことなど気にしないし期待しない。

そう考えると気が楽だし、
壊れた心はまた一から作り直せばいいじゃないか。

元通りではなく違う形になったとしてもそれはそれでいいのだ。

価値観なんて人それぞれだ。

私は他人が期待する自分や自身で築き上げた
自分というイメージにしがみついていただけだった。

いま在る自分は昔の自分ではないし、
これからも変わり続けて行くだろう。



その頃自分は、中古車販売の事務をしていた。

当然敷地内には車がたくさん置いてある。

展示場ではなく、裏側の社員用や修理車用の駐車場に
しばらく置いてある車は気を付けないといけない。

いきなりエンジンをかけるとマズいのだ。

何故ならエンジンルームに子猫が入っていた事が何度かあったからだ。

日に当たって密閉状態のボンネットの中は雨風がしのげるし暖かい。

だから人間がいることを知らせるためボンネットを叩いたり、
開けて中を確認してからエンジンをかける。

エンジンルームの隙間に何匹も埋まっている。
下から入ってよじ登り体をくねらせ隙間にフィットさせている。

慌てて逃げ出す子もいれば
寝ぼけているのか暫くたってから目を覚ます子もいる。

気が付かないまま走行していることもあるようだ。

途中の道路で落ちてしまったり、後続車に跳ねられる危険もある。

出られずに高温でやけどしてしまう事もある。

ドライバーの方は今後車に乗るとき、
特に久しぶりに動かす時などはボンネットをバンバンして下さい。

子猫がいるかも知れません。


                  つづく。。。

今日も読んでくださった方ありがとうございます。


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