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観察瞑想「レーズンエクササイズ」と「歩きの瞑想」を簡単説明。『マインドフルネスの教科書 この1冊ですべてがわかる!』 藤井英雄 著

本書『マインドフルネスの教科書 この1冊ですべてがわかる!』は、精神科医・医学博士である藤井英雄Dr.による書籍です。マインドフルネスとは何なのかから始まり、マインドフルネス・エクササイズの実践方法、心の持ちようなどに話が及びます。

特に、マインドフルネス・エクササイズ方法の解説が、凄く分かり易い。「レーズンエクササイズ」と「歩きの瞑想」は、秀逸と感じます。マインドフルネスの具体的な実践方法を探している方は、本書が参考になる筈です。


<本書メモ>
・私がいちばんむずかしいと感じていること、それはマインドフルネスが何かを知らない人に、マインドフルネスとは何かを説明すること。

・2013年に発足した日本マインドフルネス学会では、マインドフルネスの定義を「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」としています。

・著者が運営している「心のトリセツ研究所」が昔から使っているマインドフルネスの定義は、「今、ここの現実にリアルタイムかつ客観的に気付いていること」もしくは、「あるがままの現実をあるがままに感じること」です。

・子供のころからの自己否定的な信念、繰り返すネガティブ思考・感情が自己肯定感を弱くする。すると自己肯定感を強くする秘訣は「自己否定しそうになる瞬間に自己否定を手放し、自己肯定すること」です。つまりネガティブ思考をしてネガティブ感情に浸っているときに、マインドフルになりネガティブ思考・ネガティブ感情を手放すことが自己肯定感を強化して幸せになるコツなのです。



ここからは、蛇足です。

著者は、幼少時体験から染みついた、自己卑下癖から脱却することにマインドフルネスを活用しようとしています。理性的な大脳皮質から、幼少時学習して基本パターンを形成した情動中枢脳(扁桃体と呼ばれる原始的な脳)などへ、繰り返し働きかけようとします。幼少時の生き残り戦略としては正しかった鎧を、成人後の環境に合わせて脱ぎ変える的な言い方をします。

しかしならが、幼少時体験は外部の鎧ではなく、その人の中心核です。中心核は、脱げません。著者が幾度も取り上げる幼少時体験に基づく自己肯定感の喪失は、最近テレビで話題になった複雑性PTSDのような話に繋がります。複雑性PTSDをざっくり言うと、幼少時虐待などにより慢性的ストレスを受け続けたトラウマが、無意識化でも消えずに残っている状態です。脳を調べると、言語や時間感覚を司る脳部位の機能が低下するなど、明らかに正常な脳とは違う状態になっています。

医療の世界でも日が浅い診断名であり、確立された治療体系は存在しません。従来の治療方法を適用すると、逆に悪化するケースも珍しくありません。しかし、自己肯定感や複雑性PTSDに悩む人間は、むしろ増えているような印象を持ちます。


この辺の話に興味がある方は、以下書籍も是非読んでみて下さい。治療法のようなものは、出始めています。少し前の発達障害と同様に、身の回りの問題として溢れかえっているのに、医療や行政の枠組みから漏れている気がします。ポイントは、家庭内での世代を超えた連鎖にあるようです。日本人は、余裕がなくなってますからね...


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