あなたのお茶碗みせてください

お茶碗をテーマに動く人です noteは初心者 じわじわと。 お茶碗から暮らしを考えたら…

あなたのお茶碗みせてください

お茶碗をテーマに動く人です noteは初心者 じわじわと。 お茶碗から暮らしを考えたらおもしろいんじゃない!

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ニトリのお茶碗が割れた

 引越した部屋で食器棚もどきとしてとりあえず皿たちを並べていたシンク上の戸棚から、とある春の日のお昼前に、するんっとお茶碗が転げ落ちた。背伸びをしたわたしの左足側の床にパリーーンと真っ二つになったそれがため息をつくみたいに明後日の方を向いてわたしとは目を合わせてくれなかった。 「わ、割れるんだこれ〜…?!」というのが先ず感想で、その次に「あぁ、今おおちゃくをしたなぁ」と反省した。 だってニトリで300円くらいで買ったお茶碗だった。 ハンガーを買い足すために出かけてふと目に入

    • 宇宙を手にする

       岡山に行くと聞いた。名古屋を離れたら彼はきっと変わる!今の彼に聞いておかなければ!と慌てたわたしが「場所はどこにしようか?」と聞くと「どこへでも持っていきますよ」と大海原くらいに寛容な言葉が返ってきた。 ゆらゆらと戯れることのできるたっぷりの余白と、すとんと真ん中に据えた芯。ふたつを同時に持つ彼は「僕、何者でもないですけど」と言った。 本人が「何者でもない」と思っている今のタイミングにお茶碗を見せてもらえて光栄だ。 vol.6 板谷くん  陽射しがやわらかい日だった。待

      • いつもと違う日のお茶碗

         人生で一度くらいは東京の街に身を置くべきと考えてギリギリでやり直した就活、やるぞ!と気合いじゅうぶんにはじめた4月。 引越した部屋はリノベ物件で、西側の壁一面を好きに塗ってよかったから「城」みたいな意味の名前がついた色を選んだ。 私はここで私の城を築いていくぞ! 憧れをカタチにしようとその先の生活を期待でいっぱいにした私は、全身で社会に飛び込んだ。 今日はこれを任せてもらえた 昨日知ったそれを今日はカタチにできた 次はそっちも見たい知りたい… そうやって毎日を重ねる中で

        • 「岡崎行きたいです!」

           名古屋駅から名鉄線でおよそ30分、東岡崎の駅に到着すると家康姿の松潤パネルが出迎えてくれた。“岡ビル百貨店”というレトロな文字の看板に背を向けて、乙川と呼ばれる大きな川を目指す。 ランニングをする人 仕事の休憩にお弁当を食べる人 ベンチに寝転ぶ人 犬の散歩の途中におしゃべりをする人たち この街での暮らしがあつまる河川敷に腰をかけたら時間の流れがずいぶんとゆったりになった。 優しい水色の空にレースカーテンのような雲がゆれた冬のはじめの日 「岡崎、いいんですよ」とまっすぐに言葉

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          6本

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          殿様のお茶碗

           幼い頃に読んだ本の中でいくつか覚えているものがある。 ざっくりという言葉がほんとうにぴったりだと思う「ざっくりとした記憶」ではあるけれど、なんとなくわたしの中に留まっているわたしが好きだったお話。 お茶碗のことを考えるようになって、ふとひとつ思い出した。 殿様のお茶碗 検索をかけたら青空文庫にひとつ 殿さまの茶わん というタイトルがあって、まさにこれだった。 たぶん小学生の頃以来に読む『殿さまの茶わん』は、記憶の中のものよりもあっさりしている印象だったから、この物語に

          お茶碗の安心

           お正月、金沢の祖母宅へ帰省していた友人が名古屋に帰宅して私に言った。 「お茶碗でお米を食べる安心ってすごい」 突然のひと言に上手く想像ができなくて「安心?」と聞き返す。 「そう、器とは言えないもので食べたから」 缶詰 レトルトのパウチパック プラスチック容器 避難をしたときの食事を“自分の手元”のレベルで想像したことがあったかな… 我が家に置いてある避難用グッズの中身を広げて思う。 「不安かも」 防災リストというものを元に準備したそれは、 日常で食べたことの

          抹茶碗ランチ

           「ありとあらゆるものを抹茶碗に入れて出してるんですよ、たとえばランチの煮魚とか」 おみゆさんとのおしゃべりの中でどうにも驚いてしまって「へぇ…!?」としか言えなかった抹茶碗の使い方。 噂の抹茶碗ランチにやっぱり対面したい!と彼女に伝えると、是非にと素敵な招待をしてくれた。  春になったらピクニックをしよう、なんてことを思った束の間のあたたかい日の話。 星が丘テラスのいちばん奥、風のあたるエスカレーターを上がった先にある「トド アリトル ナレッジ ストア」で、店長さんと副店長

          一人暮らしあるある

          「我が家で夕飯を食べるとか?」 彼女はあまりにすんなりと私を自宅に招待してくれた。 「一人で暮らす家過ぎて、誘っておいて自分で怯えているのですが是非。ごはんをつくっておきます!」という連絡に、「私は昨夜、レンジで3分解凍したうどんに納豆と冷凍刻みオクラとめんつゆをぶっかけて食べました!」と一人暮らしの極みレシピを返信したら文字の向こうで彼女が賛同するように笑っていた。 お互い一人暮らしで年齢も近い。 ぴしっとしているのにやわらかい花弁を持つ百合のような印象の彼女と、初めて食事

          いい訳

          「100点以外は0点よ」  98点のテスト用紙を持ち帰った小学生のわたしを母が一蹴した。わたしもただそのままに言葉を受け取る。 わからないものをわからないままにするなんてあり得ない、なんでも100点に辿りつく事があたりまえだった。できないことは恥だったのだ。 それから20年以上経って、わたしは確定申告の画面の前にいる。どうしてその数字になったのと睨んだり突如出てくる漢字の並びに眉を下げたり、なんだかんだを繰り返しながらふと思い出したのが60点のテストのことだった。 小学4

          お茶碗の大冒険

           もう友達ができるなんて瞬間はずいぶんと遠い昔の記憶でしかないと思っていた私が彼女と出会ったのは、昨年、長袖のシャツをさらりと着た夜のことだった。とある商店街の中にある沖縄料理店の店先に、知っている顔が見えたから、吸い込まれるようにして丸椅子に座った。その隣の角でソーメンタシヤーを待っているのが彼女だった。 話していたら同い年だとわかって、それだけでついつい古くからの友人な気がして SNSのやりとりなんかも距離感がちょっとだけ近かった。そんなはじまりだった。 vol.3 ゆ

          【番外編 1 】 お茶碗ラテ

          「このお茶碗にカフェラテを淹れてもらえませんか」 「いいよ」  たぶん、2023年の意味わからないオブザイヤーを受賞したやりとりだ。 ここで言ったお茶碗というのは、このひとつまえの記事「ここにお茶碗を持ってきますね?」に登場した‘あおいくんのmy茶碗’のこと。もちろん抹茶碗ではなく飯碗だ。 すするというイメージのある抹茶碗なら想像し得るかもしれないけれど、そうではなくて飯碗、飯碗にほかほかごはんではなくカフェラテを淹れた記録である。  前置きとして、あおいくんのお茶碗の

          【番外編 1 】 お茶碗ラテ

          ここにお茶碗を持ってきますね?

           渡部さんとのお茶碗トーク(vol.1)を終えてテラス席から店内に入ると、ひとりの常連くんと目があった。 「にこにこしてどうしたんすか」と声をかけられてはじめて、お茶碗トークを終えてほくほくしていた自分に気がつく。 「ねぇ、どんなお茶碗を使っている?」唐突に聞いてみると「お、お茶碗ですか?」とひっくり返った声で意味がわからないという顔をした彼、あおいくんが次の主人公だ。 vol.2 あおいくん あおいくんは人気者だ。 マスコットのように愛される一面もあれば彼がいるからこそ

          ここにお茶碗を持ってきますね?

          じゃあ明後日に、ROWSCOFFEEで。

          「やりたいこと、なにかないの」 「いろんな人のmy茶碗を見せてもらいたいと思っていて…」 「なにそれ!どういうこと?」 まだ暑さが残る9月、前職を辞めてとあるコーヒー屋でお世話になることになった私は、そのコーヒー屋のオーナーである渡部さんとお店の近くの立ち飲み屋にいた。お酒をのみながらふと聞かれた問いに「お茶碗」というワードがすっと出てきたのは、オーナーのお茶碗を聞いてみたいと心の片隅にいつも思っていたからだ。 突然のお茶碗がやりたいなんていう発言を否定も肯定もせず聞いてくれ

          じゃあ明後日に、ROWSCOFFEEで。