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詩集

26
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2023年9月の記事一覧

空と大地|詩

空と大地|詩

日差しはまだまだ夏のままで
やわらかい海風が頬を流れる

かもめは気持ちよさそうに飛んで
飛行機雲がすうっと伸びては青に溶ける

緑は大地の間を縫うように広がって
そこへ顔を覗かせる橙の花が映える

履いていたサンダルを脱いで
あたたかい岩の上を裸足で歩いて捉える

まばゆい光を浴びて
太陽に負けないくらい笑う

深い夜|詩

深い夜|詩

視界が狭まる
夜の時間が好きだ
自分と世界をすり合わせる
静かに息をひそめて

夜はどこまでも宇宙で
自分と世界は
付かず離れずの距離
深く遠く潜る

内側を見つめる
反芻するほど
自分を取り戻せる
不思議な時間

あとの祭|詩

あとの祭|詩

わっしょいわっしょい
外から音がする
気持ちが乗らなかったのは
その輪に入らなかったから

わっしょいわっしょい
音が大きくなるたび
気持ちがささくれる
後悔はない

神輿の周囲は別世界
目の前にありながら
自分とはかけ離れた
遠い出来事

まだまだこの街に
馴染めない
よそ者感は拭えず
他人事の枠を越えない

嫌いにもなれず
気持ちの乗せ場も分からない
それは幽霊のように
辺りを浮遊した

溶けゆく日|詩

溶けゆく日|詩

時折やって来る
何をするにも時間がかかる日
前にも後ろにも進まない

動いているつもりなのに
気づけば行動が脱線し
気づけば日が暮れている

時間が溶けてしまう
溶けるのは
バターやチーズだけで良い

自分が溶けてしまう
溶けるなら
美味しくなりたい

時間も自分も
溶け消えてしまう前に
図書館へ駆け込んだ

溶けてなくなるはずの日は
読みたい本を読み終えた日になった
じんわり嬉しい日になった