オカザキ・ヨシヒサ

あまりパッとしない小説家です。純文学・児童文学の周辺でひっそりと活動しています。

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あまりパッとしない小説家・岡崎祥久[オカザキ・ヨシヒサ]のひっそりとした活動に興味を持ってしまった方のためのメンバーシップです。 まずは閲覧がむずかしくなっている過去の作品を読めるようにするところから始めています。無料で読めるのは、それぞれの作品の半分ほどまでですが、メンバーシップに加入することで、最後まで読むことができます。加えて、各作品のPDFファイルをダウンロードすることができるようになります。 将来的には、発表しそびれた作品を限定公開したり、新しい作品をためしたりできる場所にしていけたら、と考えています。 岡崎祥久のこうした活動をささえてみるのもいいかもしれない──そう思ったら、ぜひ参加してみてください。頻繁すぎず、さりとて音沙汰がなさすぎるほどでもなく更新していくつもりです。  掲示板は……ちょっと苦手ですが、記事とはまた別の情発信などができたら、と思っています。

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パーミション

『文學界』2022年02月号 『文学2023』日本文藝家協会編 所収 約090枚/400字詰め換算 権限のない人がやったらダメで、蔑まれたり嫌悪されたり罵倒されたりと手きびしく非難されるようなことでも、権限のある人はしてもいい──というより、むしろしなくてはならなくて、するのがあたり前、さらには、より発展的なこともすべきであり、それらをしないでいると責務を果たしていないと非難されることすらあります。 あるひとつのことが、権限の有無でガラリと意味合いが変わるというのは、

    • キャッシュとディッシュ

      『文學界』2020年08月号 約093枚/400字詰め換算 現金とお皿──と言ってしまえばミもフタもないですが、でもまあ、要するにそういうことです。いわゆる〝打ち出の小槌〟みたいなところもありますけど、じつは似て非なるものというか、けっこうロクでもない代物なので、よくよく考えてみたら、あまり欲しくなれない物かもしれないです。 この作品にかぎらず、どの作品でもたぶん同じだろうという気がしていますけど、なにか概念や思想のようなものがあって、それを文章表現に落とし込むといった

      • 夢魂譚(第3稿)

        そういえば!──と思い出してコンピュータのなかを探してみたら、ありました。昔の原稿です。「夢魂譚」と書いて「むこんたん」と読みます。特に出典がある言葉ではないですが。 この作品は、学生時代が終わる前に書いて、文芸誌の新人賞に応募しました。1993年のことです。1次選考・2次選考をかいくぐり、うまいこと最終選考まで進んだものの、受賞には至りませんでした。 最終選考のことは、電話で報せがきましたが、会って話がしたいと先方が言うので、いそいそと出版社まで出かけていきました。最終

        • 千年ギツネ

          書き下ろし作品 『千年ギツネ』2009年11月(理論社) 約084枚/400字詰め換算 書き足りなかった! と思うことよりは、書き過ぎだった! と思うことのほうが多い気がします。印刷されたり、出版されたりして、もう書きなおせなくなってから、文字単位、語句単位、文単位、段落単位で、これはなくてもよかった/ないほうがよかった、などと思うことがあります──もっとゴッソリないほうがよかった……と思ったことは、さすがになかった気がしますけど。 不思議なことに、読んだ人は特にそんなふ

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        • 修正(キャッシュとディッシュ)

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        • ハヤミミ・ズキン

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          『文學界』2022年02月号 『文学2023』日本文藝家協会編 所収 約090枚/400字詰め換算 権限のない人がやったらダメで、蔑まれたり嫌悪されたり罵倒されたりと手きびしく非難されるようなことでも、権限のある人はしてもいい──というより、むしろしなくてはならなくて、するのがあたり前、さらには、より発展的なこともすべきであり、それらをしないでいると責務を果たしていないと非難されることすらあります。 あるひとつのことが、権限の有無でガラリと意味合いが変わるというのは、

          キャッシュとディッシュ

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          『文學界』2020年08月号 約093枚/400字詰め換算 現金とお皿──と言ってしまえばミもフタもないですが、でもまあ、要するにそういうことです。いわゆる〝打ち出の小槌〟みたいなところもありますけど、じつは似て非なるものというか、けっこうロクでもない代物なので、よくよく考えてみたら、あまり欲しくなれない物かもしれないです。 この作品にかぎらず、どの作品でもたぶん同じだろうという気がしていますけど、なにか概念や思想のようなものがあって、それを文章表現に落とし込むといった

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          夢魂譚(第3稿)

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          そういえば!──と思い出してコンピュータのなかを探してみたら、ありました。昔の原稿です。「夢魂譚」と書いて「むこんたん」と読みます。特に出典がある言葉ではないですが。 この作品は、学生時代が終わる前に書いて、文芸誌の新人賞に応募しました。1993年のことです。1次選考・2次選考をかいくぐり、うまいこと最終選考まで進んだものの、受賞には至りませんでした。 最終選考のことは、電話で報せがきましたが、会って話がしたいと先方が言うので、いそいそと出版社まで出かけていきました。最終

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          千年ギツネ

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          書き下ろし作品 『千年ギツネ』2009年11月(理論社) 約084枚/400字詰め換算 書き足りなかった! と思うことよりは、書き過ぎだった! と思うことのほうが多い気がします。印刷されたり、出版されたりして、もう書きなおせなくなってから、文字単位、語句単位、文単位、段落単位で、これはなくてもよかった/ないほうがよかった、などと思うことがあります──もっとゴッソリないほうがよかった……と思ったことは、さすがになかった気がしますけど。 不思議なことに、読んだ人は特にそんなふ

          バンビーノ

          「プラン〝ウシと私〟」に参加すると最後まで読めます

          書き下ろし作品 『バンビーノ』2000年5月(理論社) 約407枚/400字詰め換算 この作品を書くにあたって、担当編集者さんといっしょに、小学校を見学しに行きました。といっても、取材の場を用意してもらったわけではなく、授業参観のようなかたちで、教室にいさせてもらった、という感じです。 そのクラスの担任は、名物教師といえばいいのか、自分の教育法や授業をひろく公開していて、その日も教育関係者や児童書の出版社の人などが来ていました。メディアへの露出もあるらしく、生徒たちも

          文学的なジャーナル

          「プラン〝ウシと私〟」に参加すると最後まで読めます

          初出《Web草思》2006年10月〜2007年10月 『文学的なジャーナル』2008年10月(草思社) 約272枚/400字詰め換算 今日の今この時が、自分にとって最先端である──というのは、ごく一般的な時間感覚だと思うし、この後どうなるか、ということについては、なにひとつわかりません。 そんなふうに、自分の外側では時計に従順な時間が流れていても、物事がひとたび内に入ってしまえば、年月日時分秒の順序はほぐれ、前後のつながりはゆるゆるになります。過去と未来の関係は相対的

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          バンビーノ

          書き下ろし作品 『バンビーノ』2000年5月(理論社) 約407枚/400字詰め換算 この作品を書くにあたって、担当編集者さんといっしょに、小学校を見学しに行きました。といっても、取材の場を用意してもらったわけではなく、授業参観のようなかたちで、教室にいさせてもらった、という感じです。 そのクラスの担任は、名物教師といえばいいのか、自分の教育法や授業をひろく公開していて、その日も教育関係者や児童書の出版社の人などが来ていました。メディアへの露出もあるらしく、生徒たちも

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          初出《Web草思》2006年10月〜2007年10月 『文学的なジャーナル』2008年10月(草思社) 約272枚/400字詰め換算 今日の今この時が、自分にとって最先端である──というのは、ごく一般的な時間感覚だと思うし、この後どうなるか、ということについては、なにひとつわかりません。 そんなふうに、自分の外側では時計に従順な時間が流れていても、物事がひとたび内に入ってしまえば、年月日時分秒の順序はほぐれ、前後のつながりはゆるゆるになります。過去と未来の関係は相対的

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          昨日この世界で

          初出『別冊文藝春秋』249号〜251号 『昨日この世界で』2004年8月(文藝春秋)所収 約284枚/400字詰め換算 だいぶ昔のことなので、うろ覚えですけど、芥川龍之介が随筆かなにかで、ひとつの作品ができあがるのに、事前の計画通り行くこともあれば、紆余曲折を経て変わることもある、というようなことを書いていました。その中にたしか、いろいろ変わることはあるけれど、そうは言ってもさすがに、馬を書こうと思ったのが馬蝿になったことはない、と書かれていて、最初に読んだときは、そり

          ctの深い川の町

          初出『群像』2008年6月号 『ctの深い川の町』2008年8月(講談社)所収 約116枚/400字詰め換算 郊外に向かう私鉄の電車に乗り、吊り革につかまって立ちながら、タクシーの乗務員募集の広告をじっと見ていたのをおぼえています。タクシーの運転手になるとかならないとか、自分がなれそうかどうかとか、そういうことはあまり考えずに、ただじっと見ていました。私鉄の電車に乗ってどこへ行こうとしていたのかは、もうおぼえていませんけど。 ネット上の外国語のサイトを機械が和訳するの

          ctの深い川の町

          首鳴り姫

          書き下ろし作品 『首鳴り姫』2002年9月(講談社) 約400枚/400字詰め換算 遠く離れたところから見ると、そのときはわからなかったことがわかるようになる──というのは、特にだれが言ったということもない、ありふれた通念だと思いますけど、でもたしかに、作品を書いて出版した当時よりは、客観的な手ざわりがあるように感じられます。 ──あんなに美しい夜はなかった という帯の文言は、著者自身が書いたものですが、自らの作物のことをできるかぎり遠ざけたうえで、できるかぎりの愛

          南へ下る道

          初出『群像』2001年11月号 『南へ下る道』2002年2月(講談社)所収 約206枚/400字詰め換算 カーナビもなければ、スマホもない、ETCカードもない、さらに言うなら、音楽もかかっていない自動車の旅です。 際立つものなんて何もない若い夫婦が、借り物の軽自動車に乗り、東京から南へ南へと走っていく──ただそれだけの話。 時たま、すこしチクチクするような、なんとなく意味ありげな言葉が露出することはありますけど、それにかこつけて長々と語り始めたりしないし、現実では起

          醜男きたりなば

          初出『群像』2000年12月号 『南へ下る道』2002年2月(講談社)所収 約141枚/400字詰め換算 醜さを説明したり描写したりすることなく、ただひと言「醜男」であると言ってしまえば、それでもう、自由な存在になれるのではないか、と考えたのがそもそもでした。 なんというかまあ、樽いっぱいのワインに1滴の泥水を落とせば樽いっぱいの泥水になるが、樽いっぱいの泥水にワインを1滴落としても樽いっぱいの泥水のまま、というようなもので、泥水の気楽さ、みたいなものです。 不潔だ

          楽天屋

          初出『群像』2000年2月号 『楽天屋』2000年7月(講談社)所収 約148枚/400字詰め換算 ずっと前に住んでいた家のような感じがします──間取りはもちろん、家具調度もそのまま、カーテンや壁紙も変わっておらず、後からネジ止めしたフックの曲がり具合もそっくり同じ……とでもいうような。 この作品で初めて芥川賞の候補になったり落選したり、単行本化されてから野間文芸新人賞を受賞したり、というように文学業界的な思い出がいくつかありますが、そういうのはみんな(玄関を入ってす

          孤独のみちかけ

          初出『群像』1998年5月号 『楽天屋』2000年7月(講談社)所収 約120枚/400字詰め換算 書くことは、なんというか、お祓いみたいなものなのかな、と思うことがあります。自分の中にあった「なにか」が祓われて、晴れ晴れした気分になり、祓われた「なにか」のことは、コロッと忘れてしまう。だからなのか、自分がどこになにを書いたのか、なんとなくしかおぼえていないことがよくあります。 けれど、お祓いが不十分だったり、やり方をまちがえていたりすると、そういう「なにか」は──地

          なゆた

          初出『群像』1997年12月号 『楽天屋』2000年07月(講談社)所収 約107枚/400字詰め換算 いろいろ痛々しさのあるデビュー2作目です。2番目の苦労というのは、なかなか大変です。昔話に登場する三人兄弟も次兄はたいていパッとしないですしね。きっと、どうすればいいのか、わからないんでしょうね。 「リンチンチンって、犬の名前ですよね」と編集者さんに言われて「え? そうなんですか? どうして?」と聞き返した三十年近く前のあの頃、ネットで検索なんて、だれもしてませんで

          秒速10センチの越冬

          初出『群像』1997年06月号 『秒速10センチの越冬』1997年11月(講談社)所収 約237枚/400字詰め換算 群像新人賞を受賞後、書籍化されたものです。新人賞の受賞作だからといって、そうそう本にできるわけじゃないんですよ、というようなことを言われましたけど、その後の人たちを見ても、ふつうに本になっているようなので、おだてられただけ…だったのかもしれません。 挿画は“オラシオ・エルネスト”さんにお願いしました。彼はある時期、リクルートから発行されていた『フロム・

          秒速10センチの越冬

          秒速10センチの越冬(原稿版)

          『群像』1997年06月号 約237枚/400字詰め換算 第40回群像新人賞を受賞したデビュー作です。受賞後、半年ほどで書籍化されましたが、今回は、掲載誌や書籍を底本にしたものではなく、新人賞に応募した際の“原稿”を公開します。なので、校閲や校正を経ていない“なまの”テキストということになります──表記法にはぎこちなさがあるし、誤字や脱字はあるし、誤用とか読みづらい箇所もあるかも…。 悲喜こもごも、思い起こせばいろいろありますが、今ここでデビュー前後の思い出を語ってもし

          秒速10センチの越冬(原稿版)