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バンビーノ

  • 書き下ろし作品

  • 『バンビーノ』2000年5月(理論社)

  • 約407枚/400字詰め換算

この作品を書くにあたって、担当編集者さんといっしょに、小学校を見学しに行きました。といっても、取材の場を用意してもらったわけではなく、授業参観のようなかたちで、教室にいさせてもらった、という感じです。

そのクラスの担任は、名物教師といえばいいのか、自分の教育法や授業をひろく公開していて、その日も教育関係者や児童書の出版社の人などが来ていました。メディアへの露出もあるらしく、生徒たちもこなれているというか、保護者ではない大人たちがいても、あまり緊張していない様子でした。

実際に授業が行なわれている教室の中にいてみたり、数十人の子どもたちの姿を近距離で目にしたり、数人の生徒とちょっと言葉を交わしたり、給食の献立表を見せてもらったり──といったことが、この作品を書くにあたって役に立ったのかどうかは、正直に言ってわかりません。

この当時は、デビュー作が書籍化され、文芸誌に作品を発表するという小説家っぽい活動をはじめたばかりで、児童文学を書く準備など、まったくしていませんでした。それでも担当編集者は、オカザキさんの中の子どもに読ませたいものを書いてもらえばそれでいいですから──と言うのでした。

そういう書き方だったら、もしかしたら自分にもやれるのかもしれない、と考えて着手することにしたのですが、思ったとおりかなり悪戦苦闘して、ようやく書き上がったのが、こういう作品だった、というわけです。

文章上の表記にかなり揺れがありますが、これは、子どものセリフは漢字をひらき、地の文や大人のセリフは漢字のままにしてルビをふったり、といっためんどくさいことをしたせいもありますが、単純に統御しきれなかっただけ、というような気もします。しかしまあ、とりあえず今回は、ごく最小限の誤字を訂正するにとどめ、基本的には単行本に準拠しましたが、ごく一部を除いてルビは省略しました。


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