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ファンタズマゴーリア(第1部)

  • 『群像』2012年10月号

  • 『ファンタズマゴーリア』2014年9月(講談社)所収

最初に着想を得たのは、たしか2007年のことでした。そこから『群像』に掲載されるまでに5年、書籍として刊行されるまでに2年、トータルで7年ほどかかっています。

実際、初稿をあげるまでに3年弱、雑誌入稿時には第5稿で、書籍化の際にもあれこれ加筆修正するなど、書く作業にかなりの時間をそそぎ込みはしたものの、長い時間をかけて書いた作品──という印象はあまり残っていなくて、どちらかというと、紆余曲折というか山あり谷ありというか臥薪嘗胆というか右往左往というか、なんだかんだ、いろいろあったよなぁ、という感じです。書き始めたときと書き終えたときでは、出版社も別でした。

申し訳ないことをしてしまったと悔やんだこともあれば、罵詈雑言をかろうじて飲み込んだこともあったし、自暴自棄になったり逆恨みしたり、捨てる神あれば拾う神ありだな、と思ったこともありました。

だったら、そういったページ外の実情が作品に影を落としているかというと、べつにそれはなさそうな気がしています。ありがたいことに。

また、コツコツ時間をかけて書いたといった類の自己満足感はないものの、書いておきたいと思ったことは、わりとみっちり盛り込めたのではないか、と思っています。食べごたえのあるナイスなお弁当がつくれた、みないな感じでしょうか。

今は2024年──書籍刊行から数えても10年、最初の着想からは17年が過ぎ去りました。自分がまったくの別人になったような気もすれば、なにひとつ変わっていないような気もするし、おそらくどちらも同じぐらいほんとうなのだろうという気もしています。

*この作品は各部ごとに分載することにしました。

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