雨を描く。
雨が降ったら私を想い出して欲しい。
彼女はその言葉を最後に、
僕の目の前から姿を消した。
雨がよく似合う人だった。
どれだけ幸せに満ち溢れている日でも、
いつも影を残して、
僕の心を少しずつ侵蝕していった。
愛って何だろう。
心の奥にしまった記憶を手繰るように
彼女はつぶやいていた。
僕は何も答えず、ただ聴いていた。
聴くことしかできなかったから。
大丈夫。と、
そっと唱える。
必ず逢える。
僕が僕として生きている限り。
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