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フランスで出会ったおじさんも、インスタで猫動画見てた。

 先月、フランス・イギリスへ行ってきました。
 夫の仕事についていき、フランスでは展示会や会食など、ビジネスの場にも少し同伴させてもらいました。
 以前から「無事に乗り越えられるのか?」と不安しかなかったのですが、一応なんとかなりました。というか、思ったよりも頑張れた気がします。
もちろんそう思えたのは、ほとんどは周りの皆さんに助けられたおかげなのですが、想定以上の出来事も色々ありまして。

 そんな話や今回経験したこと、気づいたことを少しずつ記事にしていこうと思います。


***


私が先月行ったのは、フランス・リヨンから少し西に行ったある町。
今私が住むドイツの町よりものどかなところでした。

白に統一された建物。小さくてわかりにくいですが、ベランダの手すりに細かなデザインが施されています。

 道路の脇には生成りのような柔らかな白の石で作られた年季の入っていそうなアパートが並んでいます。そのアパートのほとんどのベランダや窓、ドアにアール・ヌーヴォーのような曲線的なデザインが施されていました。
きっと町の景観を守るために、ある程度デザインテイストも揃えているのかもしれません。

 フランスは「衣」と「食」に美意識が強い人が多いイメージがありましたが、その感性は「住」にもしっかりと反映されているように見えました。
この町は日本の百貨店でも扱われているような、高級陶器の工場があることでも知られる町なので、そういう意味でも美意識の高い人が多いのかもしれません。

治安もよく、とても素敵な町なのですが……。
ここに来るために乗ったある乗り物がとても衝撃的だったのです。



 この町へ行くために、リヨン空港から飛行機を乗り継ぎました。
乗るのは「シャレール航空」という聞き慣れない航空会社の飛行機。でもヨーロッパには星の数ほどのLCCがあるので、その1つなんだろうくらいに思っていたのです。


そしていざ搭乗となったとき、
目の前に見えた飛行機はこれでした。

え・・・・?

 「 え?セスナ機? 」と思わずいいたくなるほどのコンパクトさ。日本の島などに離着陸する飛行機よりも小さく見えます。
ほとんどの搭乗客が驚いていて、それを迎えた整備士さんたちはニヤニヤ。きっと搭乗客が驚くのは毎度のことなのでしょう。

 搭乗口付近で待っているとき、待っている人が少ないことには気づいていました。でも地方へ行く飛行機だし、なにより夜10時頃に出発の飛行機だったので、利用客が少ないだけなのだろうと勝手に思っていたのです。


 そして入り口には耳栓の配布トレー。最近、日本の飛行機で耳栓の配布ってないですよね。(言えばもらえるのでしょうが)
不安になりながら、皆でおそるおそる飛行機に乗り込みます。


 外観のイメージ通り、機内が狭い!
通路を中心にして、両サイドに1席ずつしか座席がありません。機内は日本の一般的なマイクロバスを一回り以上小さくしたくらいでしょうか。
通路の狭さとヨーロッパの体格のいい人の相性は最悪で、座席に着くまでもギリギリ、ミッチミチ。

 一般的な旅客機の頭上にある荷物棚なんてもちろんありません。しかし予約時点では規定範囲内であれば持ち込んでいいことになっています。


(え、どこ置くのこれ?)


 私は最後尾の席で比較的ゆとりのある席(バスの最後尾の席みたいな感じ)だったので、荷物を自分の脇に置くことができましたが、他の席の人はスーツケースを抱えたり、通路において滑らないように押さえていたり。なんかもう色々ギリギリです。


宇宙にでも行くんか!?というサイズ感の客室。

なかなか年季の入った客席が18席。
CAはおらず(そもそも席が余っていない)、パイロットが2人いることは確認できました。


 飛行機のエンジンがかかると、乗客の声が一切聞こえなくなります。
というより、とてもうるさい。鼓膜が今まで感じたことがないくらい振動していて「 うるさい 」などという感覚を超えています。不安になるほどの音だったので、私は貰った耳栓を装着。このときほど耳栓に感謝したことはなかったかもしれません。

私の耳を救った尊き耳栓。

耳栓のおかげで少しほっとするのもつかの間。私は足元にあるものをみつけてしまいました。それはむき出しになった配線。

線の細さが余計にこわい。

え、なんの線?
これ、足にぶつかってるけど、大丈夫…?
エンジンが掛かったタイミングで足元に吹き始めた異様に冷たい風も、不安をどんどん煽っていきます。

 そして、皆がなんとか着席してしばらく経っても、もなかなか出発しません。なにかに時間がかかっているようで、壁がなく丸見えの操縦席にいるパイロットと整備士がずっと何かを話しています。
言葉の問題以前にうるさすぎて、離陸前の管制塔の指示を待っている間に整備士が世間話でもしているのか、機体に何か不具合があってその調整をしているのかもわかりません。


(もう色々怖いよ……)


 そんな不安だけが増していく、何待ちなのか分からない時間を過ごしていると、私の斜め前に座るおじさんが、スマホを開いてインスタでネコの動画を見始めました。画面の中で、子猫がおもちゃにじゃれでコロコロと転がっています。

 スマホの画面を盗み見てしまったことに申し訳無さを感じつつも、その光景に思わず頬が緩んでしまいました。そして「 外国の人も、こういうときにネコの動画見るんだ! 」という驚きもありました。


 不安を紛らわせるためだったのか、暇を潰すためだったのかはわかりません。でも、小さい飛行機を前に同じように驚いていたところから察する限り、暇つぶしができるほど乗り慣れているようには見えませんでした。
 おそらく、気を紛らそうとしていたのだと思います。


 ネコの動画は私もよく見ます。よそのお家のネコを眺めて癒やされる気持ちもとてもよくわかります。
 けれど、おそらく同じ国の出身でもなく今まで同じような人生を歩んできたとは露ほどにも思えない人でも、自分と同じものに癒やしを求めようとするのだということに妙に感動してしまったのです。


 海外にいるとどうしても「 自分はよそものである 」ということを常日頃から意識することになります。
 生活スタイル、文化、そのほか色々なものが違っているからです。

 そのため、相手が同じ感覚を持っていない前提で相手を捉えようとします。実際、同じ感覚を持っていないことのほうが多いですし「基本的に違うのだ」と思っていたほうが物事が進めやすいのです。


 だからこそ、こういうちょっとした共通点を見つけられたことで、驚きと喜びを感じます。そして言葉が通じるのなら話しかけたくなるような親近感が湧きました。


 ネコの魅力は世界共通なんですね。(笑)
 不安ばかりの離陸前でしたが、たまたま見てしまったおじさんのスマホの画面に、安心感と喜びを覚えたのでした。



***


 その後離陸して1時間弱で無事目的地の空港に到着。
 私は移動疲れで離陸直後に眠ってしまい、着陸直前まで目が覚めたのでわからなかったのですが、結構揺れていたようです。まあ、小さい飛行機なので仕方がないですね。
 着陸は今までで1番ではないかと思うくらいのスムーズで、年季の入った機体だから熟練のパイロットが乗っているのではないかと夫と話していました。

 後日、現地出身の方にこの飛行機の話をしたところ、現地の人も怖くてなかなか乗らない飛行機なのだそう。
 そして日本にもこのサイズの旅客機はなかなかないようで、飛行機好きの弟に羨ましがられました。


猫動画の件も含め、色々な意味でかなり貴重な体験からフランス・イギリス旅がスタートしたのでした。



※追記※似たようなタイトルがあったので、タイトル変更しました。

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