体験レッスンで遭遇した唐突な質問。

「語学学校が始まるまで、オンラインレッスンでも受けてみれば?」

 そんな夫の勧めから、私は最近ドイツ語のオンラインレッスンを探している。
 文法はテキストやアプリでやれば学べるのだけれど、発音となると聞いて指導してくれる人がいる方がいい。ドイツ語がちゃんと話せるようになるためには、町でおぼつかない会話を続けるよりもいいかなと思った。


 ドイツ語の先生を見つける方法は色々ある。
アプリなどでお互いの母国語などを教え合う相手を見つける方法や、現地で先生となる人を見つけてレッスンをしてもらう方法。
 最近は言語を学ぶオンラインレッスンのサービスもたくさんあるのだけれど、大体は英語を学ぶためのサービスで、ドイツ語となると学べるところは結構少なかった。


 オンライン英会話のサービスに登録してドイツ出身の人やドイツ語圏、ドイツ語が話せる先生を掴まえてレッスンをしてもらう、という方法が格安でいい!とネットで書いている人もいた。
 けれど、ドイツ語入門レベルの人間には、その交渉を英語かドイツ語で先生にするというところがすでに難しいし、そもそもその条件に該当する先生が少なくて、思うようにレッスンができそうにないので断念した。


 結局私は、海外からも受講可能な日本の外国語スクールの体験レッスンを受けることにした。


***

 体験レッスン当日。私のドイツ語スキルを入門レベルと伝えていたので、挨拶や自己紹介のレッスンを受けることになった。
 正直ここは、日本にいるうちに参加していた語学学校のレッスンでもやってきたところではある。でもレベルチェックも兼ねているということなので、そのまま受講することにした。

 時間になってカメラが繋がると、画面の向こうには日本人の先生がいて、マンツーマンのオンラインレッスンが始まった。
Halloなどの挨拶から始まり、「調子どう?(英語でいうところのHow are you?的なもの)」をドイツ語でやり取りした。そして、質問に答える形で自己紹介を進めていった。


 この自己紹介で聞かれる質問にどれだけ応答できるかで、ドイツ語をどれだけ習得できているかを確かめているらしい。
 出身地や住んでいるところ、いつからドイツに居るのかなどを聞かれて答えていく。


その中で、急に聞き慣れないドイツ語があった。

「ゔぉーひん ふぁーがん ずぃ?」

こんな感じに聞こえた。
「ふぁーがん」はおそらくfahrenだろうと思った。ざっくり訳すと「行く」という意味だ。
「ずぃ」はSieで丁寧語の「あなた」ということもわかった。


 でも、「ゔぉーひん」の意味がわからない。
ドイツ語にも英語の5W的な疑問文に使う、Wから始まる単語があるので、質問の並び順的にもそれのいずれかだろうというのもわかったのだけれど、全然ピンとこない。


「すみません、『ゔぉーひん』がわかりません」


わからないものは仕方がないので、素直に先生に伝えた。
すると先生が「ゔぉーひん」をドイツ語で打ち込んでくれた。


私が聞いていたのは「Wohin」という単語だったらしい。
字面を見てもやっぱりピンとこなかった。
そして質問の意味を知らされることなく、そのまま会話例文の読み合わせに移っていった。


***


一通り会話文やその回に学ぶ単語を先生と読み合わせて、約30分の体験レッスンが終了した。
そして先生がレベルチェックの結果を教えてくれた。

「Wohinがわからないのであれば、以前学んだところと重複するでしょうが一番最初からレッスンされたほうがいいと思いますね」


そういうものなのか、と思ってお礼を言ってあっという間のレッスンが終わった。
レッスン画面が終わった後、私は聞きそびれてしまった「Wohin」を使った例の文章の意味を調べてみることにした。


先生が聞いてきたのは、「Wohin fahren Sie?」
翻訳アプリにかけてみたところ出てきた訳は「どこへ行くのですか?」だった。
その訳に私は思わず吹き出してしまった。


質問として唐突じゃない??(笑)



 先程も書いた通り、それまでの質問は自己紹介の内容だったので「どこ出身ですか?」「どこに住んでいるのですか?」「ドイツ語をどれくらい勉強しているのですか?」などと聞かれていた中に、急に「どこへ行くんですか?」が入っていたことになる。


 おそらくドイツ語の疑問詞の理解を確かめたかったのだろうけど、もう少し質問の仕方があるのではないかと思ってしまった。
せめて「週末どこへ行くの?」とかにすればいいのに。
私はWohinがわからないので答えられないけれど、分かる人は答えやすいと思う。


 思い返してみると、同じく先生の質問の中に「Wer ist das?(あれは誰ですか?)」も入っていた。私は(誰って?)となってしまい、わからないと答えたのだけれど、手元に写真やイラストもなくこれだけ質問されて、誰が答えられるのだろう。(笑)


 あと、今回覚える単語として紹介されたところに出てきた単語に「Seil(ロープ)」が出てきたのも興味深かった。
 最初見たとき「なんで?」と思ってしまった。きっと発音「s」を「サ」ではなく「ザ」と読むことと「ei」を「アイ」と読む、ドイツ語独特の発音法を説明するための単語だと推測する。
 でも余計なお世話かもしれないけれど、他にも同じ説明ができる単語はあるのでは?と思わなくもない。ドイツに来て2ヶ月、いろいろあったけれど、今のところ「ロープ」を必要とするシチュエーションには遭遇していないのだ。

 私のようにドイツで暮らし始めた人も、これから仕事にドイツ語を使おうとしている人も、ドイツへ留学しようとしている人も、おそらくそんなにすぐに使う言葉ではない気がする。

 ドイツ語を使わないと生きにくいという現状の中、的はずれな単語のような気がしてしまった。


***

 私のドイツ語レベルが低いのは認める。
そして学校や教材などによって、生活に必要な単語や文法から学ぶものと、現在形、過去形、疑問詞みたいな感じで文法のカテゴリごとに学んでいく学習法がものがあるのもわかる。



ただ急に「あれは誰ですか?」と
「どこへ行くんですか?」という質問はやめてほしい。(笑)

「あれ」が誰だかは、きっと誰もわからないし、
私はどこにも行かずここでレッスンを受けている。


語学学習初心者の戯言極まりないが、
なんとも釈然としない体験レッスンになったのだった。

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