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日本経済アップデート

3月の消費者物価指数が発表された

総合指数は前年比3.2%上昇


 4月21日、3月の消費者物価指数が発表された。総合指数は、前年比3.2%上昇ということで、2月と同水準になっている。生鮮食料品とエネルギー価格の影響を除いたコアコア指数では、前年比3.8%上昇となり、2月の3.5%上昇からさらに加速している。
 ただし、生鮮食料品以外も含めた食料全般が値上がりしている影響が大きいため、それ以外の物価水準が高騰しているとは言えない。食料は前年比7.8%上昇し、それだけで、総合指数を2.07%分押し上げている。これは、総合指数全体の上昇の6割程度に相当するものであり、食糧価格の値上がりが、現状のインフレの主たる要因と言える。
 食料の値上がりは、需要拡大によるものではなく、供給側のコスト上昇によるものであり、コストプッシュ型のインフレという面が鮮明になっている。穀物価格の国際市況が上昇した影響が遅れて生じていることと、円安傾向になっていることが、輸入価格を押し上げているために、食料のコストが全般的に上昇している。穀物価格は一時の高騰から落ち着きを見せているが、価格転嫁のタイムラグもあるので、今後、しばらく経過してから食料の価格動向も落ち着いていくものと考えられる。
 いまだに需要が牽引する形の物価上昇とはなっていないため、経済の過熱感はないものと考えられる。

財価格の上昇率は鈍化したがサービス価格の上昇率は上向きである

 また、総合指数の内訳を、財とサービスに分けてみると、財が4.8%上昇したのに対して、サービスは1.5%上昇となっている。サービス価格の上昇率が、上向き傾向を維持しているのは、経済全般にとって良いシグナルだが、財の価格が4.8%上昇し、総合指数の上昇率を押し上げている構造にはなっている。これが、財・サービスともにバランスの取れた上昇率で、概ね2%強の水準で安定することが望ましいが、まだ、達成までには、時間を要するものと見られる。
 むしろ、年後半に世界経済が景気後退となれば、日本経済にも下押し圧力となり、物価上昇の勢いは削がれる可能性が高い。アメリカを始め、主要国の経済見通しの不透明感が強まる中、日本経済が、回復路線を維持できるのかどうかという点が注目される。

日本経済回復のカギは消費動向とそれを支える業界の労働者確保

 日本経済は、現時点においても、コロナ禍からの回復過程にあると考えられる。回復のペースは、決して速いとは言えないが、ここにきて、大企業の賃金上昇もあり、堅調な個人消費が牽引車となっているものと見られる。
 さらに、インバウンド需要の回復も顕著で、2023年1-3月期における、訪日外国人の消費額は、コロナ前の2019年1-3月期と比べて、11%減まで減少幅が縮小してきた。この四半期においては、金額でも1兆円の大台を回復しており、2023年通年では、5兆円を超えると予想している。現在のペースで回復、成長が実現すれば、むしろ控えめな予想だとも言えよう。
 5兆円を超えるとすれば、日本の名目GDPの1%近い金額であり、景気を浮揚させる効果が期待される。コロナ禍においては、インバウンド需要は一旦ゼロに近いところまで落ち込んでいた。昨年、2022年10月から徐々に観光客なども受け入れてきた成果が、ここにきて鮮明になっている。

受け入れ側のキャパシティ拡充が課題

 今年のゴールデンウィークには、国内旅行などの需要も増大するものと予想され、観光・旅行・飲食といった関連業界には、追い風が吹いている。これらの業界における課題としては、労働者の確保が筆頭に挙げられる。
 いくら人々が旅行や飲食を楽しもうとしても、受け入れ側のキャパシティが足りなければ、需要は顕在化しない。インバウンドだけでなく、国内客の受け入れも含めて、事業者側のキャパシティ拡大が喫緊の課題となっている。
 これらの業界においては、コロナ禍において、人員整理を行った企業も少なくない上に、賃金水準が必ずしも高くはないため、新規で雇用を拡大しようとしても、応募者が十分には集まらないという状況がある。賃金を上げて、待遇を改善することが必須であり、そのためには、サービス価格の上昇も不可欠である。
 こうした条件が整えば、日本の観光・旅行・飲食業界は、再び成長路線に回帰する可能性が高い。日本は、安全・安心・清潔という三拍子揃った国であり、訪問したいというニーズは世界的にも高まっている。内需・外需ともに日本の観光地には、興味・関心が高まっているというチャンスを活かさない手はないだろう。
 消費者物価指数の統計から読み取れるのは、まだ価格の引き上げはまだら模様であるということだ。外食の価格は前年比6.9%上昇となっているが、宿泊料に関しては前年比0.6%の低下となっている。宿泊料に関しては、2月に6.1%と大幅な下落を記録していたが、3月は下落幅を縮小している。まだ十分とは言えないものの、徐々に価格改定が進むものと見られる。
 もちろん、単純に価格が上昇するだけでは不十分で、高品質のサービスを提供できる体制整備が求められる。従業員の待遇改善も必要な要素にはなる。

緩やかなインフレと景気拡大の好循環を目指したい

 物価は、ただ単に上昇すれば良いというものではない。経済成長を実現し、雇用を拡大しながら賃金を上昇させ、消費拡大を通じて、さらに経済を拡大させていくといった好循環を作り出すことが肝要である。
 日本経済に、そのチャンスは大いにあるので、政策面で足を引っ張ることなどないようにすべきである。金融緩和をしばらく継続しつつ、財政面の積極化を求めたい。最も効果的なのは、消費税減税だが、財務省の抵抗は極めて強いと考えられるために、簡単には実現できないのが現実である。昨年度、2022年度の税収は、予算上の想定を7兆円程度上回ったとの推計値もあり、増税どころか減税のタイミングであるとも言える。

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