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【映画】関心領域

この観せ方は斬新です💦こんな角度から虐殺(アウシュビッツ)を見せるとは…

もし、あなたが今、精神的に不安定でかつ、感受性が鋭い方なら、絶対、観に行くべきではないでしょう💦そういう不安定感を煽る演出があります。(でも、R指定なしなんです…)

しかし、気付ける人は何人いるんでしょうかね?これ、ナチス時代のドイツの話ではないんですよ…いや、まさに今、現在の世界中にある話し、なんですね。

というか、人間はこんな人にいつでも成れるし、どこにでも居るし、むしろ全く普通な社会のお話しなんですよ!ただ、壁のあっち側で自分たちに関係のない人(今回はユダヤ人)が盛大に死んでいるだけで…💧この壁もたぶん在っても無くてもって感じで、壁に問題がある訳ではなくて、無関心というより、気付けないという人間の愚かさを見事に表現しています。

以前、映画感想で記事にした「ヒトラーのための虐殺会議」の時のような、善と悪があって、「凄い悪いこと(計画)してるな~」っていう感じでもなく…

https://note.com/nqh07729/n/n7e2420e8884f


普通に主人公の男(アウシュビッツ収容所所長)は、本当に優秀で効率的に働ける管理職であり、また善き父親であり、妻を大切に想うけど、セックスレスな善き夫(職権を乱用した浮気をしている)なんですね。

私の視点で言うと、職場の稼働効率を考えて画期的なシステム(反時計回りの回転式ガス室と焼却炉の急速空冷化)を導入し、うかつにも(歴史的な)成果を上げ過ぎて、「(全体を見ずに)使える労働力を殺し過ぎだ」と上司に陰口され、上司から栄転という名の左遷を喰らい、また奥さんに「左遷先に付いて来てくれ」と頼んで、「子どもとこちらに残ります」と言われたり、愛車(今回は愛馬)を手離さないといけなくなってメソメソする姿など、まさに優秀な中間管理職の中年男、ありのままの姿しかないような気がします。

もちろん他に、家族は妻に息子・娘たち、妻の母もいて、敷地内には召し使いも数人います。その登場人物からの角度でも本作は観れるようになっており、しっかりとそれぞれの立場からのショートストーリーが織り込まれ、これはなかなか観ごたえがあります。

特に「地元民を雇いユダヤ人ではない」と妻が自信を持って語る召し使いは、実はユダヤ人を支援する側の人間なのですが、その支援物資のリンゴ🍎を巡り、(壁があるから)音声だけの悲しいストーリーがこちらにも伝わります。

また、昼夜を問わず見える焼却炉の煙と明かりに耐えかねて、妻の母は出て行きますが、それでも妻は気付けません。映画の終盤、壁で仕切られている子どもたちも、それ自体は見えないとは言え、その影響を感じさせる行動を取り始めます。正直ここが一番、怖い部分かも知れません💦

見えなければ穏やかな生活は続けて行けるのか?感心がなければ安全なのか?頑張って働くことの意味は?夫婦って、家族って何なのか?そんないろんなことを、色々考えさせられる作品です。

ただ私は、この壁は「人権意識(浅い権利主張やその受け入れではなく、誰をどう助けるべきなのかを真剣に考えること)」を表していると感じました。見えなくても意識すれば(考えれば)、絶対見えるんですよ!まあ、この映画の様に壁を意識しなければならない方々(政治家や官僚)は、たぶんこの映画を観ないでしょうし、たぶん観ても何も感じないし、何も行動しないと思いますが…

え?この先ですか?それは、ナチスドイツが結局どうなったのか?で大体想像してください。ただこれは、今、現在のお話しですから…ね。

終わり


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