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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2023年5月の記事一覧

誰かとともに暮らすということは、案外努力も必要らしい

二人で暮らすようになって半年が経った。 一緒に暮らすまでは「誰かと暮らすなんて!」とたった3年ちょっとの一人暮らしだったとしても、あの何をしても許すか許さないかは自分次第な自由奔放な生活を手放すのはちょっと惜しかった。引っ越し前は楽しみよりも、一人の時間が減ることの不安を口にすることも多かったっけ。 だけど、思った以上の心配は起きず(「たまに自分のこと嫌い?!って思う」と彼に言わせるほどいらいらが全面に出ていることはあるけど)、楽しい時間を過ごしていると思う。 好きな人と暮

星野源と、マイ生霊に救われた話

ちかごろ、マイ生霊に救われた。 あ、スピリチュアルなアレではないですよ。僕、霊的なものは見えないですし。怖いですし。祟られるほど誰かに恨みもかってないですし(たぶん)。 まぁ長い話でもないので、聞いてください。 ****** 僕は小さい頃から、「見守ってくれる存在がいる」という感覚がなかった。 親と一緒に暮らしていなかったことも影響してると思う。そんな「見守ってくれる存在の不在感」は、その後の人生にすくなからず影響したはずだ。 ひとことでいえば、寂しがり屋でビビり

おれの夢に登場するオモコロの永田さんがめちゃくちゃ格好いい。

 このところ、眠りが浅い。というか、7時に起きて準備すれば余裕で始業に間に合う程度の立地に住んでいるのに、3時とか5時とかに目が覚めてしまう。眠るのにも体力がいるから、歳を重ねると睡眠の質が悪くなると先人たちから聞いてはいたが、それを日に日に実感するエブリデイを過ごしている。誕生日が祝福でなくなっていくのは、とても悲しい。  そんな睡眠状況でも、夢を見ることがある。人間、夢を見ていても起床時に覚えているか否かがあるため、数えきれないほど夢を見ているはずだが、中でも印象に残っ

ガソリンを入れる、コロッケを揚げる

夏には少し早いけれど 夏は夜、だと思う。 高校生で、初めて枕草子を読んだときは感動した。 春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて。 ああ、まったくその通りだ。 春になったら使い倒そうと思っていたバルコニーは、早々に午後の日差しに焼かれてしまった。 極端に、暑いか寒かで、なかなか快適には使えないなあ、と思っていたけれど この季節の夜。 夕暮れの、少しあと。 太陽の残り香と、デスクライトで照らされたバルコニーの幸福たるや。 仕事が終わって、体力が残っているそのときに

トラブルメーカーって本当にわるもの?

お知らせ cakes時代からの本連載をまとめた、林伸次さんの新刊が発売しました! 日本一発信力のあるバーの店主が、人と交わる「わずらわしさ」と「幸せ」、「うまく生きるヒント」をつづった人間関係考察エッセイ。ぜひお買い求めください! 前回の記事はこちら 「コミュニケーション能力」の本当の意味いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 「あの人はコミュニケーション能力がある」とか、「まずはコミュニケーション力が大切」とか、コミュニケーションについていろいろと言われま

傘とネクタイピン

人生で一度だけ、告白をした事がある。 付き合ってください、とは言えなかった。 「ずっと好きでした」 その言葉を伝えるだけで、精一杯だった。 *** 高校生の頃。 駅を降りて高校に向かって歩いている間に、突然、スコールのような雨が降ってきた。 私は傘を持っておらず、走ったけれど、学校まであと半分という所で諦め、本屋さんの軒下で雨宿りをする事にした。 その時、傘をさした一人の先輩が、私の前を通り過ぎた。 その先輩とは、一度も話したことはない。 先輩が、しなやかな身体を使っ

静かな朝ごはん。

映画の効果音を演じて録音するという変わった仕事をしています。その仕事柄、私がなぜ朝ごはんのメニューを気にしているのかというお話です。 私は毎朝、仕事場であるレコーディングスタジオへ行って、マイクの前に立ちます。と言うと、歌手がヘッドフォンをして、鼻のあたりにぶら下がったマイクに向かってその声を録音するイメージが浮かぶかもしれませんが、私の場合は違います。私達が録音する効果音の多くは手元、足元で発生しますから、私の前に置かれるマイクは、足音を録る時以外、常に手元に向けられてい

マッチョなティッシュに恋をして

ドイツ人 「日本人が、あの小さいタオルみたいな布をいつも持ち歩く文化って、いいよね。環境に良くて」 この小さいタオルみたいな布って何を指しているのかというと、ハンカチのこと。 また、こんなことを聞いたこともある。 日本人 「おい、気がついた?あいつ、おんなじティッシュを何回も使って、鼻をかんでるんじゃない?マジかよ」 あいつとは、彼らと一緒に会議をしていたドイツ人のこと。 日本人の常識からすると、同じティッシュで何度も鼻をかむことは、あまり一般的ではないだろう。でも

セイント・テールのお弁当箱

 小学生の頃、私は「なかよし派」だった。  なんのこっちゃと言われそうだが、1990年代の女子小学生は大体「りぼん」、「なかよし」、「ちゃお」の三大少女漫画雑誌のどれかを読んでいたように思う。自分の周りで一番多いのは「りぼん派」、続いて僅差で「なかよし派」、「ちゃお派」はあまりいなかった。りぼんは恋愛系の話が多くて、読んでいて照れてしまう。なかよしは、恋愛もあるがセーラームーンやレイアースといった戦士ものがあり、読んでいてワクワクした。雑誌の後ろに掲載されている「スーパーち

心地の良い店はお客様と一緒に作る

お知らせ cakes時代からの本連載をまとめた、林伸次さんの新刊が発売しました! 日本一発信力のあるバーの店主が、人と交わる「わずらわしさ」と「幸せ」、「うまく生きるヒント」をつづった人間関係考察エッセイ。ぜひお買い求めください! 前回の記事はこちら ナンパ目的のお客様はなぜ困るのか?いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 最近、同業者からたまに聞く話で、「ナンパ目的の男性客っていうのがいるんですよ。あれ困りますね」というものがあります。

[ちょっとしたエッセイ]失礼な手紙とくどい手紙

 今の時点でということで言えば、手で書くことは、嫌いではない。ただ、自分の字が、時々異様に嫌になる時があって、その時は、書くことすらも嫌になるのだが、概ね書くこと自体が苦ではない。    そして、次のフェーズへ移る時、グッと書くことが苦手になる。それは、手紙だ。仕事でお世話になった方へのお礼状や、荷物を送る際の一筆など、月に2〜3は紙に向かって手を動かすのだが、これがなかなか時間がかかる。季節の挨拶であったり、一言近況を加えたり、などなど、相手を思えばコソ(いや自分をよく見せ

95歳のおばあちゃん

わたしの祖母は今年95歳の誕生日を迎えた。 戦争時代を駆け抜けた過去と未来を懸け橋する貴重な存在。 長寿大国と言われるここ日本の象徴であった。 祖母の姉と兄にあたる子が生後、間もなくして亡くなった。 次産まれてくる子は長生きできるようにと願いを込めて、祖母にはツルヨと名付けられた。 鶴は千年 亀は万年 ありがたいことに十分名前にあやかってご長寿である。 祖父は10年以上前に他界した。 以来、祖母はひとり暮らし。 高齢なこともあり同居や施設暮らしも提案したが、

ポルトガル一人旅で子どもがうまれた話

子どもが年長に進級した。このままいけば、来年ランドセルを背負うことになるだろう。いつの間にか赤ちゃんを卒業し、少女へと歩を進める子を見てふっと不思議な気持ちになる。 わたしは一族郎党のほぼ末っ子として育った。つまり身近に赤ちゃんがいたことがない。そのせいかずっと「子ども嫌い」というより「子ども苦手」——いや、いい人ぶらずに言えばやっぱり「子ども嫌い」だったかもしれない。赤ちゃんが無条件にかわいい、という感覚がよくわからない。子どもとどう接すればいいのかわからない。無駄に道化

「いい本」の匂い

話題の本を手に取らなくなって数年が経った。意識してそう決めているわけではないのだけど、いつのまにか書店の目立つ場所に平積みされている類の本にあまり興味が持てなくなっていた。 そして人のおすすめで本を読むこともほとんどなくなった。これも意識しているわけではなく、そもそもおすすめされる機会が減ってしまったのが大きい。会話のなかでいろんな本の話がでてくることに変わりはないのだけど、まわりも読書家が多いのでそれぞれの領分をよく理解し合っている。よって、むやみに本を勧めることもないし